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杉田水脈が性懲りもなく国会質問に立ち“科研費”バッシング! 提訴され「科研費詳しくない」と逃げていたのに
またしても杉田氏が…(公式ツイッターより)
性懲りもなく、とはこのことだろう。性的マイノリティへの「生産性がない」発言で大炎上した自民党・杉田水脈衆院議員が、27日に衆院予算委第四分科会で質問に立った。
いくら安倍首相のお気に入りとはいえ、いまだこんな差別主義者にのうのうと国会議員をやらせ、質問にまで立たせるとは……。自民党の異常性を痛感させられるが、もっととんでもなかったのは、その質問内容だ。
27日の国会では、まず、東京書籍の中学用社会科教科書に「(戦中の日本では)多数の朝鮮人や中国人が強制的に連れてこられて、工場や鉱山などで酷い条件下で厳しい労働をさせられました」「朝鮮人は姓名を日本式に変えさせられたり、神社に参拝させられたりしました」「さらに男性は日本軍の兵士として徴兵され、若い女性も工場などで働かされ戦争に協力させられました」などの記述があるとして問題視。全く無反省に歴史修正主義ぶりを見せつけた。
そして、質問時間の最後には、またもや科学研究費助成事業(科研費)に関する“反日バッシング”を展開したのである。
「昨今の日韓関係において、旧朝鮮半島出身労働者問題が大きな課題になるなか、科研費を受けての本件の研究もなされていると認識しております。東京大学の外村大教授は『デニズンシップ:非永住・非同化型広域移民の国際比較研究』という科研費の助成を受けた共同研究の成果物として、岩波新書から『朝鮮人強制連行』という著書を出版しています。本著は多角的な視点から書かれているのですが、例えば、『今日までの歴史研究は本人の意思に反し、暴力的に朝鮮人を労働者として連れてくるという行為が行われていたことを明らかにしてきた』といった記述があります」
ちなみに、杉田氏の言う「旧朝鮮半島出身労働者問題」というのは、徴用工に関する問題のことで、昨年、安倍政権がその強制性のイメージをかき消すために言い換えたもの。戦中の大日本帝国は、植民地として支配していた朝鮮半島の人々を強制的に動員し、炭鉱など過酷な環境での労働を強いた。東京大学大学院の外村大教授は、この徴用工を含む植民地時代朝鮮研究・在日朝鮮人社会研究の第一人者のひとりだ。
どうやら杉田氏は、その外村教授の著書『朝鮮人強制連行』が科研費から成り立っているとして問題視したいらしい。国会では続けて、外村教授が別の科研費によって韓国で「同じタイトルの書籍を韓国語で出版している」として、こうまくしたてた。
「日本と韓国で出版された同タイトルの著書が、内容や記述まで同じなのかどうかはわかりません。しかし、同様に『今日まで歴史研究は、本人の意思に反して、暴力的に朝鮮人を労働者として連れてくるという行為が行われていたことを明らかにしてきた』という記述が韓国で出版されている韓国語の著書に書かれているとしたならば、この記述を韓国側に切り取られて、政治利用される可能性も否めないと考えます」
愕然とするではないか。杉田氏は“韓国側に政治利用される可能性があるので、外村教授の研究に科研費を出すな”と恫喝しているわけだが、だいたい、この人は外村教授の著書をちゃんと読んだのだろうか。本サイトでも昨年の韓国大法院判決の際の解説記事のなかで、『朝鮮人強制連行』を参照しているが、同書は公文書等から当時の法制度を段階別に詳細にわたって検証するなど、極めて学問的な手法で書かれており、杉田氏が示唆するような“政治的プロパガンダ”の類ではない。安倍政権に都合の悪い歴史事実を封じ込めようと“政治利用”しているのは杉田氏のほうである。
一貫性なく「左翼っぽい」と思う大学教授を実名で反日と喧伝
しかし、この極右政治家にそんなまともな反論をしても、もう聞く耳をもたないだろう。そもそも杉田氏は“科研費反日バッシング”の急先鋒。こうした学者への攻撃の発端は産経新聞が2017年12月13日の「『徴用工』に注がれる科研費」なる記事だが、杉田氏は昨年2月26日の同委分科会でこの産経記事を引き合いに出し、「科研費を使って韓国の団体と一緒になって反日プロパガンダをやっている」と批判。その後も自身のTwitterやネット番組などで、大学教授の実名をあげながら「科研費が反日の人たちのところに使われている」と喧伝してきた。
学者の研究に対して「反日」などとレッテル貼りをし、助成金を出すなと恫喝して自粛させようとのやり方は、まさに戦前・戦中の言論弾圧さながらだ。たとえば、1937年の矢内原事件は、東京帝国大学教授の矢内原忠雄が雑誌「中央公論」で“国家が混迷するとき理想に照らして現実の政治を批判する必要性”を説いた論考が、原理日本社の蓑田胸喜ら右翼から糾弾され、結果、辞職に追い込まれた。蓑田は矢内原の言論活動を「侮日的」「抗日的」と繰り返し非難していた。
また、杉田氏はTwitterでも、科研費助成事業のデータベースのURLを貼り付けながら〈人名を検索すれば誰がどんな研究で幾ら貰ったかすぐわかります。「慰安婦」とか「徴用工」とか「フェミニズム」とか入れて検索もできます。ぜひ、やってみてください!〉と投稿。ジェンダー論を専門にする牟田和恵・大阪大学教授に噛みつき〈ねつ造はダメです。慰安婦問題は女性の人権問題ではありません〉〈国益に反する研究は自費でお願いいたします。学問の自由は大事ですが、我々の税金を反日活動に使われることに納得いかない〉などと攻撃していた。結果、牟田教授が所属する大阪大学にはクレームの電話が入るなど、バッシングに晒された。
