既に「我が軍」化? 元自衛官が「安倍政権になって人殺し訓練が始まった」と証言

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参議院予算委員会で答弁する安倍首相(首相官邸ホームページより)


 以前から安倍首相の危険な体質をさんざん指摘し続けてきた本サイトですら、今回の「我が軍」発言にはさすがに驚いた。それはそうだろう。国会で自衛隊を「軍」と形容し、戦後70年守り続けた憲法の精神をないがしろにしただけでも大問題のうえ、口にした言葉は「我が国の軍」でも「我々の軍」でもなく「我が軍」。これは完全に独裁者の物言いではないか。

 安倍首相は、おそらく自分がヒトラーかナポレオンにでもなった気分でいるのだろう。そして、自分の軍隊が戦争をして、世界に力を誇示することを夢想している──。

 こんな首相が国のトップにいるというだけで空恐ろしくなるが、もっと恐ろしいのはこれがけっして妄想で終わっていないことだろう。実際に自衛隊の「我が軍」化、「戦争のできる軍隊」化は着実に進んでいる。集団的自衛権の行使容認、それを現実化する安全保障法制の与党合意、自衛隊の海外活動拡大、シビリアンコントロール規定の廃止……。

 そして、自衛隊の現場でも今、安倍政権の意志が反映されるかたちで、訓練内容の「軍隊化」が進んでいるらしい。

 昨年の7月14日、「沖縄タイムス」が辞職した20代の元自衛官にインタビューをしているのだが、この自衛官が、安倍政権になって人殺しの訓練が始まった、と証言をしているのだ。

 この自衛官は18歳で自衛隊に入り、沖縄の基地に配属されて、以来、ずっと勤務していた。ところが、2014年3月、集団的自衛権がきっかけで、自衛官を退職したのだという。インタビューのなかでこの元自衛官は辞めた理由をこう説明している。

「今回の集団的自衛権容認の閣議決定で、海外の『戦闘』に加わることが認められるようになります。自衛隊は、人を殺すことを想定していなかったのでまだ、『仕事』としてやれましたが、今後はそうはいきません。昇任試験も合格したばかりで、自衛官を続ける道もありましたが、戦争に加わって命を落とすかもしれません。命は大事です」
「(集団的自衛権は)戦争への参加宣言で、自衛隊の軍隊化だと思っています。自国が攻撃されていないのに、他国の争いに参加して、相手を撃つことになり、日本がテロの標的になる恐れもあります」
「自衛官は死ぬことは考えていません。自衛官も一生活者。先輩たちからは、『定年まで国に面倒を見てもらえるよ』と何度も言われましたし、ある先輩は『自分たちが自衛隊にいる間は何も起きないよ』と言っていました。
 でも、そんなに楽観的に考えられませんでした。政権や世界情勢によって、自衛隊の立ち位置は変わります。10年後、どうなっているのか分かりません。定年まで無事という言葉は信用できませんでした。仕事としての自衛官なので、全ての自衛官が、24時間、国を守るという気概があるかは疑問が残ります」

 まさに現場で血を流すことを迫られる自衛官の本音がよくわかるインタビューだが、この自衛官によると、集団的自衛権容認の前から、自衛隊ではすでに変化が起きていたという。

「安倍政権になってから、内容が大幅に変わりました。人を標的とする訓練が始まりました。これまでは、相手を捕獲することが基本でしたが、もう今までと違います。軍隊としか思えません。
 1年に2回だった実戦訓練は実際、増えました。人殺しは嫌です」

 安倍政権になってから始まった「人を標的とする訓練」。具体的にそれがどういう訓練なのか、記事にはこれ以上は書かれてはいない。「沖縄タイムス」の関係者によると、実際のインタビューでこの元自衛官はかなり具体的なことも話していたが、特定されるおそれがあるということで、詳細は載せることができなかったという。

 だが、第二次安倍政権が発足したあたりから、沖縄に駐屯している陸上自衛隊第15旅団の訓練内容が大幅に変わっているのは事実だ。

 もともと、沖縄に駐屯する第15旅団は悲惨な戦争の記憶をもつ沖縄県民に配慮するかたちで、戦闘訓練よりも不発弾処理や緊急患者空輸などを活動の前面に出してきた。当初は、離島の防衛、奪還といった任務を担当する海兵隊的な組織の設置も検討されたというが、これも県民感情や中国を刺激することを避けるために、佐世保に駐屯する西部方面普通科連隊にその役割を担当させてきた。

 だが、安倍政権が誕生すると、尖閣諸島防衛を大義名分に、南西諸島の防衛力強化が掲げられ、沖縄の自衛隊も離島防衛や奪還のための訓練をさかんにするようになっているのだ。

 たとえば、2013年、沖縄の陸上自衛隊第15旅団の第51普通科連隊で、「水路潜入要員集合訓練」が2ヶ月半に渡って行われた。これは、他国に占領されている島にひそかに上陸して敵を撃退し、島を奪還する訓練で、これまでは、先述した海兵隊の役割をになう佐世保の西部方面普通科連隊など一部の部隊でしか行われていなかった。その訓練を沖縄の陸上自衛隊がはじめて行ったのだ。 

 他にも、やはり2013年に19年ぶりに沖縄県内でレンジャー教育を実施するなど、沖縄の陸上自衛隊は今、実践的な戦闘訓練を次々に本格化させている。

 おそらく、こうした訓練の中で「人を標的にした訓練」が始まったのではないか、と推測される。たとえば、離島の奪還や市街地戦闘の訓練では、体にセンサーを付け、電波を発する銃などを使って撃ち合いをシミュレートする訓練も導入されている。チームに分かれて撃ち合い、何人殺したのかを競うのだという。

 まさに「人殺し」のための訓練。そういう意味では、自衛隊はすでに「軍隊化」が始まっているといっていいだろう。

 もちろんその背後にいるのは安倍首相だ。おそらく、あの男は自分に酔いながら「我が軍はなんとしても領土を守る!」などと興奮して語り、今、自衛隊を戦場に送り込もうとしているのだ。

 しかし、実際に血を流し、人殺しをさせられるのは末端の自衛官達である。この元自衛官は「これからは、自衛隊をやめる人がもっと増えるかもしれません」と語っているが、一方で、こんな危惧を表明している。

「(今後、懸念しているのは)元自衛官を政府がどう扱うかという点です。
 今は、自衛隊を辞める時に、予備自衛官や即応予備自衛官になるか、何の関わりも持たないかを選びます。でも、集団的自衛権の行使で、自衛官のなり手が少なくなっていった場合、予備自衛官にならなかった人も有事の場合は召集されるのではないかと考えています」

「安倍の引き起こす戦争で死ぬ」という恐怖に、誰よりも自衛官たちがリアリティを感じ始めているということだろう。
(野尻民夫)

最終更新:2017.12.19 10:27

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