東京五輪組織委は選手をコロナから守る気なし!“濃厚接触者との対戦拒否できず、拒否したら負け”のルールがこっそりできていた

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サッカー対南ア戦でも…(東京2020オリンピック競技大会公式ウェブサイトより)


「安全安心」が聞いて呆れるずさんなコロナ対策が次々明らかになっている東京五輪だが、問題は、水際対策のザルぶりや選手村のバブル破綻だけではない。選手じたいが感染危機に晒されるような競技運営が平気でまかり通っている。

 その典型が、サッカー男子の日本代表と南アフリカ代表の試合の際に話題になった、濃厚接触者の競技参加問題だろう。

 たんに濃厚接触者が競技に参加できるというだけではない。なんと、対戦相手や一緒に競技に参加する選手は試合を拒否できず、拒否すると、濃厚接触者になった側ではなく、拒否した対戦相手の選手が不戦敗になるというのだ。

 濃厚接触者の扱いについては、競技開始6時間以内のPCR検査で陰性ならば出場できることになり、その方針自体に厳しい批判の声が出ていた。それはそうだろう。一般国民が濃厚接触者になった場合は、PCR検査で陰性でも2週間の不要不急の外出自粛、健康観察期間が要求される。それが、五輪の選手の場合は、レスリングや柔道などの密接に接触する競技をする場合も、検査で陰性なら、即、他人と試合ができるというのだ。この方針には、専門家からも懸念の声が出ていた。

 それでも、当初はこの濃厚接触者の競技参加について、一緒に出場する選手の了解を必要とするという案も出ていた。つまり、他の選手が「濃厚接触者と競技するのは嫌だ」と言えば、濃厚接触者が参加できなくなるというものだ。

 ところが、その後、プレイブックではこの条件が消え、「毎日のPCR検査で陰性」「保健当局の評価」「国際競技団体の同意」だけが記載された。

 濃厚接触者との競技を他の出場選手が拒否した場合はどうなるのか、気になっていたところ、バルセロナ五輪柔道女子銀メダリストで、現在、テコンドーフランス代表チームにスタッフとして参加している溝口紀子氏が21日放送の『報道1930』(BS-TBS)で、驚くべき事実を明かした。

 溝口氏は「濃厚接触者が増えてきますよね、この感じだと」としたうえで、こう語ったのだ。

「対戦するチームが濃厚接触者です。それで(対戦するのは)嫌です、と拒否した場合は、じつは拒否したほうが棄権、負けになっちゃいます」

柔道女子銀メダリストが語った濃厚接触者との試合を拒否できない実態! 内閣官房の文書にも

 溝口氏が明かした「濃厚接触者との対戦を拒否したら、拒否したほうが負けになる」というルール。これには松原耕二キャスターも「拒否されたほうが不戦敗じゃなくて、拒否したら負けなんですか?」「濃厚接触者が相手にいてもやらなければならないというルールになってるんですか」と驚きを隠せなかった。

 しかし、溝口氏は「そういった見解で、もう覚悟するように、と(言われている)」「それでも同意してやると聞いています」と説明。「どんどん濃厚接触者が増えていくと思いますよ」と警告していた。

 もっとも、組織委はこのルールをプレイブックに明記していないし、公表もしていない。『報道1930』でも、翌22日の放送では、番組側が溝口氏の解説について取材したものの確認がとれなかったと報告していた。

 だが、溝口氏の指摘は事実だった。しんぶん赤旗が政府文書を入手し、25日付の記事で「濃厚接触者となった選手との対戦を拒否できない仕組みになっている」と報じたのだ。

 赤旗が入手したのは、内閣官房が出したメールで、五輪会場や合宿地になっている自治体から出された質問に対して組織委や内閣官房が回答するというかたちになっている。

 そのなかで、複数の自治体から出た「濃厚接触者との競技に同意しない選手がいた場合は、競技はどうなりますか? 濃厚接触者は不戦敗?」という質問に対して、組織委がこう答えているのだ。

〈プレイブックにおいては、一定の条件の下、濃厚接触者の競技参加は可能である旨明記されており、(プレイブックが)同意が(五輪の)参加条件となっているので、同意しない選手はいないものと考えています。〉

 不戦敗になるかどうかという質問に直接的には答えていないが、“プレイブックに同意しているのだから、そんな選手はいない”というのは、選手は相手が濃厚接触者であっても、絶対に試合をしなければいけない、拒否したら失格・棄権ということと同じだ。

 実際、日本共産党の山添拓・参院議員は昨日、内閣官房のオリパラ事務局に確認した結果を、こうツイートした。

〈政府のオリパラ事務局に確認すると、やはりプレーブックに同意すると相手が濃厚接触者でも対戦を拒めない、最終的には本人の意思と大会運営側の判断だが、拒んだ場合には拒んだ方が棄権扱いになるのがプレーブック上の扱いという回答。リスクを広げて、どこが「安全安心」か。〉

濃厚接触者との対戦を事実上、強制しながら、それをひた隠しにする組織委の姑息

 先にも述べたが、濃厚接触者の場合は、競技開始6時間以内のPCR検査で陰性であっても、感染していたり、その後に陽性になる可能性はけっして低くはない。そして、もしその濃厚接触者の選手が感染していたら、レスリング、ラグビー、ボクシング、空手など選手同士が密接に接触する競技では、対戦した選手に感染させる可能性が非常に高い。

 また、選手たちは競技を終えると、その足で母国に帰ることになる。これは世界中に感染を広げることになりかねない。

 しかし、日本政府も組織委もそんなことはどうでもいいのだろう。連中の頭の中にあるのは、感染を広げようが何しようが、とにかく競技を強行して、オリンピックをやったという体裁を整えることだけなのだ。

 しかも、姑息なことに、連中は国民の反発を避けるために「濃厚接触者との競技強制、拒否したら失格」を明記しないで、持って回った言い方でごまかしている。

 オリンピックが欺瞞に満ちていることはいまに始まったことではないが、東京五輪はその歴史のなかでももっとも嘘とインチキに満ちた、選手軽視の大会と言わざるをえない。

最終更新:2021.07.27 12:11

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