貧困に耐えかね「ウリ専」に走るノンケ男性が急増中? 知られざるゲイ向け風俗の世界

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「宝島」(宝島社)15年8月号

 威勢のよかったアベノミクスはどこへやら。庶民の生活は楽になるどころか、苦しくなっていく一方である。
 
 そんな厳しい経済状況のなか、「宝島」(宝島社)2015年8月号に驚くべきレポートが掲載された。なんと、窮乏に耐えかねて、“男性が男性に性的サービスを提供する”、いわゆる“ウリ専”ビジネスに足を踏み入れる人が増えているらしい。

 さらに驚くべきことに、ゲイではなく、“ノンケ”(ゲイでもバイセクシャルでもない、女性が好きな男性)が、ウリ専ビジネスに流れているというのだ。

 男で手っ取り早く金を稼ごうと思ったら、お水の世界だと、“ホスト”か“ウリ”になる。しかし、ホストは上下関係も厳しいし、お客さんとのメールは四六時中応じなくてはいけない。その点、ウリ専であれば、週1日1時間だけのシフトを組むことも可能。時間的な拘束が少ない。なので、昼は一般の仕事を続けながら兼業することも容易となる。それが、ノンケの男たちをウリ専の世界に誘っている大きな要因なのだそうだ。

 終わりのない不況の煽りを受け注目度を増す“ウリ専”とはどんな世界なのか? 実際にウリ専として働く“ボーイ”たちのインタビューを通し、その知られざる世界をまとめた、松倉すみ歩『ウリ専!♂が♂にカラダを売る仕事』(英知出版)を紐解きながら見てみたい。

 まず、ウリ専の店だが、日本最大のゲイタウン・新宿二丁目ではなく、意外にも“高田馬場”が熱いスポットらしい。ウリ専の店はプレイ用として、マンションに専用の部屋をもっていることが多いが、学生街である高田馬場だと部屋数も多く簡単に部屋を押さえられる。また、ゲイの街としてあまりにも有名になってしまった新宿二丁目だとお客さんも通いにくいが高田馬場なら怪しまれることなく通うことができる。以上の2点がその理由という。

 また、ウリ専のホームページをのぞくと必ずあるのが、“タイプ”と“バックタチ・バックウケの可否”だ。“タイプ”とは、ゲイなのか、バイなのか、ノンケなのかの属性を指す。ウリ専の世界では、ノンケは絶対的な人気を誇る。“ノンケ礼賛”とすら言えるほど。理由は単純、“現実の世界ではノンケとは絶対にヤレない”からだ。しかも、ノンケだとゲイやバイの人間以上にウリ専の世界に抵抗感をもつので、ウリ専のボーイになる人も少ない。慢性的な需要過多状態なのである。

 なので店側は、本当はゲイのボーイでも、ノンケとして売り出すことは珍しくない。いわゆる、“偽ノンケ”である。ただ、それはゲイの客にはバレバレ。どんなに仕事に慣れたノンケのボーイだとしても、どうしても生理的に受け付けない部分はあり、プレイ中にそれが無意識に表情に出てくる。ゲイやバイのボーイにはそれがないので一瞬で分かるのだ。

 しかし、ゲイの世界ではノンケが人気といっても、ウリ専に来る客は、基本的には性行為で気持ちよくなりたい人たち。微妙なプレイしかできないノンケは避け、ゲイやバイのボーイに“ノンケの演技”をしてほしいと要望するお客さんも多いという。複雑な世界である。

 そして、もうひとつ、ホームページに書いてある要素“バックタチ・バックウケの可否”は、アナルに挿れたり挿れられたりできるかどうかを指す。“バックタチ可”は、性器を勃起させて客のアナルに挿入することが可能ということ。“バックウケ可”は、客の性器をアナルで受けることができるという意味だ。

 だが、プロで身体を売っている男ならばすべてできなければならないかというと、そうでもない。ノンケだったらどちらもできず、手や口でしか射精に導けなかったとしても問題はない。むしろ、それがノンケらしさにつながる。

