『プライムニュース』韓国人ヘイト報道は氷山の一角! 韓国人差別を日常的に垂れ流すワイドショーの害悪

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ヘイトを垂れ流した『プライムニュース』(番組HPより)


 24日放送の『プライムニュースイブニング』(フジテレビ)が、韓国人に対するヘイトスピーチを垂れ流す特集を組んだことに、大きな批判が集まっている。

 番組では、海上自衛隊の哨戒機が韓国軍の艦船からレーダー照射を受けたとされる問題をとりあげるなか、キャスターの反町理・フジテレビ解説委員長が「韓国人の交渉術」と題したパネルで解説を始めた。反町氏は「ちょっとうんざりしている人もいると思うんですけど、韓国在住の、36年、韓国文化をよく知っている産経新聞ソウル駐在の特別記者、黒田(勝弘)さんによりますと」と言って、イラスト入りのパネルを補足するかたちでこのように述べた。

「韓国人の交渉術、これには3つのポイントがあるというんですね。ひとつ、強い言葉で相手を威圧する。ふたつ、周囲にアピールして理解者を増やす。みっつ、論点をずらして優位にたつ。と、こういうふうに言うんですけれども」

「韓国人の交渉術」などと国籍で一括りにして、「強い言葉で相手を威圧する」などとネガティブな言葉を連ねる。これは、明らかにヘイトスピーチであり、韓国国籍の人々に対して偏見をもたらす言い方だ。

 念のため確認しておくが、ヘイトスピーチというのは、とりわけ人種、性別、民族など、自分では容易に変更することができない属性を根拠にした差別的表現、あるいは差別によって犯罪行為を助長する表現のことをいう。当たり前だが、いかなる国籍や民族であろうが、人間の思想や行動は多様であるにもかかわらず、それを十把一絡げにして悪印象を扇動するのは、典型的なレイシズムの手段だ。

 しかも、反町氏は得意げに、「まあ、韓国人の行動パターン、国にも当てはまるとは限りませんが、黒田さんは、レーダー照射に関して言えば、韓国政府は自衛隊機の低空での威嚇飛行をあらたにポイントとして出すことによって論点をずらして、韓国国内でレーダーの話は消えたと。この3番目の戦術にあたるというふうにしてるんですね」などと平然と続けた。

 ようするに、レーダー問題は「国」=韓国政府に原因があるのではなく、「韓国人はみんな強い言葉で相手を威嚇したり、論点をずらすから」などとレッテルを貼り、ネガティブな「国籍・民族」であることを印象付けようとしているのである。これが公共の電波で発せられたのだ。極めて悪質としか言いようがない。

 実際、SNSでは放送後から『プライムニュースイブニング』に対して〈韓国人差別を正当化するフリップを出す異常さ。もう完全にレイシズム〉〈街中でヘイトスピーチが行われるこの国の現状を踏まえると、ヘイトクライムに繋がる危険性もあります〉〈BPO案件だろ〉などと批判が殺到した。

 ところが、28日11時現在でも『プライムニュースイブニング』およびフジテレビは一切、撤回やお詫びをしていない。

 25日の定例会見で、こうした批判について質問を受けたフジテレビ岸本一朗専務は「『韓国人』という形でプレゼンテーションしたことについては誤解を招きやすい表現になっている」と述べる一方、「日韓関係の改善策を探る報道ニュース内容。差別する意図はまったくございません」「韓国と日本の今のぎすぎすした関係について改善策を探っていく判断材料を提供するという意味では間違っていないと思っています」との認識を示した(朝日新聞デジタル25日付)。

 だが、実際に問題の放送を受けて、ネット右翼は〈韓国人差別とか、他マスコミが騒いでるみたいだけど、プライムニュースは事実を伝えただけ〉〈韓国への差別は韓国側の言いがかり!〉などと吹き上がっている。現実に、番組が「韓国人の交渉術」なる何の根拠もないヘイトを垂れ流したことで、ネットのレイシズムに勢いを与えているのだ。それを頰被りして「差別する意図はない」「間違ってない」と強弁とは度し難いとしか言いようがないだろう。

