ライムスター宇多丸が安保反対デモに参加! 宇多丸が語るSEALDsの面白さ、そして、日本語ラップの評価とは…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
utamaru_150911_top_new.jpg
RHYMESTERオフィシャルウェブサイトより

 先日本サイトでも紹介した通り、8月30日に国会前で行われた安保反対デモには、坂本龍一、高畑勲、園子温、高橋源一郎、室井佑月、平野啓一郎、いとうせいこうといった、錚々たる面々の文化人・著名人が参加していたが、このなかに一般参加者として加わっていたある人物のデモに関する感想が一部で反響を呼んでいる。

 その人物とは、ラジオDJ・映画評論家としても絶大な支持を受ける、ヒップホップグループ・RHYMESTERの宇多丸。9月5日放送の『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)のなかで、デモへの思いを語った。

 それによると、デモへの参加の背景には自身の政治的な主張の表明という部分は当然ありつつも、もうひとつ見ておきたいものがあったという。

「いまね、いろんなメディアで取り上げられているSEALDsというね、本当に全く新しい形の学生運動が起こっていて。まあすごく、感心すると。興味があるというのはもちろんあるんですけど。ひとつには、彼らの、ご存知の方も多いように、彼らのシュプレヒコールというかね、が、かなり新しいスタイルというかですね。まあ、ビートを鳴らして。太鼓を鳴らして、鳴り物を鳴らしてっていうのは昔からあると思いますけど。なんて言うんですかね? 言葉の乗せ方とか、言葉選びのセンスであるとか、みたいなものが、まあ明らかに日本語ラップ以降の影響下にあるであろうという風に思われるものだと」
「これはやっぱ、運動スタイルというか、運動スタンスも面白いけど、これは新しくて面白いなと。単純にいちラッパーとして、自分のずっとやってきたことがそういうエフェクトを与える時代になっているのかっていう、非常に興味もあってですね。まあ、前から行こう、行こうとは思っていたけど」

 SEALDsのシュプレヒコールがラップ調であるというのは多くの人に指摘されていることで、実際、国会前抗議デモにゲストのコーラーとして、90年代初頭から活動するベテランのラッパー・ECDが参加したこともある。宇多丸は、SEALDsのシュプレヒコールに音楽的価値を見出していたようだ。

 そして、彼はSEALDsが標榜する「普通の人が参加しやすいデモ」という、新しいデモのスタンスに、かつて体験したある運動を重ね合わせる。

「ちなみにこの感じ、10年ぐらい前かな? サウンドデモというね、要するに新しい形の社会運動みたいなのを模索する流れで、DJが出て、こう、なんて言うんですかね。いままでのデモの形とぜんぜん違うデモのスタイルでサウンドデモみたいなのが始まった」

 宇多丸が指摘する通り、SEALDsの示したデモのかたちは、10年以上前、イラク反戦運動などに呼応して誕生したサウンドデモと地続きにあるものだ。

 トラックの荷台でDJが音楽をかけたり、ミュージシャンがライブをしたりと、路上で音楽を楽しみながら自由でラフに政治的主張を展開するサウンドデモは、普段政治に興味をもたない若者も取り込み、大きなムーブメントへとなっていった。

 その運動にはプロのミュージシャンも積極的に参加。「AERA」(朝日新聞出版)2006年6月19日号では、このように紹介されている。

〈ボアダムスのヤマタカアイや、ムードマン、中原昌也やチャリ・チャリといった面々がDJを務めた。元ピチカート・ファイヴの小西康陽に至っては、わざわざその日のためにすべて新曲を用意してくる力の入れようだった〉
〈スチャダラパーやライムスターら、数多くの人気ミュージシャンが飛び入りで参加することもたびたび。都会をにぎわす盛況な街頭デモに発展した。スチャダラパーのシンコは、
「参加者がみんなニコニコしてるのが印象的だった」
 と話す。
 反戦を基本としながらも、一連のサウンドデモは、「意思表示をもっと楽しくやりたい」というポップな思いに比重がある〉

「意思表示をもっと楽しくやりたい」というサウンドデモの思いは、SEALDsの立ち上げ人である奥田愛基氏の「日本だけが、ダサくても社会運動だから許されるなんておかしいですよ。デモに参加するのがダサいってのもヘン。普通の人が、普通に参加できるデモって、民主主義の最低限の要素だって思ったんです」(「FLASH」15年9月8日号/光文社)というものと、まさしく同じ考えだろう。

 また、SEALDsの姿勢には、オルタナティブな生き方を模索した「だめ連」や、松本哉率いる「素人の乱」による活動と共通する部分もある。たとえば「素人の乱」は「面白さ」を追求した行動を指針とし、「放置自転車の撤去反対」「家賃をタダにしろ」「クリスマス粉砕」といったデモは、若者が「参加しやすい」「参加したくなる」デモ活動の先駆けでもあった。こうした活動に対し、『文化=政治 グローバリゼーション時代の空間叛乱』(月曜社)などの著書をもつ東京芸術大学の毛利嘉孝教授は、「論座」(朝日新聞出版)07年4月号でこう語っている。

〈メッセージの背後には、資本主義や警察国家権力に対する徹底的な批判を見ることができる。
 彼らが新しいのは、そうした政治的メッセージを直接発するほどナイーブではなく、自分たちの怒りを祝祭的な空間とやけくそめいた黒い笑いに包んで同世代の間でなんとか共有しようとしているところだ。それは、過剰に道徳的になってしまった既存の左翼が失ってしまった、おもしろさを取り返す試みである〉

