あのノーベル賞科学者が安倍政権の軍学共同政策を批判! 軍事に手など貸すものか! 戦争協力への動員はもう始まっている!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
masukawatoshihide_151006.jpg
『科学者は戦争で何をしたか』(集英社新書)


 大村智・北里大特別栄誉教授がノーベル医学生理学賞を受賞しおめでたムードが広がるなか、本日18時45分(日本時間)には物理学賞が発表される。昨年のトリプル受賞につづいて日本人の受賞に注目が集まるが、ここで、あるノーベル受賞者の言葉を紹介したい。

〈ノーベル物理学賞や化学賞は、将来的に人類の発展に著しく貢献するであろうと評価された科学技術、そしてその開発に寄与した科学者に与えられるものですが、一方でその技術が戦争で使われる大量破壊兵器の開発に利用されてきたのも事実です。(中略)ノーベル賞を授与された研究は、人類の発展のためにも殺人兵器にも使用可能という諸刃の技術と言ってもいいでしょう〉

 このように述べるのは、2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英・京都大学名誉教授。ノーベル賞受賞記念の講演でも自身の戦争体験にふれ、さらに「安全保障関連法に反対する学者の会」にも参加し、安倍政権の暴走に警鐘を鳴らしてきた人物だ。

 そんな益川氏は、今年8月に『科学者は戦争で何をしたか』(集英社新書)を上梓。科学者がどのように戦争に加担してきたかということや、現在の安倍政権が進める戦争できる国づくりに、科学者としていかに抵抗するべきかを綴っている。

 そもそも、ノーベル賞設立を遺言したアルフレッド・ノーベルはダイナマイトの発明者であり、その発明品の殺傷力から彼は「死の商人」と呼ばれた。いわばノーベル賞は“不名誉なレッテルに傷ついたノーベルの名誉挽回”のために生まれた。

 しかし、こうした経緯で誕生したノーベル賞も、その受賞者たちの功績は戦争の道具となってきた。たとえば、放射能の発見で物理学賞を受賞したピエール・キュリーは受賞記念講演で「ラジウムが犯罪者の手に渡ると、非常に危険なものになるでしょう」とあらかじめ警告し、アインシュタインは日本への原爆投下後、深い反省から核廃絶活動に取り組んだことは有名だ。

 だが、その一方で“愛国者”として積極的に国策に協力したフリッツ・ハーバーのような科学者もいる。毒ガスを開発したハーバーはアンモニアの合成法でノーベル化学賞を受賞したが、その後も〈化学兵器の開発に没頭〉し、結果、それはナチスによってユダヤ人の虐殺に使用された。しかも、ハーバーはユダヤ人であり、自身の研究が同胞の殺戮に使われた事実を前にしても、〈死ぬまで一度も自責の念を表したことはなかった〉という。

 といっても、ハーバーのような熱心な愛国者ではない科学者でも、戦争になれば〈国策を支援する組織に半強制的に組み込まれてしまう〉ことになる。それに、科学者の意見は政策決定に反映されることはない。原爆開発にかかわりつつも、日本への投下に反対した物理学者のレオ・シラードの声がアメリカ政府に無視されたように。

〈戦時下における科学者の立場というのは、戦争に協力を惜しまないうちは重宝されるものの、その役目が終われば一切の政策決定から遠ざけられ、蚊帳の外に置かれます。国策で動員されるということはそういうことです。「便利なものをつくってくれてありがとう」で終わり。どんな軍事兵器もそれが完成した時点で研究者、開発者の手から離れ、一〇〇パーセント政府のものとなります。そして、それがどんな危険な使い方をされようと、開発者は手を出せなくなるのです〉

 だからこそ、戦後、世界中の科学者たちは手を結び、ノーベル平和賞を受賞した「パグウォッシュ会議」をはじめとして核兵器の廃絶を訴える平和運動を展開してきた。しかし、そうした科学者たちの声明や宣言は〈(各国の首脳陣が)どこまで真剣に目を通してくれているのかは定かではない〉。とくに、〈日本の首脳からの返事くらい「味もそっけもない」ものはなかった〉ようで、〈外務省の担当者から受け取り確認の返事が来るだけで、世界で唯一原子爆弾の被害を受けた国の反応とは思えない〉ものだったという。

