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新年特別企画 芸能人「よく言った!大賞」(後編)6位〜10位
中居クン、土田晃之、蛭子さんも安倍政権や安保に異議! 炎上を恐れずよく言った!芸能人 6位〜10位発表
左・長渕剛 OFFICIAL WEBSITEより/右・美輪明宏公式サイトより
ちょっとでも政治的な発言をしようものならすぐに炎上、ネトウヨから総攻撃を受ける状況で、安倍政権や安保法制、憲法について毅然と発言をした芸能人にリテラが勝手に贈る「炎上を恐れず、よく言った!大賞」。昨日は大賞と2位〜5位を発表したが、勇気あるタレント、芸人、アーティストはまだまだいる。後編は6位〜10位を一気に発表しよう!
★6位 中居正広 “対案厨”松本人志の安保法制賛成論にも怯まず平和主義を擁護! 本質を抉りだすその「無知の知」
実はSMAPの中居正広も、安保法制論議に参戦し、リベラルな姿勢を表明したひとりだ。
現役トップアイドルが政治的発言をしたというだけでも驚きだが、リテラが中居クンに感心したのは、あの松本人志に対して毅然と自分の姿勢を貫いたことだ。
8月9日、松本がホストを務める『ワイドナショー』(フジテレビ系)に中居クンが出演した時のこと。若者たちのデモに関する話題になった時、松本はもちろん、石原良純、東野幸司ら中居クン以外の出演者が全員、デモに否定的な姿勢をとったのだが、中居クンは敢然とこう反論したのだ。
「若い子が声をあげるのは、ぼくはいいことだと思う」
「ぼくがうれしかったのが、『あ、関心をもってるんだ!』って。ね。なーんか動かなければ、これ通ってしまうぞっていうような意識をもっていることは、すごくいいことだなって思います」
すると、松本人志が「安倍さんがやろうとしていることに対して『反対だ!』っていう意見って、意見じゃないじゃない。対案が出てこない」「このままでいいと思っているとしたら、完全に平和ボケですよね」「憲法9条ではなめられる」と、中国脅威論に踊らされているだけの対案厨の典型的意見を口にして、それを封じ込めようとする。
今のテレビ界で大きな力を持っている松本にこう言われたら腰砕けになるところ、実際、周りの出演者は松本の意見にただうなずくだけだった。
が、中居は、ソフトな口調ながら毅然と、松本に日本国憲法の意義を説いたのだった。
「でもね、やっぱり松本さん、この70年間やっぱり、日本人って戦地で死んでいないんですよ。これやっぱり、すごいことだと思うんですよ」
実は中居は以前もこの番組で、物議をかもす発言をしたことがある。
日韓関係がテーマになった時、「謝るところは謝ればいいんじゃないですか?」とシンプルな正論をはいたのだ。
これに対して、松本や東野は炎上を恐れ“中居は空気を読めていない”といわんばかりに露骨な苦笑いを浮かべるばかりだったが、中居は「違うの?」「謝ったら負けとかそういうレベルなんすか?」と引き下がらなかった。
中居はこの時、ネットで「バカ丸出し」「あっさい知識で語るなよ」と大炎上したが、「あっさい」のは松本やネットの対案厨の方である。
中居は彼らと違って、バカにされることを恐れない。むしろ、あえて子供のようにシンプルな、でも本質的な疑問を投げかけることで、頭よさげにみえる意見が実は何かに踊らされ、欺瞞に満ちていることを抉り出す。いわば、中居は“無知の知”というものを自覚的に演じているのだ。
実際、今回の発言にかぎらず、中居がMCとして高い評価を集めているのは、バックボーンにこの“無知の知”があるからではないか。リテラとしては、ぜひこういう人物に『報道ステーション』をやってほしいのだが……。
★7位 高田延彦 “自民党の犬”ばかりの格闘家の中でただひとり「安倍首相は横暴でむちゃくちゃ」と政権批判!
