不食によって神の力が手に入る!? 榎木孝明で話題の“不食”本を読んでみたら…

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水やコーヒー等だけで30日間の「不食」に挑戦したという榎木孝明氏(「榎木孝明 オフィシャルサイト」より)


 約1か月にわたって水分しか摂らない“不食”を実践したことで世間を驚かせた俳優の榎木孝明氏。記者会見では宗教のかかわりを否定し、「食べなくても生きられることを自分の体で科学的に調べてみたかった」と説明した。

 だが、先週発売の「週刊文春」(文藝春秋)は、そんな榎木氏と“あるスピリチュアルセミナー”のつながりを指摘している。

 同誌によれば、榎木氏は2013年5月にあるセミナーのオープニングイベントに参加。〈元ビジネスコンサルタントの男性が、自然医療を推す女性医師や多くの覚醒者たちと立ち上げたプロジェクト〉だというが、〈彼らが主催する覚醒セミナーへ参加すると、人生の悩みが消え、自分や周りの人の病気にも変化が現れる〉というキナ臭さ。

 しかも、このセミナーには『おかげさまで生きる』(幻冬舎)がヒットした東京大学病院の矢作直樹医師も参加。 本サイトでも以前、紹介したように、矢作氏といえば救急部・集中治療部部長であるにもかかわらず著書ではオカルティックな言説を垂れ流し、さらには“霊感セミナー”疑惑も取り沙汰された人物である。

 榎木氏はセミナーへの参加について、同誌のインタビューに「参加したのは事実」と認めながらも、「知人に連れられて、よくわからず行ってしまった」とセミナーとの関係を否定。しかし矢作医師については「仲がいいんです」といい、「(矢作氏が)批判されていることも知っていますが、彼は勇気を持ってやっている」と褒め称えてさえいる。

 榎木氏がいくら否定しても、彼自身と“不食”というキーワードから漂ってくる非科学的な匂い……。果たして“不食”とはどのようなものなのか。それを知るために、“不食”ブームをつくったといわれる『不食 人は食べなくても生きられる』(三五館/2004年)を読んでみることにした。

 同書の著者は“実践思想家”なる肩書きをもつ山田鷹夫氏。著者プロフィール欄には、このように記されている。

〈大手電力会社での十六年間のサラリーマン生活をバッサリ捨てて、思索の生活に入り何年になるのだろうか〉

 いや、自己紹介で「何年になるのだろうか」と訊かれても! 初っ端から不意打ちを食らってしまったが、つづけて1ページ目を開くと、今度は全裸で局部を葉っぱで隠すという懐かしの“はっぱ隊”ルックの山田氏の衝撃的な写真が(しかもスキンヘッド)。だが、たしかに50代前半(当時)とは思えぬスタイルを保持していることだけはよくわかった。

 しかし、読者として気になるのは、スタイル云々よりも、どうやって空腹を紛らしているのか?ということや、なぜ物を食べずに平気でいられるのか?ということ。きっとそうした実践の記録が書かれているのだろう……。そう思ってページをめくると、こんな言葉たちが待ち構えていた。

〈これまでは許されていなかった。食べずに生きるということが許されていなかった。だが新しい世紀を迎えた今だから、新しい太陽として、新しい光として不食は公開を許された〉
〈新しい希望を宣言する。コロンブスが「地球は丸い」と宣言したように〉
〈あなたたちを代表してこの国の希望を語ろう。それは地球の希望であり、人類の希望であり、さらには宇宙の希望である。神の希望でもある〉
〈扉を開くのは友よ、あなただ〉
〈「人は食べられなくても生きられる」このたった一つの宣言で新しい日本を開く。閉塞した社会だからこそ、生まれる僥倖だ〉

 太陽、光、希望、神、宣言……なんだか宗教の本を読んでいるようだが、これは不食の本であったはず。だが、〈不食が可能である根拠〉として挙げられているのも、なぜか“クローン羊のドリー”の話だったりして、頭は大混乱。

 なんでも、クローン羊は乳腺細胞から誕生したといい、〈個別化された乳腺細胞が逆進化して全能性を持つ細胞に復帰した。(中略)その手法が何であったかというと、(中略)栄養を絶ったのである。つまり断食状態にしたのである〉という。そして、山田氏の思考は羊から人間へ向かうのである。

〈単細胞が断食で、ものすごい能力を手に入れた。それならば複合体である、細胞からなる人間の身体そのものに断食を与えたらどうなるか。(中略)超能力に到達できるのでは〉
〈不食によって初期化されたらどのような能力を獲得するか? 神の力を手に入れる!〉

 なんだか「手に入れろ、ドラゴンボール!」「ポケモン、ゲットだぜ!」に相通じるノリの良さが愉快だが、まさか不食によって超能力だの神の力が手に入るかもしれないとは、もうこれは科学でも何でもない上に、〈不食が可能である根拠〉にもなっていない。というか、ただの願望である。

 実際、“ものを食べなければ餓死するのでは?”という問いに対して、山田氏はこう述べている。

〈人は餓死で死ぬのではなく、餓死の恐怖で死ぬのだと。(中略)詭弁だと思われるだろうか? 僕はまじめだ〉

「まじめだ」と言われたら、はいそうですか、としか返しようがない。だが、不思議なのは、多くの人にとっては食べることは楽しいことである。それをなぜ食べるものはあるのに、食べないとあえて拒否するのか。しかし山田氏に言わせると、不食には“不食のエクスタシー”というものがあるらしい。

〈ほしい物がないという歓びだ。食べたいものがないという歓び。この延長として、人間の歓びではない状況、仕事がない、お金がない、セックスがないという歓びをどう伝えられるだろうか〉

 煩悩を絶つ。これは多くの宗教で悟りを開くために謳われることと同じだが、もしかすると“不食”の根源にあるのは、この“世俗的な欲に打ち勝つ歓び”なのかもしれない。事実、榎木氏も不食11日目に〈欲は自分でコントロール出来る事を実感します〉とFacebookに綴っている。そして、山田氏も〈自慢できる魚沼のコシヒカリを作っていながら、僕は食べていない!〉とハイテンションだ。

 ただ、やっぱり気になるのは、この“不食”の思想には、疑いようもなくスピリチュアル要素が入っているという点だ。榎木氏は〈どの宗教にもオカルトにも一切荷担はしていません〉と述べてはいるが、会見では「おそらく空気中から人間はエネルギーを取れますね」という驚きの発言を行っている。じつは、山田氏の本でも〈人間は食以外でもエネルギーを摂取して生存を継続できる〉と書いてあるのだが、当然のことながらこれに科学的根拠などまったくない。

 また、榎木氏は過去にも、「催眠療法を応用して前世を人に見せることも…(できる)」「もう何百回 転生してますから…」(「FLASH」10年10月5日号)と述べたり、「ダライ・ラマは、とっても霊格の高い方」(「ELLE japon」1991年7月20日号)とインタビューに答えたりなど、結構なオカルト度であると見受けられる。ほんとうに榎木氏はその自覚がないのか、はたまた隠しているのだろうか……。

 というわけで、安易な気持ちで“不食”に手を伸ばすのは、いろいろな面で危なそうなので、お気をつけいただきたいと思う。
(大方 草)

最終更新:2015.06.30 07:34

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