横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」27

伊計島、読谷村の相次ぐ米軍ヘリ不時着を現地で緊急取材! 未だ占領状態に地元から怒りの声

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伊計島の不時着現場(撮影・横田一)


 沖縄有数の観光地である読谷村のホテルから僅か400メートルの一般廃棄物最終処分場内の芝生に8日、普天間基地所属の米軍ヘリAH1が不時着した。伊計島に同じく普天間のUH1Yヘリコプターが不時着したたった2日後だ。

 この日、18時すぎに地元紙の速報「ヘリ、また不時着 読谷村儀間」が出た直後、筆者は那覇市内から現地に駆けた。そこでは沖縄県警と米軍の規制線を隔てて白いジャンバー姿の警察官と報道関係者が対峙していた。すぐ脇には「ホテル日航アリビラ」の入口を示す立看板。

 若い警察官に「機体を分解しているのか。修理して飛びたてる状況なのか」と尋ねても「自分はここにいるだけなので全く分かりません」と困惑した表情。事故原因を調べる権限があるのは米軍だけで、沖縄県警は不時着機に近づくのを阻止する下請け機関にすぎない。

 道路脇では第一通報者の農家の儀間恭昇さんが囲み取材を受けていた。

「農作業を終えて振り返ると、ヘリがいつもよりも低空で来ていた。そのうち見えなくなって落ちたと思った」と不時着当時の様子を説明。2日前の6日にはうるま市伊計島でヘリが不時着したばかりであることについては、「またかという感じ。米軍は日本の法律を超えた存在で何をやっても許される。菅官房長官は『日本は法治国家』と言って辺野古新基地建設を強行しているが、本当に法治国家なら住民を危険にさらす低空飛行を禁止すべきだ」と語気を荒げた。

 同じ普天間飛行場所属のUH1Yヘリが伊計島に不時着、8日午前中につり上げ撤去が行われた直後であったため、怒りを露わにするのはごく自然に感じられた。

 規制線周辺に報道陣が殺到していたので覗いてみると、共産党の赤嶺政賢衆院議員(沖縄1区)や瀬長美佐緒県会議員や伊佐真武読谷村議ら地元議員が現地調査を求めて沖縄県警と押し問答中。赤嶺氏は伊江島のヘリ不時着現場にも急行、筆者は近隣住民ヒアリングに同行取材させてもらっていたため、「不時着が相次ぎますね」と声をかけると、「米軍ヘリの全機種点検と安全確認がされるまでの運行停止をするべきです。通常国会でも日米地位協定見直しの論議を開始する必要がある」と強調した。

未だ占領状態の日本。沖縄防衛局も飛行停止を要請せず

 同じように米軍が駐留しているイタリアなどは、低空飛行や夜間飛行の禁止など訓練制限(規制)や米軍と共同で事故調査に当たるのは当然の権利となっている。しかし日本だけが未だに敗戦直後と同じ占領国状態になったままだ。
 
 このことをズバリ指摘したのが、読谷村の石嶺伝実村長。現場確認をした後、囲み取材で次のように語っている。

「立て続けに米軍ヘリが不時着し、極めて異常な状況が起こっている。沖縄は米軍の占領地ではないはずだ。原因究明まで一切の米軍機の飛行を停止してほしい」

 しかし、続いて囲み取材に応じた沖縄防衛局の中嶋浩一郎局長は「近くには大型ホテルがあり、たくさんの住民が暮らしている場所でこのような事案が起きてしまい、申し訳なく思っている」と謝罪した上で、米軍に原因調査の申入れをしたことを明らかにしたが、飛行停止にまでは踏込まなかった。「なぜ飛行停止をすぐに求めないのか」と聞いても、「事故を重く受け止める」という曖昧な回答しか返って来なかった。占領時代の属国的対応を未だに続けている安倍政権の実態が透けて見えた瞬間だった。

 この後、報道陣(フリーの記者は排除)が不時現場近くまで案内されたが、「米兵が機体側から強力なライトを照らして逆光状態にして写真撮影を妨害。これに報道陣が抗議をした」(現場確認をした記者)という。

 調査権限があるのは米軍だけで、日本国民には知る権利など存在しないと言わんばかりの差別的対応といえる。読谷村に不時着したAH1攻撃ヘリは、翌9日朝に離陸して普天間基地に到着した。

●伊計島ヘリ不時着の現場で聞いた住人の憤り。事故は住民より米軍の都合を優先!

