黒人差別問題でK-POPファンが差別主義者を撃退! 大坂なおみも“BTSファン=ARMYは最強”と賞賛

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BTSツイッター


 K-POPファンによる差別主義者たちへのカウンター行動がアメリカで話題になっている。

 ミネソタ州ミネアポリスでアフリカ系男性ジョージ・フロイドさんが警察官に殺された事件に端を発し、全米はもとより世界各地に広がっている差別抗議デモ。しかしこうした抗議に対して、差別主義者たちが卑劣な攻撃をしかけている。

 抗議では「黒人の命が大事」「黒人の命を軽んじるな」という意味で「BLACK LIVES MATTER」というスローガンが掲げられているが、それに対して差別主義者たちが「ALL LIVES MATTER(すべての人の命が大事)」「WHITE LIVES MATTER(白人の命が大事)」などという言葉を投げつけている。

 先日、本サイトでも紹介したように、「ALL LIVES MATTER」というのは一見いいことを言っていそうに見えるが、黒人の命だけでなく、すべての人間の命が大切だと主張することで、黒人が受けてきた差別を矮小化しようとするレトリック。安倍応援団の有本香氏なども嬉々として使っているこの言葉の欺瞞については、ビリー・アイリッシュが見事に論破してくれているので既報(https://lite-ra.com/2020/06/post-5451.html)を参照してもらいたい。

 しかし、今月4日、世界中で高まる「BLACK LIVES MATTER」の声をかき消そうと、白人至上主義者たちが「WHITE LIVES MATTER」というハッシュタグとともに、差別的なツイートを次々に投稿。「Blackout Tuesday」に対抗して、「Whiteout Wednesday」という抗議潰しの動きを展開していた。

 ところが、この「WHITE LIVES MATTER」に対して、K-POPファンたちが見事な反撃を見せたのである。

 K-POPファンは、「#WhiteLivesMatter」というタグとともに、BTSやBLACK PINKといったK-POPアーティストの画像や動画を次々に投稿。アーティストたちのライブや音楽番組での一コマ、ドキュメンタリーのスクショなどで埋め尽くされていった。その結果、「WHITE LIVES MATTER」はトレンド入りを果たすも、K-POPジャンルのワードとしてカテゴライズされる。

 実はこれ、K-POPファンが、「#WhiteLivesMatter」の差別投稿をお気に入りのK-POPアーティストの画像で埋没させることで、無効化させようというカウンター行動だったのである。「レイシストくたばれ」など反差別のコメントが添えられている投稿もたくさんあった。

 こうしたオンライン上での、K-POPファンの差別抗議活動はこれだけではない。5月31日に、アメリカ・テキサス州のダラス警察が、抗議活動中の違法行為の動画などをダラス警察にシェアしたい場合は、「iWatchダラス」というアプリをダウンロードするようツイッターで呼びかけるという、市民に密告を求めるとんでもない行動に出たことがあった。

 ところがこのアプリが、呼びかけから1日もしないうちに一時停止してしまう。ダラス警察はサーバーダウンが起きたとしてその理由について明かしていないが、実はこの「iWatchダラス」にもK-POPファンたちがK-POPアーティストの動画を大量に送っていたことが原因なのではないかといわれている。

 K-POPファンたちは、SNSを駆使し、差別主義者そして警察のデモ弾圧に抵抗したのである。

 さらに、彼らが声を上げたのは、差別主義者へのカウンターに対してだけではない。

BTSの差別反対声明、1億円寄付の背景に「差別問題への意志表示」を求めるファンの動き

 K-POPアーティストのなかでも随一の人気を誇るBTSに対しても、SNSアカウントを通じて、差別問題に対して意思表示をするよう多くのファンが求めていた。

 そうしたファンの声に後押しされるように、BTSは6月4日、公式アカウントで「#Black Lives Matter」というハッシュタグとともに韓国語と英語でメッセージを発信する。

