天皇即位祭典“エンドレス万歳”で「怖い」「戦前回帰か」の声! 皇国への忠誠を示す「天皇陛下万歳」の歴史を改めて検証する

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「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」での安倍首相(首相官邸フェイスブックより)


 9日におこなわれた「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」で、「天皇陛下万歳」の唱和が執拗に繰り返されたことが波紋を広げている。経緯はこういうものだった。

 嵐による奉祝曲や、オペラ歌手の森谷真理氏による国歌独唱などに続き、天皇が「お言葉」を述べ終わると、まず、有働由美子とともに司会を務めた谷原章介が、「ここで天皇陛下御即位をお祝い申し上げ、聖寿の万歳三唱を申し上げます」と挨拶。その後、有働が「万歳のご発声は、天皇陛下御即位奉祝国会議員連盟の伊吹文明会長です」と紹介すると、伊吹文明・元衆院議長が「天皇皇后両陛下のご健康と皇室の弥栄を祈念し、世界の平和と日本国の限りなき発展を願い」などと前置いて、万歳三唱をおこなった。

「天皇陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」

 ここで司会の谷原が「ありがとうございました」と区切りを入れたのだが、その瞬間、またもや会場の一部から大声で「天皇陛下万歳」の声が飛び出した。

「天皇陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 皇后陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇皇后両陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」(12回)

 さらに、天皇・皇后の退出時にも「天皇陛下万歳」が幾度となく繰り返された。

「天皇陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇皇后両陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇皇后両陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇皇后両陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇皇后両陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! 天皇陛下ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」(33回)

 伊吹氏の万歳三唱から数えると、実に48回。こうして活字で振り返っただけでも「ばんざーい!」の文字がゲシュタルト崩壊を起こしそうになる。ネットではこの「天皇陛下万歳」の連呼に〈いつになったら終わるの〉〈エンドレス万歳かよ〉といったツッコミや、〈ちょっとゾッとする〉〈正直怖い〉〈戦争中の光景じゃないか〉〈悪夢の戦前回帰を連想させる〉といった不安の声が相次いだ。

 会場の一般観覧者らの目にも異様な光景に映ったという。朝日新聞の取材に、嵐のファンだという19歳の大学生は「戦争の時代にタイムスリップしたみたいでびっくりした。なかなかできない経験でした」(朝日新聞デジタル9日付)と語り、BuzzFeed Japanは「比較的後ろの方の席だったが、本気で万歳をしている人は目立つくらい少なかった。何回やるんだって若干笑いも起きる空気で『ちょっと怖い』『これあってるの?』という声が聞こえた」という女性参加者の声を伝えている(「BuzzFeed Japan」9日付)。

「天皇陛下万歳」は日本の伝統じゃない! 軍国主義時代に皇国への忠誠のために作られた

 この「天皇陛下万歳」の連呼は、主催者が狙ってやったものだ。「国民祭典」を主催する「天皇陛下御即位奉祝委員会」の広報事務局は、メディアに対し「予定通りに行われたもの」と回答しているが、もともと、この奉祝委員会の設立を主導し奉祝事業を実施している組織は経団連と日本商工会議所、そして日本会議だ。また、奉祝委員会の設立発起人には櫻井よしこが「言論界・女性」の代表として名を連ね、百田尚樹や高須克弥、門田隆将といったネトウヨ文化人もこぞって出席している。執拗な「天皇陛下万歳」が計画的におこなわれたことだけをとっても、新天皇即位を利用して、戦前復古的なイデオロギーを広げようという目的は明らかだろう。

 いま、ネトウヨたちは〈天皇陛下をお祝いして何が悪い〉〈天皇の健康・長寿を祈る言葉であって、戦争とは何の関連性も無い〉〈無知な左翼が「戦前のようで時代錯誤」とすぐ戦争と結びつける姿こそ時代錯誤であり日本の恥です〉などと吹き上がっているが、バカも休み休み言ってほしい。戦中の日本で、兵士や市民たちが「天皇陛下万歳」と言って死んでいったのは歴史的な事実だ。

そもそも、「天皇陛下万歳」は1889年2月11日、大日本帝国憲法発布の日の観兵式で、英国の真似をして、明治天皇の馬車へ向かい万歳の掛け声をしたのが始まりといわれる。つまり、「天皇陛下万歳」は“日本古来の伝統”ではなく、明治から昭和の終戦の軍国主義時代のものでしかないわけだ。しかも、この「天皇陛下万歳」は、たんに一人の人間の長寿や健康を願うものではなく、まぎれもなく「皇国」(国家)や「皇軍」(日本軍)への忠誠強制の延長線上に出てきたものだった。