体罰推奨発言で文部科学大臣としての資質を問われた馳浩をはじめ、大仁田厚、グレート・サスケ、神取忍、西村修など、プロレスラーから政治家に転身した人間は多いが、そのほとんどは自民党で、右翼・保守思想の持ち主。まあ格闘家なんてそういうものだろう、と思っていたら、高田延彦が(高田は政治家に転身はしていないが)ツイッターを通して、敢然と安保法制批判を展開した。
「この安保法制は憲法違反。まともな論拠がない上に安倍氏、中谷氏、高村氏、若手議員などなど、申してることが横暴でむちゃくちゃだもの」
「6日に開かれた政府与党連絡会議で安倍氏『おごりや油断が生じれば、、、』と述べたらしいが、本人が先頭に立って驕っている事実にまったく気づかないこれまた驕り」
かなり激烈な安倍政権批判だが、高田がこのような発言をするようになったのは最近のことではない。昨年の集団的自衛権容認の閣議決定前後から、高田は一貫して「戦争のできる国」をめざす安倍政権の姿勢を批判してきた。14年6月にはこんなつぶやきも投稿している。
「集団的自衛権。これだけ重要な憲法のこれまでの解釈を真逆に変えるなんて、時の政権が勝手に、それも閣議決定で!断じてあってはならない、やるならば正々堂々と国民投票で審判を仰ぐべき」
高田延彦が子どもを授かるのに大変な苦労をしたこと。また、代理母による出産の子どもの出生届を出すも「実子でなく養子」として受理しようとする行政に対し最高裁まで争ったことを覚えている方も多いだろう。格闘家としては珍しい、高田のリベラルな思想は、この体験から来ているのかもしれない。
最近ではすっかり「良きパパ」のイメージが色濃い高田延彦。愛する家族を守るため、これからも戦い続けてほしい。
★9位 土田晃之 器用なだけのひな壇芸人じゃなかった! 安倍首相に「テメーが歴史に名を残したいだけ」と激烈批判
4位で笑福亭鶴瓶の発言を紹介したが、実は、お笑い芸人というのは空気を読む商売だからか、政治的発言をする者は意外に少ない。そんな中、勇気ある発言をしたのは、土田晃之。ひな壇芸人としてピカイチの実力を誇る彼だが、9月20日、自身のラジオ番組『土田晃之 日曜のへそ』(ニッポン放送)のなかでこんな言葉をしていた。
「今回国民のデモとかがあって反対している人もいますし、僕もどっちかというと反対なんですけど」
「安保って今よりさらに戦争をしないようにと安倍さんは言っているわけですよね。でも、取りようによってはこれで戦争ができてしまう」
芸能人が政治的な話題を口にすると、すぐ大炎上してしまう状況にも関わらず土田がこのような発言に踏み切った理由、それは、かつて祖父母から聞いた戦争の体験談にあった。
「国民は我々を含めて戦争しちゃいけないし、したいとも思っていない。死んだ婆ちゃんや爺ちゃんがよく言ってたのは、戦争を経験していて本当に悲惨な目にあった、大変だったよという話で。東京大空襲や大阪もそうですし、なんせ唯一の被爆国でもありますから。戦争は本当に絶対しちゃいけないと思っている」
また、続けて彼は安倍晋三という人物の内面にも踏み込んで批判を行った。
「安倍さんはもうちょっと国民の人たちに納得できる、この先絶対戦争を起こりませんよということを、ちゃんと説明してからじゃないと。ちょっと焦り過ぎですよね。焦っている感じは、テメーが歴史に名を残したいだけなのかな。おじいちゃんを超えたいんでしょう。たぶん(フッと嘲笑)。岸(信介・元首相)さんを。『俺は憲法をいじったんだぜ』くらいに思ってるのかなぁ」
安倍首相が抱える祖父へのコンプレックスは、学者や政治ジャーナリストからも指摘されてきているものであるが、芸能人がここまで踏み込んで批判を加えるのはかなり珍しい。土田といえば、バラエティ番組で見せる器用な立ち振る舞いが評価を集めているが、その裏には豊富な知識さと一本筋の通った信念があることを感じさせた。
★9位 蛭子能収 自由を何より愛する脱力系マンガ家が一番怖いのは安倍政権の“野蛮な”思考! その妙な説得力を評価
「本音」丸出しで歯に衣着せぬ発言を繰り返す姿勢が共感を呼び、絶賛再ブレイク中の蛭子能収。その勢いは2015年も衰えることはなかった。芸能界のタブーなんぞ知ったこっちゃない蛭子さんは、昨年出版された『ひとりぼっちを笑うな』(KADOKAWA)でも、
「ここ最近の右翼的な動きは、とても怖い気がします。安倍首相は、おそらく中国と韓国を頭に入れた上で、それ(集団的自衛権)をとおそうとしているのでしょうけれど、僕はたとえどんな理由であれ、戦争は絶対にやってはいけないものだと強く思っています」