 客も、自分で挿れたい人もいれば、ボーイに挿入されて前立腺を刺激されながら射精する“トコロテン”(相手の性器から押し出されるようにして、トコロテン作りの要領で射精する様子からつけられた専門用語)を好む客もいる。ノンケの性癖も色々だが、ゲイの世界の性癖も色々なのだ。

 ちなみに、こうした“本番行為”を前提にした表現が堂々とホームページに掲載されているのは、売春防止法で“同性間における性行為”は適用範囲外になっているから。ソープなどともっとも大きく異なる部分である。

 なお、ウリ専は、基本的には女性客が利用できない仕組みだが、“オーナーやマネージャーとコネがある”などの理由で、稀に秘密で女性客の利用を受け付けることがある。前述した通り、同性間における性行為は売春防止法の適用外だが、異性間の性行為は風営法や売春防止法によって禁じられている。なので、一応は「デートのみ」という話なのだが、実情は……である。

 その際は、ノンケのボーイが対応にあたるのだが、ノンケで女性客の相手をできるのだから良いのかと思いきや、意外にも男の相手をするのよりも嫌なのだそう。「あんなの相手するくらいなら、おっさんの方がまし」とまで言い放つボーイもいるほどだ。

 そこには、ゲイの客がもつ、セクシャルマイノリティだからこその「慎み」「思いやり」のようなものが関係している。

「どこか後ろめたさがあって、その裏返しに思いやりっていうか、そんなのがあるんです。それでいて同じ男っていう気安さもあって。でも女性はそうじゃないんですよね。要するに剥き出しなんです」(前掲書より)

 普段、そんな男性客を相手にしているだけに、珍しく女性客を相手にすると、自分たちは女性客から“種馬”のように見られているんじゃないかと感じる人もいるほどだ。

 しかし、筆者である松倉すみ歩氏は、ボーイたちがそう感じる理由として、「思いやり」以外にも理由があると分析している。

 男性と性行為をすることはノンケの彼らにとって「非日常」であり、そのなかでは、自分が身体を売っているという意識が希薄になるが、女性とセックスすることは日常と地続きであり、それが「自分はいま売春している」という事実をまっすぐに突きつけてくるので戸惑いの感情が生まれてくるのではないか、というのだ。

 さて、冒頭に紹介した「宝島」の記事では、“貧困”がウリ専に走らせていると書かれているが、貧困以外の理由でウリ専の扉を叩く人も、もちろん存在する。そのなかでも多いのが、芸能界に入るきっかけを求めてボーイになるパターンだ。

 クリエイティブな職についている人はゲイの比率が高いと言われている。ウリ専の仕事を続けていれば、芸能関係の職種の客と出会う機会も多い。そういった出会いのなかで、業界関係者に見初めてもらおうと考える音楽家やモデル、俳優の卵は多い。実際、真偽不明の噂レベルの話ではあるが、演歌歌手の氷川きよしや俳優の成宮寛貴は、デビュー前にウリ専の経験があったのではとも言われている。

 以上、紹介してきたウリ専の世界だが、いくらお金を稼いでも、貯金などはまったく増えず、生活状態がより不安定になるケースが多いという。その理由は「金銭感覚の乱れ」だ。ちょっとした移動にもタクシーを使うようになるなど、小さなところから確実におかしくなっていく金銭感覚。一度壊れたその感覚は復活することはなく、何度足抜けしても、またウリ専の世界に復帰してくる人は後を絶たない。
 
 どうしても仕方がない事情があったとしても、夜の世界に足を踏み入れるのであれば、相当の覚悟と自制の気持ちを持ち続けていなければ、結局、“貧困”から抜け出すことはできない。それどころか、昼の仕事に戻ることすらも困難にさせてしまう。厳しい世界なのである。
(田中 教)

最終更新:2016.08.05 06:39

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