 戦前・戦中の天皇は、大日本帝国憲法において国家元首かつ統治権の総攬者であっただけでなく、「現人神」として神格化され、国家神道という宗教的支配システムに組み込まれた。「神州不滅」「万邦無比」のスローガンにあらわれるように、明治以来の日本の政治支配層は「日本は世界に並ぶもののない、天皇を中心とした永遠の神の国」という幻想を、国民や植民地支配した地域の人々に叩き込んだのである。

 国民は「天皇の赤子」として、その名のもとに戦争へ駆り出された。「天皇陛下万歳」は学校や地域の集会等でもおこなわれ、出征していく男たちを、その妻や子ども、親、隣人らが「万歳」と言って送り出した。戦地では、日本軍が「天皇陛下万歳」「大日本帝国万歳」などと叫びながら玉砕攻撃をしかける様を、連合軍の兵士は「バンザイアタック」と名付けた。太平洋戦争末期のサイパンの戦いでは、敗走した日本兵や日本人民間人の多数が「天皇陛下万歳!」などと叫びながら崖から身投げした。その岬は「バンザイクリフ」と呼ばれている。

特攻隊の遺書

 特攻隊員の遺書を見ても「天皇陛下万歳」などの記述がでてくる。『回天』(回天刊行会、1976年)から、いくつか抜粋して引用しよう。たとえば、海軍の人間魚雷こと回天の操縦士となって23歳で訓練中に遭難殉職した兵士は、出撃中の日誌にこう記している。

〈搭乗員ハ任務ニ勇躍邁進ノ栄ヲ担フ。懐シキ大津島ヲ後ニ、七生報国ノ白鉢巻ニ日本刀ヲ腰ニ勇躍棧橋ヲ離ル。幾度カ起ル万歳ノ声、吾人ハ只感激アルノミ。今吾人ハ無雑一念只邁進ス。
 大元帥陛下ノ御為ニ進ム道ハ只一条、今日ノ良キ日何故天ハ涙雨、吾等此ノ幸ヲ担ヒテ進ム。〉(1944年11月8日)
〈六尺褌ニ、搭乗服ニ身ヲ固メ、日本刀ヲブチ込ミ、七生報国ノ白鉢巻ヲ額ニ、黒木少佐ノ遺影ヲ左手ニ、右手ニハ爆薬桿、背ニハ可愛イ女ノ子ノ贈物ノフトンヲ当テ、イザ抜キ放ッタル日本刀、怒髪天ヲツキ、神州ノ曙ヲ胸ニ、大元帥陛下ノ万歳ヲ唱ヘテ、全力三十ノット、大型空母ニ体当リ。〉(1944年11月20日)

 回天に乗り込んで出撃し、19歳で戦死した兵士は兄宛ての遺書にこう刻んでいる。

〈今、生等決行数日前にありて念願致し止まざるは、
 天皇陛下万萬歳
 大日本帝国萬歳 のみにて御座候
 大日本帝国必勝を確信致し敵地に躍り込み候。生等の奮戦振りを在天の英霊も照覧し候へ。
 大君の御楯となりて征かむ身の
 心の内は楽しくぞある〉

 これが、戦中の「天皇陛下万歳」の実態なのである。「天皇とは神国日本そのものである」という前提で、日本の兵士や国民は「万歳」を唱えて死に、また、他国の兵士や民間人を殺した。

水木しげるが「戦争落語 天皇陛下バンザイ」で描いた、天皇と戦争、軍隊

 太平洋戦争でラバウルに出征した漫画家の故・水木しげるも、「戦争落語 天皇陛下バンザイ」(1982年)という掌編を残している。挿絵を入れた4ページのエッセイ作品だ。小学校時代、天皇の「御真影」が納められている小屋の前を通るとき、頭を下げて一礼せねばならないという規則があった。遅刻しがちだった水木少年は、小屋の前を敬礼せずに走り過ぎたのだが、その場面を校長先生に見られてしまった。水木は「天皇陛下万歳」の時代を、このように振り返っている。

〈子どものときに校長先生に立たされたぐらいでは、べつに天皇陛下がおそろしいとは思わなかったが、おそろしかったのは軍隊だ。そのころは戦争だったから天皇はカミサマだった。〉

 上官から「天皇陛下」の名前が出ると、“気をつけ”をせねば半殺しの目にあう時代だった。天皇の写真が載っている新聞を「ただの新聞紙だと思って」踏みつけてしまったがために殴られたこともあった。戦地でマラリヤや栄養失調にかかって、敵の飛行機が頭上にいてもなお、「おそれおおくも」と言われると“気をつけ”をして話を聞かなければならなかったという。水木は〈ぼくは個人的に天皇陛下に悪意をもっているわけではないが、ただその名の下にいろいろいじめられたから、動物がいちど鉄砲玉で撃たれると“鉄のニオイ”をこわがるように、昔の軍国主義にかえることはなんとなく生理的にいやなのだ〉と書いている。

