「AKBは病んでるコが多すぎ」と小嶋陽菜が苦言! なぜアイドルは「病み」を告白するのか

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AKB48公式サイトのプロフィールより


 AKB48の小嶋陽菜が「SPA!」(扶桑社)2015年6月9日号のインタビューで語った後輩メンバーへの警鐘が話題を呼んでいる。

 小嶋はSNSを通して悩みをあからさまにさらけ出してしまう後輩たちについて、「AKB48の後輩からのLINEとかを読むと、ビックリします。病んでるコが多いなぁって」、「今って、病んでることがおしゃれな時代なのかなと思うんです(笑)。だからなのか、「疲れた」とか、「もう無理」とか平気で書けちゃうし、みんなでコメントしたり共有し合ってて。その感覚がギリ昭の私からすると考えられないんです」と語る。

 さらには「過呼吸」についても、こう話す。

「あれもよくわからない」「過呼吸のなり方(笑)」

 なんか、中間管理職のオッサンが新橋の飲み屋で「最近の若手はったく…」とくだを巻いているようでつい笑ってしまうが、たしかに、AKBメンバーの病み告白、闇証言は多い。

 次期総監督である横山由依は755でファンからの「みんな病んでるの?」というコメントに対し、「みたいですね」と返信。その同期である中村麻理子も755で「元気あってもできないことってあるんだよ。リアルなことをいうとお金があればなんでもできるのが現実だよね」と投稿した。

 HKT48の兒玉遥は『HaKaTa百貨店3号館』(日本テレビ系)で「アイドルなんて常に病んでますよ」と言い放った。また、渡辺麻友は、主演ドラマの不振が続く時期、755に「不人気」「さよなら」と連続で投稿している。

 とくに、病み告白が増えるのが総選挙の直前だ。倉持明日香は12年の総選挙時に「眠れない…」「次生まれ変わるとしたら人間にはなりたくないなあ」とグーグル+に投稿した。ちなみに、彼女は今年の総選挙は辞退している。

 今年の総選挙では、NMB48のエース・山本彩が選挙期間中に限界状態に陥った。5月8日、755に「最近、動悸と耳鳴りと幻聴が多いんですけどこれって五月病?(笑)」「人が居らへんのに数人の会話が聞こえたり部屋で歌声が響いてたり走ってないのに救急車のピーポーピーポーって音が聴こえてきたりする」と書き込み、ファンを心配させている。

 小嶋が「なり方がわからない」という過呼吸も、頻発している。やはり先日の総選挙では、次世代エース候補と評価されながらランクインできなかった大島涼花が過呼吸で退場したのは話題になった。

 ただし、小嶋は「ギリ昭の私からすると考えられない」と、若手の甘えをほのめかすが、「アイドルの病み」というのは、かなり前からAKB48についてまわっているものだ。過呼吸にしても、11年の西武ドームで、前田敦子・大島優子・高橋みなみらが過呼吸で倒れて以来、定番の光景と化している。

 こうした背景には、明らかに運営による彼女達へのプレッシャーがある。総選挙はまさにそういったプレッシャーの最もたるものだし、すさまじい過密スケジュールで心の余裕がまったくないというのも、彼女たちのメンタルを傷つけていく。

 河西智美は卒業後、「AKB時代は小さなつらいことがリセットできないまま募るから、次第に“大きなつらいこと”になっていった。一個一個は、超えられるだけの力はあったけれど、それを一個ずつ処理する時間がなかった。嫌なことがあってもすぐステージに上がったり、取材があったり、笑顔でいなきゃいけなかったり…。精神状態と表向きにギャップがありすぎて混乱していたのかな」と、多忙なスケジュールが心を追い詰めていたことを語っている。

 また、まだ実力が伴っていない若手を運営のプッシュで強引に押し出すことによりファンの反感を買うのも彼女たちを追い詰める。

 その最たる被害者が、光宗薫だ。彼女は11年にAKB48に加入。「スーパー研究生」ともてはやされ、正規メンバーになる前から中居正広主演のドラマ『ATARU』(TBS系)に出演するなど、運営から強烈に押し出された。

 結果として、そのことが猛烈なアンチを生み、総選挙では圏外に。結局、AKB48としての初ステージから1年も経つことなくグループから離脱してしまった。

 もちろん、こういう構造はAKBだけではない。アイドルを大量にフォローしていると、夜中に鬱ツイートがしょっちゅうタイムラインに流れてきて、翌朝もう一度見てみると、それらのツイートはきれいさっぱり消されているという現象がよく起きる。

 たとえば、PASSPO☆に在籍し、15年5月31日に活動休止した槙田紗子は、同月14日の深夜に突如「メンバーみんな頭使えないし、こんなとこいるの無理だよ。それはみんなもわかるよね。ほぼ中卒だし、マトモな人間じゃないんだからさ。さこはよくここまで続けられたわ。最初から芸能なんてしなければよかった。ブサイクばっか相手にしたし。芸能初めてから何人とエッチしたんだよって」とTwitterに書き込み、「病み」と「闇」を同時に明かした(事務所からは、アカウントを乗っ取られたとの発表があったが、その後の経過報告はない)。