 団体の動員によって集まった人々と、紋切り型のシュプレヒコール。そうした一般的な運動イメージを破る、「普通の人」のためのデモ活動──。SEALDsは、奥田氏が旅行中にイギリスやカナダ、ドイツなどで出会ったデモに格好よさを見出したことで始まっていると本人が「FLASH」などのインタビューで語っているが、彼らが絶大な支持を集める下地として、紹介したような90年代以降に日本で起きたムーブメントがあったのは間違いないだろう。

 最後に、本稿冒頭にあげたラジオ番組での宇多丸の発言に戻るが、そのなかで彼はこんなことも言っている。

「太鼓に乗せるにしても、やっぱり聞くだけで言葉の乗せ方の譜割り感で、やっぱりその日本語ラップ以降の、要はかっこよくコールしようぜ!っていう意識がある人と、まあ昔ながらの乗せ方にビートというか、太鼓を乗せているんだなっていう。まあ、聞くだけでもちょっと世代感がわかるみたいな。なんかそういうのも面白かったんですよね」
「で、その日本語ラップ。だからいまSEALDsのね、特に奥田くんというね、青年なんかはちょっといろいろなメディアなんかに、すごい注目されてますけども。あの、その日本語ラップの影響みたいなところで、ちょっと研究というかですね、(中略)この番組ならではの研究アプローチみたいなの、できないかな?みたいなのはちょっと考えているところでございます」

 宇多丸といえば、元陸上選手の為末大がツイッターに投稿した、〈悲しいかな、どんなに頑張っても日本で生まれ育った人がヒップホップをやるとどこか違和感がある。(中略)私達は幼少期の早い時期にしみ込んだ空気を否定できない〉という言葉に反論。日本語ラップも輸入文化を受け入れ発展してきた日本文化のひとつであると主張した楽曲「ガラパゴス」をRHYMESTERの最新アルバムに収録するなど、日本語でのラップ表現の啓蒙に尽力している人物だ。

 彼がSEALDsのシュプレヒコールに対して、どんな評論を語るのか。近々発表されるであろう、その評が楽しみである。
(新田 樹)

最終更新:2015.09.11 07:27

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル “神回”傑作選 Vol.1

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

ライムスター宇多丸が安保反対デモに参加! 宇多丸が語るSEALDsの面白さ、そして、日本語ラップの評価とは…のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。新田 樹革命の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 安倍首相が台風の最中「休養」に批判殺到
2 NHKが台風19号接近のさなか台風情報に安倍政権PR紛れ込ませ
3 報ステ後藤謙次の安倍批判がキレキレ!
4 上田晋也の番組で東国原英夫と千原せいじが日韓問題への無知晒す
5 「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈したもの
6 「家政婦」の名目で24時間労働の介護で日当1万円、残業代なし
7 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
8 池上彰が朝日叩きとネトウヨを大批判
9 安倍首相が「桜を見る会」で税金使って地元後援者を大量招待
10 ラグビー日本代表への“日本の心”押し付けがひどい!
11 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
12 『報ステ』の“安倍忖度”チーフPがアナやスタッフへの“セクハラ”で更迭
13 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(後編)
14 堀江貴文が“手取り14万円”「お前が終わってんだよ」でまた無知晒す
15 安倍の改憲で高等教育無償化はまやかし
16 志らくが津田大介との“あいトリ”討論で “お上忖度体質”を露呈
17 安倍首相の「消費税増税」国会答弁で開き直り「法人税減税」を自慢
18 葵つかさが「松潤とは終わった」と
19 松尾貴史「日本を壊しているのは安倍さん」
20 ブラックホール会見でNHK記者“日本スゴイ”質問に世界が失笑
1 久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
2 安倍政権・厚労政務官が外国人在留申請で口利き「100人で200万円」
3 玉川徹がGSOMIA破棄で加熱するテレビの嫌韓煽動を批判
4 明石家さんまが吉本上層部と安倍首相の癒着に痛烈皮肉!
5 『ゴゴスマ』で今度は東国原英夫がヘイト丸出し、金慶珠を攻撃!
6 『報ステ』の“安倍忖度”チーフPがアナやスタッフへの“セクハラ”で更迭
7 『ゴゴスマ』で「日本男子も韓国女性が来たら暴行しなけりゃいかん」
8 文在寅側近の不正に大はしゃぎの一方、安倍政権が厚労政務官の口利きに無視
9 埼玉知事選で警察が柴山文科相への抗議を排除!柴山も表現の自由否定
10 安倍首相がトランプからトウモロコシ爆買い
11 菅官房長官「トウモロコシ大量購入は害虫被害対策」は嘘
12 GSOMIA破棄は安倍のせい 慰安婦合意から始まった韓国ヘイト政策
13 安倍が後に先送り財政検証の酷い中身
14 GSOMIA破棄で日本マスコミの「困るのは韓国だけ」の嘘
15 松本人志や吉本上層部批判の友近、近藤春菜にバッシング、報復か
16 『週刊ポスト』の下劣ヘイト記事は「小学館幹部の方針」の内部情報
17 GSOMIA破棄!八代・有本ら安倍応援団は「嫌なら来るな」
18 『モーニングショー』で「暑さに耐えるのが教育」元高校野球監督は右派論客
19 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
20 『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』のデマとトリックを暴く

カテゴリ別ランキング


人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