〈最後に天皇陛下の名の下にいじめられたのは、敵に襲われて命からがら本隊に帰ったとき、大切な“陛下からいただいた銃”をもっていなかったために、ひどくいじめられたことがあった。「命が助かったんだから、小銃ぐらいなんですか」といった顔つきをしていたのがいけなかったのだ。“陛下からいただいた銃は命よりも重く、命は羽毛よりも軽い”というのが当時の考えだから(いや、当時としてもどうしても理解できないことではあったが)、「とにかくこの次は真っ先に死んでくれ」というのが中隊長の命令だった。〉

 「天皇陛下万歳」の本質は、天皇=お国のために死を賭して人生を捧げるという宣誓に他ならない。そして、「天皇」の名は日本の軍国主義、皇国史観を凝縮した言葉として、人々に強制力をもって暴力と戦争を肯定したのである。

 戦後はどうだったか。GHQによる統治と、天皇を「象徴」とする日本国憲法の制定を経て、「天皇陛下万歳」は徐々に天皇絶対主義者の専売特許的な文句となっていった。1960年の浅沼稲次郎刺殺事件で、テロに及んだ17歳の山口二矢が「天皇陛下万才」と書き残して自殺したことはよく知られている。昭和から平成への代替わりの際には、「即位礼正殿の儀」などの儀式における首相の「天皇陛下万歳」について、国民主権や政教分離の観点から議論が起きた。当時の海部俊樹首相は、先例にならって庭に降りるよう求める宮内庁に対し、新天皇と同じ松の間の上から「ご即位を祝して」とつけて「万歳」をする形式に変えた。

谷原章介が口にした「聖寿万歳」も戦前丸出し、日本会議系が仕掛けたエンドレス万歳

 だが、今回の平成から令和への代替わりでは、儀式や「天皇陛下万歳」に関する議論はほとんど盛り上がらなかった。新聞やテレビなどのマスコミも、十分に国民に議論を喚起する役割を果たしたとは言い難い。安倍首相は「即位礼正殿の儀」を“平成時の先例踏襲”というかたちでおこなうことで、論争を避けた。そのなかで今回、日本会議らがバックにいる「国民祭典」で、不意打ち的に「天皇陛下万歳」の大連呼、エンドレス万歳が仕掛けられたのだ。

例の「国民祭典」では、名目のなかに「天皇皇后両陛下のご健康を祈念」「世界平和を願い」などと混ぜ込むことでカモフラージュしていたが、その意味合いはさらに戦前、戦中に近づいたと言えるだろう。

 それどころか、司会の谷原章介がプログラム進行で口にしていた「聖寿万歳」という言葉は、「天子様のご寿命よ、永遠に」という意味で、完全に戦前に使われていた言い回しだ。たとえば、23歳で訓練中に行方不明となり殉職したとされる回天の特攻隊員は、遺書にこう書いている。

〈稔、皇国に生れてここに二十有四年。
 選ばれて神潮隊員となり、更に選ばれて今、沖縄決戦に身を投ぜんとす。
 光栄也。名誉也。真に男子の本懐たるを感ず。
 遺すべきはすでに家に遺せり。(稔の心中、今更何の加ふべきものもなし。
 唯々最后に、
 聖寿萬歳を祈念し奉り、
 皇国の必勝を祈るものなり。〉

 多くの国民が自覚しないまま、この国は、安倍政権によって、少しずつ戦中時代のムードに引き戻されている。実際、ネトウヨたちは「即位礼正殿の儀」など代替わり儀式の中継を見なかった人々を「非国民」などと呼んで攻撃している。ひと昔前は右翼の語彙でしかなかった「反日」という言葉も、いつのまにか日常的にメディアやSNSで使われるようになった。安倍首相とその支持者たる右派は、自衛隊を正真正銘の“軍隊”に変える9条改憲へと突き進んでいる。

 水木しげるは「戦争落語 天皇陛下バンザイ」をこう結んでいる。

〈ほんとうに国を守ろうとすると、それこそ“国が亡びるほど”の金がかかるから、世界中が仲よくするとか、世界中で核軍縮するとか、要するに“戦争のタネ”みたいなものをなるべく世界中におこさせなくするのも国防ということになり、とにかく前代未聞の複雑さだ。しかし、悪いこと(すなわち核戦争)がおきないとは誰もいいきれないことだから、このあたりで誰もが真面目に考えなればいけないことだと思う。〉

最終更新:2019.11.16 08:19

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