 また、バニラビーンズのレナは「わたしの性格って、みんなからどういう風に見えているのかな?」といった、ファンからしたらドキッとしてしまうような内省的なツイートを深夜に突然投稿することで知られている。

 これらも、いかに彼女たちが苛酷な状況におかれているか、ということの証明だろう。

 ただ、一方で、小嶋の言うように、最近の若いアイドルにとって「病み」がファッションになっている側面はあるかもしれない。というのも、「病み」の告白が人気獲得につながるからだ。

 AKB48に話を戻すと、実際、総選挙速報後に順位がよくなかったメンバーが軽い弱音をネットに書き込み、その「病み」を、ファンに投票を促すための武器に使う光景は毎年見られるものである。今では、それをしないメンバーはほぼ皆無といってもいいぐらいだ。

 かく言う小嶋自身も、速報発表後に弱音をツイートするのを、ファンの間では「伝統芸能」と呼んでいた。ちなみに、彼女は、選挙を辞退した今年、「本音を書くと伝統芸能って言われたり、なんて書こうか悩んでたなー」とツイートし、「伝統芸能」と称され、自分の病みや弱音を利用していたかのようにファンに思われていたことを憤っていた心中を告白している。

 その成功例がAKB48の佐々木優佳里だろう。彼女は、755で「可愛くなりたい可愛くなりたい可愛くなりたい」「めんどくさいのはじぶんでわかってます。すぐ不安な気持ちになる」といった言葉を連続で投下。また、誕生日に「おばあちゃんになっていくねー」と冗談でコメントしてきた同じグループのメンバーに対し、ジョークを真に受けて激怒。そのあまりにもネガティブなキャラクターがウケ、『有吉AKB共和国』(TBS系)では彼女の特集も組まれた。

 面倒くさいながらも、メンヘラっぽい女の子好きな男子たちが思わず支えたくなってしまうキャラクターは、ファンを「信者」化し、「ハピネス教」(「ハピネス」はネガティブな自分を奮い立たせるために使う彼女の口癖)と呼ばれている。ハピネス教徒の力はすさまじく、15年選抜総選挙では、17,466票を獲得し、見事50位に輝いた。

 そして、彼女達のロールモデルになっているのがおそらく、前田敦子であり、先日の総選挙で見事1位に返り咲いた指原莉乃だ。

 指原がブレイクにいたる快進撃は、09年9月25日に『週刊AKB』(テレビ東京)で放送された「第1回肝っ玉クイーン選手権」において、バンジージャンプを飛ぶことができず、「へたれ」というキャラがついたことにはじまる。

 指原莉乃『逆転力~ピンチを待て~』(講談社)では、この時バンジーを飛べなかったことについて、「やばいなと思いましたね。これはまずいぞと。ただでさえ当時、総選挙で選抜に入れず弱くなっていた自分の立場が、これで相当危うくなったな」と語っている。

 結果として、今までは「少しMCがうまい」程度の立ち位置であった彼女に、この放送で「へたれ」という強力なキャラがついた。アイドルにつけられるキャラクターとして「へたれ」は決してほめ言葉ではないように思うが、指原は前述の本でこう語る。

 「秋元さんに、「指原のへたれなところ、弱いところを応援してるファンが多いんだぞ」と言われて、「あ、そうだったんだ。ラッキー!」と。へたれに関しては、周りが言うなら自分はそうなんだ、と思って乗っかっていっただけなんです
(中略)
 でも、この時のバンジー拒否というピンチから、へたれキャラというチャンスが生まれたことは間違いありません。このキャラが付いて、広まっていったおかげで、自分を取り巻く状況がどんどん変わっていきました」

 「へたれ」というキャラを積極的に受け止め、自分の弱点を押し出していくことに意識的だったことが、ここでは語られている。

 実際、この後、彼女は自らの弱みを次々と表に出すようになる。中学生の時にイジメを受け、不登校になった過去。そんな自分を支えてくれたのは、モーニング娘。をはじめとしたアイドルであり、その時期に自分の好きなアイドルを話題にして2ちゃんねるに書き込んだり、ブログを立ち上げたりといったことが今の自分をつくっているということ。そういった暗い過去の告白が、さらに彼女のファンを増やしていった。

 アイドルを応援する動機は二つある。一つは「付き合いたいと思う、疑似恋愛の気持ち」、そして、もう一つは「この子を『支えたい』と思う気持ち」である。

 そして、「この子を『支えたい』」と思わせるためには、少し弱いところを見せた方がいい。
歌もダンスも演技もお喋りも、すべてが完璧なアイドルよりも、ちょっとヌケているぐらいの子の方が愛される。その「弱みを見せる」ことを意識的に行い、成功していった先輩のケースを見て、若いアイドルたちがこぞって、「病み」の告白をはじめた。小嶋はそういう状況にいらだっているのかもしれない

 しかし、これもアイドルたちの「病み」のひとつの側面でしかなく、一方ではほんとうに精神を病んでいるアイドルも少なくない。本物の病みか、ブランディングなのか。

 まあ、いずれにしても、彼女たちを使って金儲けをしている大人たちが彼女たちをその状況に追い込んでいることだけは間違いないが……。
(新田樹)

最終更新:2015.06.10 06:15

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