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菅首相が「G7で日本だけワクチン接種まだ」と追及受け「確保は早かった」とデタラメ言い訳! 時期はずれ込み接種管理も大混乱
首相官邸HPより
緊急事態宣言の期間延長について昨日2日に記者会見をおこなった菅義偉首相。メディアでは菅首相が発信力強化のためにプロンプターをはじめて使用したことや、自民党幹部による「深夜の銀座クラブ通い」問題について「素直にお詫び申し上げます」と陳謝したことなどが取り上げられているが、昨日の会見で注目すべき点はワクチンにかんする発言だろう。
記者からの質問で最後に当てられたイギリスの軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員の高橋浩祐記者は、「世界ではすでに60か国近くがワクチン接種を開始し、G7のなかでワクチンの接種を開始していないのは日本だけ」「OECD(経済協力開発機構)加盟国37カ国中ワクチンをまだ未接種なのは日本やコロンビアなどわずか5カ国」と指摘。日本が他国と比べて検査数が不足していることも合わせ、「このなかで五輪を強行していいのか。危機管理でもっとコロナに専念してというのが国民の願いではないか」と厳しく迫った。
しかし、この鋭い質問に対し、菅首相はこんなことを言い出したのだ。
「ワクチンの確保は、日本は早かったと思います。全量を確保することについては早かったと思います」
おいおい。「接種開始が遅い」と指摘されているのに「確保するのは早かった」って、何の抗弁にもなっていないだろう。
しかも、その菅首相の言う「早い確保」が何の意味もなかったことは、すでに明らかになっていることだ。
政府は昨年7月に米製薬大手ファイザー社と「2021年6月末までに6000万人分(1億2000万回分)を供給」で基本合意したとしていたが、今年1月20日になって「年内に7200万人分(1億4400万回分)を供給で正式契約」と発表。「6月末」のはずが「年内」と時期が半年もずれ込んでしまったのだ。
さらに、本日3日放送の『ひるおび!』(TBS)では、イスラエルのネタニヤフ首相はファイザーCEOのアルバート・ブーラ氏に電話などで17回直談判して独自契約に漕ぎ着けたことについて、国際政治学者の高橋和夫氏が「菅さんだって、もっとがんばってファイザー詣でをしていればこんなことにはならなかったんじゃないかと思ってしまう」と指摘。これに対し、田崎史郎氏は「去年の暮れに最終合意だったのを契約まで漕ぎ着けたのは、菅さんがワシントンにある大使館に連絡して杉山(晋輔)大使が動いた結果なんです」などと成果をアピールしたのだが、高橋氏は「製薬会社との契約というのは『我々は全力を尽くしますよ』という努力目標なんですよ」「ファイザーにしてみれば『がんばりますよ』という契約を結んだので、それを『確保』と言うのはちょっと日本語が不適切な気が私はしますけどね」と切り返していた。
ようするに、「確保したのは早かった」と誇ったものの、実際には契約では供給時期が半年も遅くなった上、いまだに「確保した」と言えるような状況ではないというわけだ。そもそも、田崎氏は「去年の暮れに菅さんが動いた結果だ」と得意気に述べたが、去年の暮れに動き出すというのはあまりに遅すぎるだろう。
和泉洋人・総理補佐官と厚労省の大坪寛子審議官の不倫コンビがワクチン確保に動いていたが…
しかも、昨日の会見でもうひとつ引っかかったのは、菅首相が接種開始時期について、これまで「医療関係者に2月下旬から」としていたのを「2月中旬からスタートしたい」と前倒しして発表したことだ。
たしかに、昨日から「ファイザー製ワクチンが今月14日に到着する」と報じられはじめており、菅首相の前倒し発言はこのスケジュールを受けて出てきているのだろう。しかし、この「14日到着」報道を受けて、ワクチン担当の河野太郎大臣は昨日、会見の場を設け、「まだしっかり確定したものはない」と発言しているのだ(朝日新聞デジタル2日付)。
ワクチン相が「確定したものはない」と到着時期を否定する一方で、菅首相は“ワクチン接種に向けてうまくいっている”と言わんばかりに接種開始の前倒しを発表する──。つまり、言っていることがバラバラなのだ。