〈私たちは人種差別に反対します。
私たちは暴力を非難します。
あなたも私も私たちすべての人間は、人として尊重される権利があります。私たちはみなさんとともにいます。〉(翻訳・編集部)

 さらにBTSと所属事務所Big Hit Entertainmentは、「Black Lives Matter Global Network Foundation」に100万ドル(約1億円)の寄付をした。

 すると、今度はBTSのファンたちが、「Match A Million」と銘打ってファンたちでBTSと同額を寄付しようというキャンペーンをツイッターで呼びかけ、なんと24時間以内に100万ドル以上集めたのである。BTSのファンでつくられたコミュニティ「One In An ARMY」は、全米黒人地位向上協会(NAACP)の法律事務所などアフリカ系コミュニティへの支援を表明している。

 いかがだろうか。この意識の高さ、行動力には驚嘆するばかりだ。

 こうした一連のムーブメントを目の当たりにして、あらためて認識させられたことがある。それは、BTSそしてK-POPが世界的な存在になっているだけでなく、多様性の象徴となっているということだろう。

 周知のとおり、BTSは『LOVE YOURSELF 轉‘Tear’』(2018年5月)以来、今年2月にリリースした『MAP OF THE SOUL: 7』まで通算4作のアルバムがアメリカのビルボード総合アルバムチャート1位を獲得。東アジアのグループが総合チャートでこのような成績を残すのはもちろん初めての快挙だったが、くわえてすごいのは、これらのアルバムが韓国語で歌われていたということだ。さらに英・ウェンブリー・スタジアムでの公演を成功させるなど、ヨーロッパ各国でもライブを成功させチャートを席巻している。

 また、2017年以来ユニセフの「#ENDviolence(暴力をなくそう)」キャンペーンに協力しており、2018年には、世界の若者の就学、技能訓練、雇用の確保を目指すためのパートナーシップ「Generation Unlimited」の発足イベントに出席。ニューヨークの国連本部でスピーチをおこない、「自分自身を語ろう」というメッセージをおくったこともある。

 ビルボード総合1位を4作連続で獲得していることからもわかるように、その人気はアジア系に限ったものではなく、アフリカ系やヒスパニックにもファンが多い。また、白人でも「ゴス」などいわゆる既存のアメリカ社会のメインストリームとは違うタイプからも支持されている。BTSは、オルタナティブあるいは多様性の象徴のような存在でもあるのだ。

大坂なおみ選手も「ARMYたちは史上最高に偉大で恐るべきファンダム」と賞賛

 こうした多様な背景もあってか、一連のK-POPアーティストも巻き込んだムーブメントをおこなうまえから、そもそも多くのBTSファンたちはそれぞれにジョージ・フロイドさん殺害そして黒人差別に抗議の声を上げていた。


 今回、「BLACK LIVES MATTER」に対して、「ALL LIVES MATTER」とか「じゃあ、アジア系は?」「ヒスパニックは?」などという論点ずらしの反論をする輩が日米問わずたくさんいた。そうした分断を図るような論点ずらしに対し、多様な背景を持つK-POPファンが分断を超えBLMを支持するという姿勢を示したことの意味は大きいだろう。

 もうひとつ感心させられたのは、BTS人気そのものがグローバルになっているだけにとどまらず、K-POPのファンダム文化もまた世界中のファンの間で共有されているということだ。

 なぜか日本ではほとんど報じられたことがないのだが大のBTSファンであるテニスの大坂なおみ選手も、BTSファン=ARMYが1億円の寄付を達成した際、ARMYたちをこう讃えていた。

〈BTSが100万ドルの寄付をして、ARMYたちが「#MatchAMillon」をトレンドにしたこと、これがまさにARMYたちが史上最高に偉大で恐るべきファンダムである理由です。〉(Bts donating 1mil to BLM and ARMY trending #MatchAMillon is exactly why they’re the greatest and feared fandom of all time.)(6月8日)