 事実、科学技術の軍事転用は繰り返された。ベトナム戦争時に暗躍したアメリカ国防総省による「ジェーソン機関」という秘密組織では、ノーベル受賞者を含むエリート科学者が集められ、〈アメリカ軍兵士の犠牲を減らし、ベトナムの人々を有効かつ速やかに殺すか、そのノウハウを提供〉した。彼らはゲリラの浸透を防止する電子バリヤーや新兵器を使用した暴動鎮圧技術などを研究する一方、殺害したベトコンの正確な人数を把握したいというアメリカ軍将校に、〈殺したベトコンの左耳を切り取って針金に刺し、兵士に持ってこさせれば〉いいというアイデアさえ出したという。このことを知った益川氏は〈まさに科学者の精神動員だ〉〈ここまで戦争に取り込まれ、非道な殺人のアイデアを出せる状態というのは、明らかに洗脳されたとしか思えません〉と綴る。

 ここまで読んで、「科学者の精神動員なんて、いまの時代そんなことさせないでしょ?」と楽観的に捉える人もいるかもしれない。だが、益川氏は〈むしろ、現代の精神動員は、実に巧妙に金と権力を使って科学者たちを取り込んできています〉という。

 その一例が、安倍政権が進める「軍学共同」「産学協同」だ。益川氏は〈大学や民間の研究者の取り込みは、戦前・戦中の強制的な科学者の動員とは違いますが、資金援助というエサで研究者を釣るのは、ある意味間接的な動員と言えるのではないでしょうか〉と危惧する。

 たとえば、これまで軍事研究を禁止する方針を出してきた東京大学も、今年に入って軍事研究を一部容認したと報道された。これは2013年に安倍政権が閣議決定した大学の軍事研究の有効活用を目指す国家安全保障戦略を踏まえたもの、と見られている。

 ここで立ちはだかるのは「デュアルユース」という問題だ。ロボット開発やドローン、小惑星探査機「はやぶさ」などの技術は、一般的に考えればわたしたちの生活に役立つものと考えられているが、これらの技術は当然、軍用にも利用できる。つまり、軍事研究解禁の問題も〈デュアルユースが可能な技術を軍事利用と決めつけず、もっとオープンに検討してもいいのではないか、という立場を取ったのではないか〉と見ていると益川氏はいう。

 しかし、だからといって「デュアルユースの時代だから仕方がない」と益川氏は科学者の責任を放棄しているわけではない。“自分の発明が兵器に応用される可能性を、最初に理解できるのは発明した本人にほかならない”のだから、そのことをいかに自覚するかが問われているのだ。実際、自覚することで軍事協力をすり抜けた先人もいる。そのひとりが、ノーベル賞受賞者で、戦時中に電波兵器の研究に動員されていた朝永振一郎氏だ。

 朝永氏が戦時中に書いた論文を読んだときの感想を、益川氏は「はたと膝を叩きたい思いに駆られました」と表現する。というのも、〈電波の出力の関係を解析する部分を、限りなく一般的なところでまとめ、核心部分をうまくごまかしていた〉からだ。

〈表面上は軍事協力に協力して成果を出している振りをしながら、肝心なところは手渡さず、毒にも薬にもならない研究をして、「はい」と涼しい顔で論文を提出していた。しかし、量子力学を専門にしている人間が見れば、明らかに「意図的にこのレベルに抑えているな」ということが分かる。(中略)軍部に自分の研究を渡さないという意志を密かに貫かれたのだと思います。私は、それこそが本来の科学者の知恵だと思います〉

