原子力規制委が福島第一原発のトラブルを“隠蔽”する方針 まさか特定秘密?

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 そして、注目すべきは、この決定をした会議資料のなかで例として挙げられている、昨年8月の汚染水漏れについての規制委の報告である。

 規制委は昨年8月19日に300トンの高濃度汚染水が漏れた問題で、今回、「健康や環境への影響を懸念すべき海洋汚染はなかった」という評価を公表しているのだが、その会議資料を読むと、INESの評価基準にのっとるとレベル3であると暫定評価しながらも、〈潜在的影響をより現実的なものとしたところ、レベル2となった〉というのだ。

 どうしてレベル3がレベル2になるのか。その理由は、“事故の影響で深層防護が十分でない施設に、通常の発電所と同様の防護基準を求められない”ということらしい。また、汚染水が地表に漏えいしたのは事実だが、事故後はサイト内全域が〈管理対象区域〉になっているのだから、〈設計上想定されない区域〉には当たらないのではないか、というのだ。そして、一般公衆の被爆はないことも挙げている(しかし、作業員は被爆している)。

 この無理くりの理由付けからは、事故の影響を過小評価したいという規制委の意図が透けて見えるかのよう。事実、議事録を見ると当の委員会内でも「原発事故に比べ相対的に軽微な事象だからといって、INES評価と別の考え方をするのは安易ではないか」という旨の異論もあったようだ。もちろん、こうした評価の妥当性をさらに“評価”する独立機関も、日本にはない。だいたい、この“評価”に1年4カ月近くも費やしているのはどういうことなのか。

 さらに問題なのは、事故やトラブルが起こったら「放射性物質による環境への影響や、規制委による対応について文書で説明する方針」ということだ。もし重大なトラブルが起こっても、今後は周囲の住民、自治体、そして報道機関などに即座に知らされることなく、規制委の“評価”“判断”が終わって「文書」が出来上がるまで公表されない、ということなのではないか。

 しかも、この事故評価を報じたのは、共同通信と、その配信先の一部地方紙のみ。大手マスコミ、テレビはこの決定さえ報じてはいない。現在の大手新聞、テレビは安倍政権に不利になるようなことを声高に報じることはしないだけなのか。それとも、同日に秘密保護法の施行がはじまった“偶然”を思うと、もしやこれが「安全保障上の国家機密」なのか……。

 その真相はわからないが、“多少の汚染水漏れ、放射線漏れは無視”“些末なことは公表せず隠蔽”という規制委の本音が垣間みられる今回の決定は、あまりに国民、ひいては国際社会さえないがしろにするものであることに変わりはない。この決定が、今後の日本にどんな影響を与えるのか。情報はさらに隠蔽されつづけるのか。確実なのは、自民圧勝が予想される選挙戦の中、こうした問題が争点にもならずに流されていく、ということである。
(伊勢崎馨)

最終更新:2014.12.12 08:20

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