高齢者だらけのゴーストタウンに……オリンピック後に東京が直面する恐ろしい未来図

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 生活環境も劣化する。今世紀半ばには東京の人口減少は本格的になり、下水道、廃棄物処理システム、鉄道などは人口悪化が採算性の悪化をもたらし、適切な維持管理は困難になり生活水準は悪化する。例えば鉄道の沿線人口が減少すれば路線を廃止、短縮せざるを得ない。鉄道のなくなった地域は価値を失い、ゴーストタウン化する。

 都市の国際化という観点から見ると、東京は「中流都市」へと劣化する。東京に集中する日本の株式市場、外国為替市場はミラー市場と呼ばれ、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールで形成された価格を映すだけで、固有の価格、他市場に影響力のある価格を形成する機能を持たない。外国の通信社はかつて東京に支社を置いていたが、北京支局の無人事務所化している。電話だけが置かれていて、海外からの電話は北京にそのまま転送されている。欧米先進国の企業も東京から撤退し、中国や東南アジアに移転した。もはや情報を得るうえで意味がない都市とみなされている。

 加えて、海外留学の激減、外地勤務を嫌うビジネスマンの増加により東京の国際化はますます停滞し、いずれ先進国は東京に目を向けなくなるという。「中流都市」どころか「世界の田舎」だ。世界に対する東京のアピールと国際化を目論んだ東京オリンピック開催は皮肉にもその目論見にブレーキをかけることになる。

 オリンピック前後に起こる東京の劣化とは、《最も確かな予測といわれる人口推計と、そうした人口変化がもたらす必然的な事象から論理的に導かれた『確実な危機』なのです》と筆者は念を押す。

 本書からは離れるが、そもそもオリンピック開催が「打ち出の木槌」と考えること自体間違いだとする指摘は他にもある。米経済誌「フォーブス」の元アジア太平洋支局長ベンジャミン・フルフォードの最新の著作では、経済学者のジェフリー・G・オーウェンのリポートを紹介している。曰く

《オリンピックのスタジアム建設などに伴って生じる雇用は、完全雇用ならば他の雇用を奪って生じたことになるため意味はない》
《1996年のアトランタでは、一時的に雇用が増えたものの短命に終わり、観光資源としても他の観光地への客を奪っただけに終わった》
《2000年のシドニーでも建設された施設がその後及ぼした経済効果はむしろ支出を増やすものになっている》
 というもの。東京も同じ轍を踏むことにはならないだろうか。

 歓喜と喝采に沸いたブエノスアイレスの奇跡は、本当に人々に僥倖をもたらすのだろうか。ひょっとして、あの「TOKYO」の一声は、東京劣化のカウントダウンだったのかもしれない。そういえばあの時、ロゲ会長も仏頂面だったし。
(相模弘希)

最終更新:2015.05.19 07:10

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