こうした主張の食い違いはいまにはじまった話ではなく、1月20日にも「一般の人への接種開始は5月」と大手メディアが報じたことに対して河野大臣が「勝手にスケジュールをつくっている」「デタラメ」と攻撃したものの、翌21日には坂井学官房副長官が「6月までにすべての国民に必要な数量の確保を見込んでいる」と発言。これに対し、河野大臣は「(坂井氏の)発言は修正させていただく」と否定したが、坂井官房副長官は「発言は撤回しない」と応戦した。
国民に透明性をもって説明を尽くすべき重要な問題であるにもかかわらず、ワクチン相と官邸が“小競り合い”を繰り広げるという醜態を晒す……。当の菅首相は1月25日の衆院予算委員会で立憲民主党の小川淳也衆院議員から“今年前半までにワクチン確保を「目指す」のか「見込む」のか”と追及され、「(6月を)目指している」と答弁したが、この期に及んでも菅首相と河野大臣では言っていることが食い違っているのである。
ワクチン対応をめぐっては、菅首相は厚労省ではなく、和泉洋人・総理補佐官と厚労省の大坪寛子審議官という“コネクティングルーム不倫”のコンビを中心にしたタスクフォースを官邸で組んでいた。だが、支持率低下をはじめ、今秋の自民党総裁選と衆院解散・総選挙を控え、五輪と並ぶ最後に残された切り札であるワクチンで絶対に失敗が許されない状況となって、菅首相は河野氏をワクチン担当として責任を押し付けた。だからこそ、菅首相はやれるかやれないかもわからないことを平気で口にできる。そして、一方の河野大臣は失敗の責任を押し付けられるのを恐れて、いまから必死で“状況は見通せない”などと予防線を張り続けている。ようするに、いま繰り広げられているのは、そんな責任の押し付け合いなのだ。
河野大臣「マイナンバー使う接種管理システム」を言い出し、政府や自治体が大混乱
しかも、仮に菅首相の言うとおり、今月中旬から医療関係者へのワクチン接種をスタートできたとしても、その後の高齢者や基礎疾患のある人、そして一般の人への接種がうまくいくかはまったく見通しが立っていない。
菅首相は会見で「先日、3社から3億1400万回分の供給を受ける契約の締結に至った」「高齢者については4月から接種を進めます」と明言したが、周知のとおりEU(欧州連合)は輸出規制に動き出すなど「ワクチン囲い込み」が激化。その上、米モデルナ社と英アストラゼネカ社のワクチンにしても、3日付の時事通信記事では政府関係者が「実際に使えるのは7月以降になる」と語り、〈治験データに不備などが見つかれば、さらにずれ込む可能性も否定できない〉と伝えている。医療従事者等には約400万人分(約800万回分)、高齢者には約3600万人分(約7200万回分)のワクチンが必要だが、果たしてこれだけの数が菅首相の言う4月に確保できるのかは不透明な状況だ。
さらに、問題はワクチンの「確保」だけではない。
河野大臣はワクチン接種の情報管理について、マイナンバーを使い接種記録をリアルタイムで把握できるシステムづくりを進める考えを示しているが、厚労省は自治体への流通管理システムを準備中。ようするに、ここにきて新たなシステム構築という“突貫工事”がはじまったのである。
このマイナンバー活用に対しては、全国市長会から「自治体の事務が増えることは非常に困る」と懸念の声があがり、世田谷区の保坂展人区長も「今頃になってシステムの話をするのは、あまりに遅い」と批判をおこなっているが、まさしくそのとおりで、ここでも政府対応は後手後手としか言いようがない。
にもかかわらず、菅首相は昨日の会見でワクチン接種について「海外に遅れていることは事実」と認めながらも、「(接種が)始まったら世界と比較をして、日本の組織力で、多くの方に接種できるようなかたちにしていきたい」などと言い放った。検査や医療提供体制を見ても、この1年間、政府は「組織力」を何ひとつ発揮できていないのに、何を言うか、という話だろう。
まったく失笑するほかないが、「国民のために働く。」などと当たり前のことをキャッチコピーに掲げながら、結局、菅内閣はワクチンの問題でも「全然、仕事ができない」実態を露呈させているだけなのである。
(水井多賀子)
最終更新:2021.02.03 08:56
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