杉田氏が煽動しているのは、政権が気に食わない学者たちを「反日」としてあぶりだし、締め上げようとする言論弾圧に他ならない。完全に頭の中が戦中状態だが、しかも呆れるのは、杉田氏の攻撃があまりに雑であり、ようは「左翼っぽい人」をやみくもに叩きまくって悦に入っているということだ。実際、杉田氏は山口二郎・法政大学教授を名指し、〈二〇一五年の安保法制反対活動で、「安倍は人間じゃない。たたき切ってやる」と国会前で豪語したような人なんですから〉などと言いながら、山口教授らの研究内容にはほとんど言及しないまま、科研費からの助成を批判している(「WiLL」2018年6月号/ワック、渡邉哲也との対談「血税は何に 研費の蜜を吸う反日研究者を許すな」)。
杉田水脈の科研費攻撃に各大学が抗議、名指しされた学者は提訴
しかし、杉田はこれだけわけ知り顔で科研費バッシングをしながら「科研費」には“詳しくない”らしい。
昨年、関西ローカルで放送されたドキュメンタリー『バッシング ~その発信源の背後に何が~』(MBS毎日放送)が杉田の科研費バッシングをとりあげ、番組側は杉田氏に取材を申し入れた。ところが、杉田氏からの返事は「科研費に詳しくないのでインタビューは受けられない」という理由で取材拒否。国会でも質問でもそうなのだが、この人はなにが「反日」なのか明確に説明もせず、気にくわない相手を見つけては「助成金を出すな」とがなりたてている一方、自分の言論(ましてや国会議員である)には一切責任を取らず、頰被りしているだけなのだ。
当然、こうした「学問の自由」を蹂躙する政治からの圧力行為について、大学や学会、学者たちは正面から反論している。昨年5月、法政大は田中優子総長の名義で「自由で闊達な言論・表現空間を創造します」と題した見解を公表。〈昨今、専門的知見にもとづき社会的発言をおこなう本学の研究者たちに対する、検証や根拠の提示のない非難や、恫喝や圧力と受け取れる言動が度重ねて起きています。その中には、冷静に事実と向き合って社会を分析し、根拠にもとづいて対応策を吟味すべき立場にある国会議員による言動も含まれます〉として、〈適切な反証なく圧力によって研究者のデータや言論をねじふせるようなことがあれば、断じてそれを許してはなりません〉などと表明した。
明治大学も昨年6月、土屋恵一郎学長らの連名で声明を出し、田中法政大総長のメッセージを支持。〈一部国会議員や言論人が、学問の自由と言論表現の自由に対して、公然と介入し否定する発言を行っているのは、憲法を無視しているだけではなく、私たちの日常を支えている、民主主義のモラルを公然と否定するもの〉と断じたうえで、大学には権力の暴走を阻み、健全な市民社会を支えるための批判的精神が常に必要とされていると言明。〈私たちが今の日本を誇ることができるのは、この批判的精神を忘れないからであり、決してその時々の権力の内に「日本」があるわけではないのです〉と、「反日」なる不当な攻撃に真っ向から対峙した。
また、前述の牟田和恵・大阪大教授は今月、共同研究者である岡野八代・同志社大教授、伊田久美子・大阪府立大教授、古久保さくら・大阪市立大准教授とともに、杉田氏を相手取って、ツイッター投稿の削除と損害賠償などを求めて京都地裁に提訴。牟田教授らは「ねつ造」「慰安婦問題は女性の人権問題ではない」などという中傷等で社会的地位の低下や精神的苦痛を受けたと訴え、会見でも「影響力を持つ国会議員による学問の自由への介入だ」と主張した。
杉田水脈の強気の背後には安倍首相のお墨付きが
だが、今回、杉田氏はこうした反論や提訴を受けてもなお、懲りもせず、国会で妄想としか言いようがない“科研費反日バッシング”を展開したのである。まったく度し難いが、逆に言えば、杉田議員がこうした圧力発言を繰り返すのは、親分である安倍首相のお墨付きがあるからだろう。
実際、安倍首相は例の「生産性がない」発言が大問題になったあとも、「まだ若いから」と杉田氏をかばい、会合に仲良く同席していたという目撃証言もあった。
しかも、安倍政権は慰安婦問題や徴用工問題などで歴史修正の動きが顕著で、同時に、学校教育や学術研究に対する介入も強めている。典型が、2016年に自民党がホームページで「学校教育における政治的中立性についての実態調査」と題して設置した“密告フォーム”だろう。自民党は〈「子供たちを戦場に送るな」と主張し中立性を逸脱した教育を行う先生方がいる〉と書いて、これを〈偏向教育〉として通報させるフォームをつくった。つまり、この国の政府与党は、教員が「子供たちを戦場に送るな」と言う当たり前のことすら、「政治的中立」を騙って糾弾し、監視によって教育現場を統制しようとしているのだ。
杉田氏は「国民の税金である科研費を反日に使うな」と吠える。だが、「反日」かどうかは政治の恣意的な決めつけでしかなく、あらゆる学問は批判的考察によって成り立つ。繰り返すが、その目論見は「反日」というレッテルを使って気に入らない研究を狙い撃ちし、封殺しようというものだ。人権を無視し、学問の自由を無視し、差別を扇動し続け、そのくせ自らの言論に責任を取らないままのうのうと国会議員であり続ける。杉田水脈のような人物に、国民の税金から給与が払われていることこそ異常なのである。
(編集部)
最終更新:2019.03.02 11:50
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