「ファンダム」と呼ばれる熱心なファンの存在感やコミュニティの連帯感、影響力の大きさは、とりわけK-POPでよく見られ、数々のK-POPアーティストたちを支えてきたことは日本でも有名だ。

 こうしたファンダム文化のなかでも、BTSを支えるファンであるARMYはとくに連帯が強いといわれている。SMエンターテインメント、YG エンターテインメント、JYPエンターテインメントといった大手芸能事務所ではなく、Big Hitエンターテインメントという新興の事務所から生まれたBTSが、現在のグローバルスターたるポジションにまで至ったのは、最強のファンダムであるARMYの存在も大きい。

 ARMYはたんに、BTSの活動を支えるだけでなく、その表現をブラッシュアップする役割も果たしてきた。BTSの向かう方向性にARMYが疑問を感じたときは遠慮なくその不満をぶつけ、そういったファンの行動がBTSの動きを変えてきたのだ。

米、独、ポーランド、インドネシア…世界中のBTSファンが元慰安婦支援に寄付したことも

 その典型が2015年末から2016年の夏にかけて起きた炎上だろう。ある楽曲の歌詞が女性蔑視的であるとして、ファンからSNSなどを通じて異論が噴出したのだ。

 こうした批判を受け、BTSの事務所はただテンプレートの謝罪を出すだけにとどまらず、騒動を受けてミソジニーへの真摯な反省を自分たちなりの言葉で発信。その誠実な対応は、多くの人々を驚かせた。「アイドル」と「ファン」の間で完璧に意見の交換が成り立っている関係性は、他のグループではなかなかつくれるものではない。

 これは2018年の秋元康とのコラボ中止騒動においても同様だ。秋元康自身の女性蔑視思想と歴史修正主義者である安倍首相との親密さを問題視したファンからコラボに反対の声が上がったのだが、このときファンはインターネット上で意見を述べるばかりではなく、事務所のビルにコラボ中止を要請する付箋を貼り付けるなどの見事な非暴力抵抗行動を起こした。

 同じ2018年に「原爆Tシャツ問題」でBTSが日本のネトウヨや差別主義者たちからバッシングを受け、日本の音楽番組出演キャンセルが相次いだ際も、BTSの軽率さについては諌めながらも、問題の本質を見抜き、バッシングに「NO」の声を上げていた。このときは日韓のARMYたちが励ましあったのはもちろん、世界中のファンから、バッシングと闘う日韓のARMYを励ます声が届いていた。

 しかも、このときBTSファンは原爆被害者に寄付をしている。また、この騒動をきっかけに歴史を学んだというアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ポーランド、オーストリア、インドネシアなど国境を超えた世界中のBTSのファンたちが、韓国の元慰安婦支援に寄付をしたこともあった。

 ひるがえって、日本ではいまだに「音楽に政治を持ち込むな」などという言説がまかり通っている。

 先ごろ、検察庁法改正案に反対の声を上げた芸能人たちに対しても、発言を封じるようなバッシングの声があふれた。逆に「知識がないから、発言しなかった」などという発言が「大人」「賢い」と讃えられる始末。

 つい先日も、「新しい地図」のネット番組『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV)に吉村洋文知事が出演することに対し、心あるSMAPファンたちが反対の声を上げたことを本サイトで紹介したところ、「本人たちが許可しているものに反対なんておかしい」などと声を上げたファンを叩くような声があった。そこにあるのは、異議申し立てに対する忌避感とともに、ファンはただアーティストを全肯定・盲信するだけの存在であるべきという受け身な意識だろう。

 しかし、いまさら説明するまでもないが、政治とカルチャーは無縁ではいられない。カルチャーが社会を変えていく原動力になることがある。しかもその力は、一握りのアーティストやトップスターだけにあるわけではない。BTSファン、K-POPファンたちのムーブメントは、あらためてそのことを世界に見せてくれていると言えるだろう。

最終更新:2020.06.12 11:38

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