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川内原発再稼働に「長渕剛がその気になれば阻止できる」の声が…脱原発を語ってきた長渕よ、原発ゲート前でゲリラライブをやってくれ!
地元の待望論に応えられるか(長渕剛 OFFICIAL WEB SITEより)
いよいよ、明日、11日に迫った川内原発の再稼動予定日。国民の多くの反対にもかかわらず、このままいけば、再稼働強行は確実の情勢だが、そんな中、ある人物にひそかに期待が集まっている。その人物とは、川内原発のある鹿児島出身のカリスマアーティスト・長渕剛──。
「長渕剛がその気になれば川内原発再稼働ぐらい簡単に阻止できる」
これは、東京都知事選に出馬し政権放送で中指を立てたことでも知られるアナキスト(本人はファシストを自称)・外山恒一氏が今年3月、自身のブログに寄せた言葉だ。
再稼動直前、長渕が川内原発前に現れゲリラライブを敢行すれば、「その勇姿を一目見ようと(中略)全国から少なくとも数千、もしかすると数万の長渕ファンたちが川内原発前に殺到するだろう。そんな事態になれば、再稼働は“白紙撤回”となるかもしれないし、少なくとも“延期”にはなるはずである」と、外山氏は語っている。
外山氏がどこまで本気かはさだかではないが、たしかに、長渕に期待の声があがるのはわからなくはない。
長渕剛が日の丸を背負った右翼的なマッチョイメージとは裏腹に反安保法制の姿勢を強めているのは当サイトでも先日報じた通り。7月19日放送の、『ワイドナショー』(フジテレビ系)にゲスト出演した際に発した、
「いまのこの流れでいくと、理屈は分からないんですけどね、感覚論としてね、戦争が近づいている気がするの。もう紛れもなくそこに近づいている気がしますよ。それをね、僕たちはどうやって阻止すべきかってことを非常に真剣に考える局面がありますよ」
という発言がニュースで大々的に取り上げられ、大きな話題となったのも記憶に新しい。
そして、長渕が強くメッセージを発しているのは、安保法案に関してだけではない。原発再稼動問題に対しては震災直後から事あるごとに否定的な発言を行なっている。周知の通り、彼は川内原発のある鹿児島出身だ。
前述の『ワイドナショー』でも、「戦後復興後、高らかに我々は生きてきましたけど、そのなかに負の遺産はありました。負の遺産を残しておきながら、そのことにきちっとケリもつけないくせに、次のこと(安保法案)をやっていこうとする俺らの大将、ちょっと違うんじゃない?」と発言。「負の遺産」という言葉を使い、問題を先送りして原発再稼動に踏み切る姿勢を批判していた。
長渕は、東日本大震災発生直後から定期的に被災地を訪れ、航空自衛隊松島基地や石巻の避難所での慰問ライブ・避難生活を余儀なくされた浪江町の子どもたちを鹿児島に招いてサマーキャンプを主催するなど、実際に“行動”を起こしながら復興支援に協力してきた。
こうした活動の一環として、2012年3月には、特別番組『報道STATIONスペシャル「愛おしきあなたへ」』(テレビ朝日系)に出演し、福島第一原発20km圏内に入り警戒区域の実情を取材。その際に残した「もはや原発の有無を問う余地はない。立場や名刺はいったん脇に置いて、いち個人として現実を直視し、感性で見つめてほしい」という発言は当時ニュースにも取り上げられている。
また、14年9月には、音楽評論家である湯川れい子氏のツイッターアカウントを通し、こんなコメントも発表した。
「長渕さんから嬉しいメールが来ました。個人的な私信なのでご紹介は出来ないけれど、「美しい支那海を想い、故郷を思うと、今のままの川内原発の再稼働は許せません!」って。やっぱりそうだよね」
それらの発言に加え、彼の原発批判はメディアを通してのコメントだけにはとどまらない。12年5月に発売されたアルバム『Stay Alive』のなかには、「カモメ」という、原発をテーマにした楽曲が収録されている。
〈浪江の街の駅前の/ひしゃげたまんまの商店街/パン屋も床屋も雑貨屋も/命の音が聞こえない/全滅していた暮らしの中/壊れた信号機だけが点滅していた/僕はただ立ちつくし空を見上げて泣いた〉
〈男は牛たちの乳を泣きながら搾っている/来る日も来る日も毎日/泣きながら乳を搾ってる/捨てては搾って搾っては捨てて泣いてる/男は牛舎でつぶやいた/「原発さえなければ…」〉
〈止めてくれ/原発を/止めてくれ/今すぐ/母親から子供を引き裂き/子供から母親を裂く/乳房をくわえる赤子の/瞳をどうやって僕は見つめればいいの〉
(「カモメ」歌詞より引用)
原発のない世界を希求する“祈り”にも似た静かな長渕の歌声は、マッチョな思想をもつ彼のファンに原発について考え直す契機を与え、14年10月には「男たちの脱原発」と題された、長渕ファンによる小規模な脱原発デモ行進も行なわれている。
そんな長渕が明日、川内原発前に姿を現し、メッセージを発すれば、たしかに外山氏のいうように、再稼働を阻止できるかもしれない。
もっとも、現実にそれをやる可能性は、なかなかむつかしいだろう。今夏の長渕は8月22日、静岡県富士山麓キャンプ施設「ふもとっぱら」で10万人規模のオールナイトライブを行なう予定。長渕本人も長渕ファンも、オールナイトライブの準備に余念がない状態だ。
長渕はこの富士山麓ライブについて「SPA!」(扶桑社)14年12月30日・15年1月6日合併号でこのように発言している。
〈数十年歌ってきて俺が一番感じてきたことは、自分がこの国を悲しいほどに、腹立つほどに愛しているということ。なのに、原発の問題などの自己矛盾は、散々考えても自分のなかでは答えが出ない。だったら、俺は、俺の歌はこれでいいのかと(中略)富士に問うてみたかった。10万人の力を借りて、砲弾ではなく、歌を霊峰にぶつけるかのごとく〉
しかし、原発問題に答えを出すために歌うのであれば、長渕がこの夏歌うべき場所は、富士山麓だけではない。川内原発のゲート前で歌うことこそ「俺の歌はこれでいいのか」と「問うてみる」ためには必要なことではないだろうか。
本稿冒頭で紹介した外山恒一氏は、川内原発ゲート前ゲリラライブで〈「ろくなもんじゃねえ」を繰り返し歌って“テーマソング”的にフィーチャーしてほしい〉と主張している。
原発事故によって「心を引き裂かれちまった/心をなじられちまった」(「ろくなもんじゃねえ」歌詞より)とならない前に、“第二の福島”をつくらないために、ぜひ、ゲリラライブを切望したい。
(新田 樹)
最終更新:2015.08.10 12:01
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