 軍事に手など貸すものか。──こうした強い意志を引き継ぐ人びともいる。益川氏も所属する名古屋大学は、学生と教員たちが軍事協力をしないと誓った「平和憲章」を掲げている。だが、昨年、国会で三宅博議員(当時・日本維新の会、現・次世代の党)はこの平和憲章を“国立大として交付金を受けているのに、軍学共同を拒否する憲章を堅持しているのは何事か”と非難した。こうした意見は三宅議員に限らず、ネット上でもよく見られるものだ。益川氏はこのようなムードを、〈国からお金をもらっている国立大学の研究員なら、四の五の言わずにお国のために協力しろという態度にも、周囲はそれ程騒ぎもしない。何やら空恐ろしい感じがします〉と懸念する。

〈ブラックボックス化する科学の世界で、我々科学者は、知らず知らずのうちに、どこかで軍事研究に加担させられている。そんな時代が到来しています〉
〈科学者同士、平和問題や社会問題に目を向ける努力を意識的にやらなきゃいけない。仲間同士で、何が今危険なのか、とことん議論することも必要。自分の研究だけ安泰ならいい、儲かればいいなどと言っていると、簡単に取り込まれてしまいます〉

 理性を働かせれば、人類は100年後も200年後も戦争せずにいられるはず──。そう益川氏が語るのは、人間の英知を信じているからなのだろう。科学は本来、平和のために使われるべきという原点を、とくに科学者は忘れてはいけないのだ。益川氏は、本書でこのように語りかけている。

〈科学と軍事が密接に結び付いている現代こそ、科学者の想像力、人間としての生き方が問われるのだと思います〉
(水井多賀子)

最終更新:2018.10.18 04:57

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

科学者は戦争で何をしたか (集英社新書)

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

あのノーベル賞科学者が安倍政権の軍学共同政策を批判! 軍事に手など貸すものか! 戦争協力への動員はもう始まっている!のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。安倍晋三水井多賀子の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 『なつぞら』が宮崎駿・高畑勲も闘った「東映動画・労使紛争」を矮小化
2 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
3 GSOMIA破棄!八代・有本ら安倍応援団は「嫌なら来るな」
4 田崎とケントに自民党からカネが!
5 Nスペ731部隊検証にネトウヨ錯乱!
6 久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
7 久米宏、さんま、村本も東京五輪批判
8 陸上・朝原宣治がスポーツの政治利用に危機感
9 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
10 葵つかさが「松潤とは終わった」と
11 岸田『ひるおび!』出演にネトウヨが
12 テレ朝が萩生田に全面謝罪した背景
13 「あおり運転」警察の過剰捜査とワイドショーの異常報道
14 ウーマン村本がよしもと社長からの圧力を激白!
15 日韓対立で『ワシントンポスト』が日本の歴史修正主義が原因と指摘!
16 秋元康の東京五輪に椎名林檎が危機感
17 白鵬・モンゴル力士バッシングとヘイト
18 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
19 秋篠宮家の料理番がブラック告発
20 久米宏が電通タブーに踏み込む激烈な五輪批判
1 安倍首相と省庁幹部の面談記録が一切作成されなくなった!
2 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
3 金融庁報告書で厚労省年金局課長の驚愕無責任発言
4 産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて鍛え直せ」
5 安倍首相が「老後2000万円」追及に逆ギレ!
6 菅官房長官が望月衣塑子記者への“質問妨害”を復活
7 金融庁「年金下がるから資産運用」報告書で麻生太郎が開き直り!
8 F35捜索打ち切りと大量購入続行でNHKが「背景に政治性」と報道
9 金融庁炎上の裏で安倍政権が「年金」の“不都合な事実”を隠蔽!
10 防衛省イージス・アショア失態 、玉川徹が原因を喝破!
11 長谷川豊が部落差別発言「謝罪文は馬場幹事長が作った」
12 講談社「ViVi」の自民党広告は公選法違反か!
13 映画『主戦場』上映中止要求の右派論客に監督が徹底反論!
14 渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、戦争
15 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第1話
16 田崎史郎「65歳から年金もらってます」
17 川崎殺傷事件「不良品」発言こそ松本人志の本質だ!
18 香港市民はデモの力示したが、日本は…
19 松本人志が「不良品」発言問題で謝罪も説明もなし!
20 農水元次官子ども殺害正当化は、橋下徹、竹田恒泰、坂上忍も

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