 しかし、フジテレビと『プライムニュースイブニング』が再発防止を約束せねばならないのは言をまたないが、今回の問題であらためて考えなくてはならないのは、他のマスコミも、こうしたレイシズムを扇動する報道を無自覚にやっていないかという視点だろう。

 周知の通り、テレビのワイドショーや新聞では、レーダー問題に限らず、徴用工問題や慰安婦問題などをあげつらって、連日のように韓国バッシングを展開している。もっとも、政府の政治姿勢や外交に対して批判することは言論の自由であり、ヘイトスピーチにはあたらないが、そこから一線を超えて、偏見や差別を助長しかねない報道が平然と行われているが現状だ。

産経新聞で韓国人ヘイトを撒き散らす安倍応援団の阿比留瑠比記者

 もっとも際立つのが、やはり産経新聞だ。驚くことに、問題の『プライムニュースイブニング』放送後の26日付で、番組でも名前があげられた産経新聞の黒田勝弘記者が、紙上で番組とほとんど同じことを得意げに開陳している(「ソウルからヨボセヨ 韓国人のケンカの仕方」)。

 黒田記者は、〈韓国人のケンカには3つの特徴がある。まず威張った態度で強い言葉や大きな声を出して相手を萎縮させようとする。2つ目は、周囲に訴え味方を増やして有利になろうとする。3つ目は、争点をずらし別の争点を持ち出して挽回しようとする〉などとして、さらに〈あるいは激高しながらお互い「何なら殴ってみろ!」と言って顔を突き出す。先に手を出すと「殴りやがったな!」と相手を非難し、それを周囲に触れ回って優位に立つ〉などと書き散らしたあげく、〈最近の日韓間の軍事的トラブルにおける韓国側の振る舞いも、こうした伝統スタイル(?)に合致している〉などと結論づけた。

 すでにヘイトスピーチだと批判された後にも関わらず、同じ差別扇動言辞を堂々と紙面に掲載する……。どうかしているとしか思えないが、産経では黒田氏だけでなく、同紙の阿比留瑠比・政治部編集委員もたびたび「韓国人」を主語にした差別的主張を続けてきた。

 たとえば、産経紙上での連載コラム「阿比留瑠比の極言御免」の1月9日付では、「変わらず自己中心的な韓国」と題し、〈『韓国の挑戦』などの著書もあり、かつては親韓派だった作家の豊田有恒氏はやがて韓国に批判的となり、4年前に出版した『どの面(ツラ)下げての韓国人』ではこう突き放している〉として、「同じ地球人と考えずに、どこか遠い異星の宇宙人だと考えたほうが、対応法を誤らない」。その上で、〈それほどまでに彼らの考え方、行動様式、慣習、常識、道徳観、価値観、美意識、世界認識などの日本人との差異は大きいのである〉と断言した。

 昨年11月1日の同コラム(「韓国に分かる形で怒り示そう」)などでは、『正論』(産経新聞社)同年3月号で阿比留氏が対談した西岡力・麗澤大客員教授の話を引用。「韓国人は、100のことを伝えたいときに200を言います。相手が200を言ったらそれを100と受け止める」なる西岡氏の主張を無批判にひっぱって、〈難儀な話だが、韓国に対してはそれ相応の対応を取るしかない〉とまくし立てた。

 また、昨年3月5日付産経新聞でのオピニオン記事(「韓国に怒りを伝えるためには」でも、「韓国人」を「DNA」で一括りにし、こう書いている。

〈数年前に韓国の学者と話をしていて、韓国の中国観の話題になった。彼は「韓国人は本当は中国が嫌いだ。何かと偉そうな態度をとる」と述べたうえで、こう赤裸々に続けた。
「だけど、韓国人は歴史的背景から中国に対する恐怖心がDNAに刻み込まれている。無理なことを言われても、『ご主人さまだから仕方がない』となる」
 結局、韓国が日本との約束を平気で破るのも、世界中に慰安婦像を建てるような侮辱行為に走るのも、支援を受けて感謝もしないのも、日本は反撃しない怖くない国だと認識されているからだろう。
 歴史問題でも何でも、韓国に迎合的な態度をとるのは「百害あって一利なし」なのである。〉