といった発言で、戦争へ突き進もうとする安倍政権の政策を痛烈に批判していたが、「命」、そして、「自由」を守ることの大切さを訴え続けてきた蛭子さんにとって、今年の安倍首相は昨年以上に我慢ならないものだった。11月に出版された『蛭子の論語 自由に生きるためのヒント』(KADOKAWA)では「“野蛮な人”の思考」という表現まで使い、さらに強い安倍批判を繰り広げている。
「安倍晋三政権が強い姿勢で挑んでいる、「集団的自衛権」などの行使を可能とする「安全保障関連法案」の問題。テレビのニュースや新聞で動きを見ていても感じるのだけど、「やられる前にやる」っていうのは“野蛮な人”の思考ですよ。人間はジャングルの猛者ではないんだから、もっといい考えが浮かぶはずなのにな。そのために法律を変える努力をするぐらいなら、どうしたらそれを避けることができるのかを考えるべきですよ。
「真の政治っていうのは、本来そういうものだと僕は思うんですけどね」
ただ、蛭子さんがちょっと残念だったのは、あの松本人志の前ではつい日和ってしまったことだった。
9月20日放送の『ワイドナショー』(フジ)で意見をふられた蛭子さん、「松本さん、賛成って言ったのはビクッとした、勇気ある発言だなって」と、完全に媚び媚び発言。先ほどご紹介した中居とは真逆の展開になってしまったのである。
まあ、蛭子さんの著書を読むと、人生において大事にしている姿勢に、「他人と争わない」というものがあるらしいので、それが出てしまったということだろう。今年はぜひ、松本の前でも自分の意見を貫いてほしいという願望も込めて、9位にランクインさせてもらった。
★10位 くるり岸田&アジカン後藤 沈黙するアーティストが多い中で安倍の強権政治を鋭く抉りだした二人の知性派ミュージシャン
ジョン・レノンやボブ・ディランの例を出すまでもなく、「ロック」は本来、「平和」や「反体制」のメッセージを体現する音楽。そういう意味では、安保法制に関する問題が噴出した今年は、日本のロックミュージシャンたちがもっとも大きな声でそのメッセージを叫ぶべき年であったと言える。
だが、実際には、商業主義に浸っているミュージシャンたちは、あまり積極的に安保法制反対を叫ぶことはなかった。
そんな中、安倍政権と安保法制にはっきり異を唱えたのが、岸田繁(くるり)と後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の二人。
まず、岸田繁は、安保法案が強行採決された7月15日に「圧政やな」とツイート。そして、続けざまに安倍政権へのアンチテーゼを畳み掛けた。
「侵略戦争こそが非であり、加担は下衆だと胸を張って言おう。ニコ動での首相からのアホアホ例え話聞いて、あれは歴史に残る国民への侮辱だと思いますた」
後藤正文も同じく、安倍政権に対し強烈な怒りを覚えるミュージシャンの一人。彼は「Rolling Stone日本版」(セブン&アイ出版)2015年7月号のインタビューでこんな攻撃的な一言を投げかけた。
「最悪のタイミングで、最悪の人が総理大臣になっていると思います」
では、なぜ、安倍のような人間が一国のリーダーに居座る状況が生まれてしまったのか、後藤は以下のように分析している。
「世の中の一般的な人たちって、大きな変革がものすごく好きなの。破滅願望と似ていて、『何か起きねぇかな』みたいな想いの裏返しですよね。すごいリーダーが現れて、俺たちの社会をバラ色にしてくれるんじゃないかっていうような。そういう願望が、安倍(晋三)さんとか橋下(徹)さんみたいな人の登場を担保しているわけなんですよ。だけど、みんなの願望と実情が上手く噛み合うことはない。」
ちなみに後藤はリテラにこの発言を紹介されたことがかなり迷惑だったようで、SNS ではリテラ批判もしていたが、やはり素晴らしい発言なので、紹介しておく。
それはともかく、岸田も後藤も、インタビューやSNS上の発言だけでなく、楽曲でも、このような社会的トピックを歌詞にしてきた人たちだ。今後も炎上に怯まず、この国で起きていることを言葉にしていってもらいたい。
ということで、前後編にわたって「炎上を恐れずよく言った!」芸能人1〜10位を紹介してきたが、実は上記の芸能人たちと同様、いやもっと激しい安保、安倍批判をした芸能人、ミュージシャンがいた。あまりに濃すぎる存在なので、あえてランクインさせなかったのだが、最後にこの二人を「殿堂入り」として紹介したい。
★殿堂入り 美輪明宏&長渕剛 「安倍さんはご自分が戦場へ」「どす黒いはらわたの連中に」 やっぱりこの二人は迫力が違っていた!