 伊計島には不時着の翌7日に駆けつけると、ちょうど共産党調査団が近隣住民(漁民)から道端で話を聞いているところだった。この漁民は、不時着の様子を次のように振り返っていた。

「新年会をしている時に『おかしい』という話になって、身内に現地に見に行かせたのです。ヘリが不時着した昨日(6日)はたまたま新年会があったから海に行かなかったのですが、前日まではあの時間帯は浜で貝を獲っていました。祝いの日には漁をすることを控えるのです。(不時着現場には)オイルフェンスを敷いた上で、ヘリからガソリンを抜いていました。不時着した時間帯は干潮の時間帯だったから砂浜に降りられましたが、満潮時は海水に漬かっていた場所で、漁業権に触れていることになるのです。漁協の組合長には『これは漁民にとっても死活問題。(規制線が張られて)海に行けないのです。だから簡単に処理してはいけない。緊急役員会を開かないといけない』と伝えました」

 1年前にも伊計島の農道にヘリ不時着する事故が起きたが、「自分たちから言わせると、誰が考えてもおかしいさ。今回も1年前も降りようと思えば、演習場の浮原島(うきばるじま)に降りることができたはず」だと言う。浮原島での訓練の帰りらしいからで、なぜUターンをして、すぐ近くの浮原島に降りなかったのか。それは、橋で陸続きになっている伊計島と違って陸続きではないからではないか。トラブル処理に都合がいいので、民家がすぐ近くの伊計島の浜に降りたのではないかと憤っていた。

 地域住民より米軍の都合を優先した疑念が生じていたわけだが、ヒアリング調査に加わっていた伊盛サチ子うるま市議も同じ見方をした。

「陸続きの場所になるべく不時着するというのは、米軍のマニュアルにあるのかも知れません。『緊急着陸』と言ってもすぐに飛び立てる時もあれば、今回のように分解が必要な場合もある。その場合は陸続きではない浮原島に降りたら大変です」

●相次ぐ事故に翁長雄志知事が「日本政府は当事者能力がなく恥ずかしい」」と怒りを爆発

 伊計島は日常的に米軍のヘリが行き交う"通り道”なのだという。

「例えば、普天間基地から(訓練場の)浮原島上空に行く時にここを飛びます。それから辺野古、宜野座、やんばる、東村、いま問題になっている高江のヘリパットに飛んでいくのは、みんな伊計島を通っていくから。だから毎日のように飛んで行く"通り道"になっています。たまたま昨日(6日)は『このヘリコプターはこんな飛び方はないよ』と話をしていました。普段に比べてすごい低空飛行であったのと、機体がふらついてもいました。(新年会で)親戚の間でそういう話をしているうちに、『降りたよ』ということで、確認に行ったのです。(「今回の事故で米軍や防衛省に求めることは? 」との問いに)民家の上には飛んで欲しくない。1年前に農道にヘリが降りた時にも、自分たちは農家ではなくて漁民なのですが、いろいろ話をしました。伊計島には伝統漁法があるわけよ。リーフの上に立って小さい船に網を乗せて、魚が上ってくるタイミングを見て網で巻く。しかしヘリが飛ぶと、せっかく上ってくる魚が音で逃げてしまうのです。だから農家だけでなく、漁民も迷惑、被害を被っています。特に最近は低空飛行がすごいです。辺野古が決まる前は、かなりの高さで飛んでいたのですが、今はヘリの下側がはっきり見えるくらいです。これも辺野古新基地に絡んでいるのではないか」

 伊計島に不時着したヘリは、同じ普天間基地所属のUH1ヘリコプターだが、こちらは自力での離陸不可と判断されてローターなどが分解、運び出された。そして軽量化した本体は8日午前、釣り上げ撤去が行われた。

 いずれの不時着も応急措置はすぐに行われたが、原因調査内容や再発防止策については発表されず、運行停止がされる兆しも全くない。翁長雄志知事が9日、「県民が日常的に危険にさらされている。日本政府は当事者能力がなく、恥ずかしさを感じてもらいたい」と怒りを爆発されたのは当然のことだ。

 他にも沖縄では在日米軍の事故が相次いでいる。2016年12月には名護市でオスプレイが墜落(メディアは不時着、着水と表現)、翌1月、AH1が伊計島に緊急着陸、6月久米島にCH53Eヘリ緊急着陸、さらにオスプレイが6月に伊江島、9月に石垣島に緊急着陸、10月には高江にCH53 Eヘリが不時着炎上、12月には普天間基地近くの保育園の屋根にプラスチック製のCH53Eの装置カバーが落下、その直後には普天間第二小学校のグラウンドに、大型輸送ヘリCH53E の1メートル四方のコックピット窓枠が落下した。

 戦後70年以上経った今も続く占領国状態の中で危険にさらされる沖縄県民――米国に物が言えない安倍政権の属国的対応はいつまで続くのだろうか。

最終更新:2018.01.10 11:46

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