 もはや言葉もない。こうした言説が悪質であるのは、まさしく「韓国人の〇〇」や「DNA」などと言って国籍や民族でまとめ、“威張りちらす”“怒鳴る”“主張を喚き散らす”“論点をずらす”“中国には弱い”“同じ地球人と考えないほうがいい”などと連ねている点だ。何度でも言うが、こうして多様性・個性を無視し、ネガティブなステレオタイプをつくりあげて喧伝、バッシングする行為は、ヘイトスピーチの典型である。

ワイドショーでもコメンテーターが韓国人ヘイトを口々に

 もっとも、阿比留氏のヘイトオピニオンを見てもわかるように、これらヘイト言説は「正論」、「WiLL」(ワック)、「月刊Hanada」(飛鳥新社)ななどの保守論壇誌では日常茶飯事だ。いや保守論壇誌に限ったことではない。週刊誌でもこうしたヘイト特集は少なくないし、いまも書店にはヘイト本が数多く並びいくつかはベストセラーにすらなっている。

 それは、テレビも例外ではない。ワイドショーではここ数年、セウォル号事故、朴槿恵前大統領の汚職、財閥スキャンダル、BTSのTシャツ問題……と韓国バッシングネタは定番ネタとなっている。

 そこでは、コメンテーターたちの口から、「まともに付き合えない」「ゴールポストを動かす」「感情的」「極端」といった、韓国政府と韓国国民とを不分明な形で韓国ヘイトスピーチが垂れ流されてきた。セウォル号事故、朴槿恵前大統領の汚職、財閥不祥事といった問題は、当然韓国国内でも批判され韓国国民はその間デモなどで声を上げ事態を動かしてきたが、ワイドショーでは韓国政府だけでなくそうした批判の声をあげる国民のこともまた、嘲笑したり槍玉にあげてきた。

『ひるおび!』(TBS)の八代英輝弁護士、『ゴゴスマ』(CBCテレビ)の竹田恒泰氏、『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)の北村晴男弁護士といった安倍応援団コメンテーターらは、こうした韓国ネタでは安倍政権擁護のとき以上に熱が入ることも少なくない(ちなみに安倍応援団でも田崎史郎はヘイト発言はしない)。安倍政権に批判的でリベラルと目される番組やコメンテーターでも、韓国問題になると嫌韓丸出しになることもある。

 今回たまたま『プライムニュースイブニング』がわざわざフリップまで用意しSNSで拡散されたことで注目を浴びたが、こうした韓国人ヘイトを煽るような言説は多くのテレビ番組で定着してしまっている。もちろん日々それを目にする視聴者の間にもだ。限られた読者しか目にしない保守論壇誌や韓国ヘイト本と違って、テレビの影響力ははかりしれない。

 日韓関係が冷え込むなか、日本のマスメディアは、テレビでも新聞でも、留保なしで韓国政府批判を展開している。この“韓国が悪い”の大合唱のなかで、それが政府批判にとどまらず、「韓国人」という属性を攻撃することへの倫理的歯止めがなくなっているのだろう。いまのマスコミを支配しているのは“韓国批判なら何を言ってもOK、むしろもっと過激にするべし”という空気であり、それこそがヘイト言説をどんどん増長させている根源だろう。

 それは単に、韓国との対立を深める安倍政権に丸乗りしているだけでなく、一種の相乗効果となっている。外交でも内政でも行き詰っている安倍政権にとって、韓国は“仮想敵”として、いま政権浮揚に使える数少ないネタだ。レーダー照射問題は、防衛省の抑制的な声をふりきった安倍首相の鶴の一声で映像公開に踏み切ったことで泥沼化したが、それが国民に“ウケる”という安倍首相の計算があったことは想像に難くない。

 その意味で、レーダー照射問題の泥沼化と日韓関係の悪化は、安倍政権とメディアの共犯関係によって引き起こされたともいえる。今回の『プライムニュースイブニング』のヘイト報道が極めて悪質であることは言うまでもないが、これを機にほかの多くのマスコミにも蔓延る韓国人ヘイトもきちんと批判にさらされるべきだろう。

最終更新:2019.01.29 01:34

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