まずは、今年も紅白出場した芸能界の妖怪・美輪明宏。美輪はスタジオジブリが発行している小冊子「熱風」8月号のなかでこのような発言をしている。
「(人間は)失敗を繰り返してばかりいる。安倍さんや、石破(茂)さんや、麻生(太郎)さんにしても、みなさん、言い出しっぺの責任を取っていただいて、徴兵制になるならば、まずご自分が、年齢に関係なく、鉄砲を担いで、鉄兜をかぶって、まず第一線に出ていただく。それから、お子さんも、孫も、きょうだいも、それから娘さんのボーイフレンドも、全部一緒に連れ立って第一線に、まず最初に出ていただく。もちろん一兵卒でね」
「それから、それに賛成している選挙民の人たちも、ご自分が支持して選んだんだから、選挙民もまず一家を挙げて、どうぞ出征してくださいって。男の方たちは、ご自分が殺し、殺されにいきたいんでしょ。どうぞ、いらしてください。それだけですよ」
美輪はなぜこのような挑発的発言をしたのか? それは、美輪自身、長崎での被爆体験もある戦争体験者だからだ。戦中・戦後の地獄を見てきた美輪は、常々戦争の愚かさを語ってきた。日本は「戦争」ができるような国ではない。それは歴史を振り返れば火を見るより明らかだ。
「私は笑ってますね。学習能力がないということでしょう。第二次大戦と同じ。歴史に学んでいないんです。」
もう一人の長渕剛も過激だった。今年は夏に行われた富士でのオールナイトライブも記憶に新しい長渕だが、そのライブの冒頭はこんなMCで幕を開けている。
「我々の歌を富士から安倍首相のもとまで届けよう。どす黒いはらわたの国会の連中まで響かせようぜ」
当サイトでも折に触れて取り上げているが、長渕剛という男は、戦争礼賛のネトウヨなどでは断じてない。むしろ真逆。高田渡や友部正人などの60年代から70年代の反体制的なフォークシンガーに影響を受けて歌手を志した長渕は、その長いキャリアで一貫して「平和」を歌い続けてきた。7月に出演した『ワイドナショー』では、こんな発言も残している。
「いまのこの流れでいくと、理屈はわからないんですけどね、感覚論としてね、戦争が近づいている気がするの。もう紛れもなくそこに近づいている気がしますよ。それをね、僕たちはどうやって阻止すべきかってことを非常に真剣に考える局面がありますよ」
また、長渕は今年、出版された『長渕剛 民衆の怒りと祈りの歌』(河出書房新社)でSEALDsと「希望を見た」大きな共感を寄せる一方、沈黙を続ける若手ミュージシャンたちに「銭が欲しいなら医者か弁護士になれ」と檄を飛ばしている。その迫力はさすが、というしかない。
………………………………………………………………………
いかがだったろうか。「炎上を恐れずよく言った!芸能人大賞」。『報道ステーション』古舘伊知郎や『NEWS23』岸井成格のケースを引くまでもなく、メディアで政権批判や政治問題を扱うことは、今年、ますます「タブー」化されていくことだろう。それでも、芸能人、タレント、アーティストのみなさんはぜひ、その圧力に負けずに声を出し続けて欲しい。あなたたちの言葉のひとつひとつは私たちを勇気づけるというだけでなく、現実のこの国を覆う閉塞状況を切り裂き、言論の自由を取り戻す第一歩となるのだから。
(編集部)
最終更新:2016.01.02 10:35
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