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“大阪市4分割でコスト218億円増”は捏造でも誤報でもない! 松井市長が市財政局長を恫喝し都合の悪いデータ封じ込め
大阪維新の会HPより
1日に住民投票が行われる「大阪都構想(大阪市廃止構想)」をめぐって、都合の悪い事実を突きつけられた維新の松井一郎・大阪市長がとんでもない圧力を加えてきた。
標的になったのは10月26日、毎日新聞が出した「大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算」という記事だ。大阪市の財政局が、複数のメディアの取材をうけて、大阪市を4つの自治体に分割することで行政サービスを維持するために必要な「基準財政需要額」が2015年より218億円多い7158億円と試算した事実を報道。そのうえで〈制度案では、消防などの事務が府に移管されるため、行政コストの差額は218億円からは縮小し、最終的には200億円程度になるとみられる〉と独自の分析を示した。
維新はこれまで行政コストの増加について、明確な根拠を示さないまま「毎年度30億円」としてきたが、それとは食い違う客観的データがあることを示すものだった。
ところが、この記事に対して、慌てた松井市長や吉村洋文大阪府知事、橋下徹・元前大阪市長らが一斉に「大誤報」「デマ」などと攻撃。維新の会の馬場伸幸幹事長は国会での代表質問で「毎日新聞の大誤報」などと名指しで断じた。
維新応援団連中も記事が「都構想反対派」に偏ったものなどと批判した。
こうした維新サイドの反論のインチキについては後で説明するが、信じられないのは、そのあとだ。29日、試算を公表した大阪市の財政局の東山潔局長が謝罪、試算データを撤回したのだ。
東山局長は29日夕、市役所で緊急の記者会見を開き、こう説明した。
「本日、(松井)市長に考え方を説明し、市長から『世の中には存在しない架空の数字を提供することはいわば捏造だ。資料を提供した財政局のガバナンスの問題だ』と厳重な注意を受けた。(今回の試算は)いわば虚偽のもので実際はありえないものだという認識に、市長に説明したなかで至った。報道各社や市民に誠に申し訳なく、深くおわび申し上げる」
これを受けて、松井市長は「まず間違ったのは財政当局だ。でも、間違った書類をそのまま掲載しているのを取り消さないメディアの方はどうなんですか」などとメディアに圧力。維新議員や維新応援団もこぞって「やはり毎日と反対派が組んだ捏造だった」などと大合唱を展開している。
しかし、これ、どう見ても、松井市長が財政局長に圧力をかけ、無理やり「捏造」「虚偽」と言わせただけではないか。
実際、財政局長は会見で毎日などマスコミの記事を「捏造」「虚偽」とは言っていない。「その数字は意味がある、スケールメリットの参考になると思って出した」が、松井市長に「捏造」だと厳しく言われ、「市長の指摘を受けて捏造だと認識した」「虚偽だと言われても仕方ない」と説明したのだ。
この会見での説明や記者とのやりとりだけでも、松井市長が圧力をかけていたのは明白だろう。
松井市長が「毎日新聞の記者が圧力をかけて出させた」とフェイク
しかも、松井市長は財政局長の会見後の囲み取材で、「(財政局は)毎日新聞の圧力、プレッシャーで、毎日新聞の趣旨に沿って数字を出した」などと発言。毎日の記者が「圧力なんてかけられるわけがない」と抗議していたが、これは松井市長の発言のほうが明らかに嘘だ。
大阪市財政局が出した試算数字は、毎日新聞の取材以前に、複数の新聞社が大阪市に公表を求めており、財政局はすでに試算を始めていた。
「今回、毎日の記者は財政局側が試算できると知ったので、ごく普通に数字を出してほしいと申し入れただけのようだ。にもかかわらず松井市長があんなことを言っているのは、財政局側が客観的に計算していたことを否定したいためだろう」(在阪マスコミ記者)
しかも、毎日新聞が取材した際、市財政局は公表の理由について「4特別区の行政コストを考える一つの目安になる」と答えていた。
そして、記事が出て維新や応援団から攻撃を受けた後も、27日の財政局長の会見で毎日新聞の記者が自社の記事について間違いがあるか質したところ、財政局長は「きちっと記事を書いてある」と答えていたという。
ところが、28日になって、大阪市はHPに釈明文を掲載(現在は削除)。それでも足りないと、松井市長に恫喝されて、会見で「虚偽、捏造」と発言せざるをえなくなったのである。
そのやり口は恐怖政治としか言いようがないが、さらに問題なのは、松井市長や維新の政治家が「捏造」「大誤報」などとわめいている大阪市財政局の出した数字や毎日の記事が「虚偽」でもなんでもないことだ。
大阪市財政局が出した218億円増という数字は、大阪市の2020年度の基準財政需要額、特別区の数である4等分した人口に基づいて分割、計算した数値に基づいており、何の間違いもない。もちろん実際の行政コスト増とはズレが生じるが、毎日新聞の記事にもその旨はきちんと書いてあるし、自治体の規模が小さくなってスケールメリットが失われると、当然、人口当たりの負担は増すわけだから、近い数値になる。都構想の行政負担増の構造を説明するのに適したデータと言えるだろう。
大阪府立大の住友陽文教授がツイッターでこう喝破していたが、そのとおりだ。
〈無い計算式をデッチ上げたとか、根拠のない数字を出したのなら問題だが、大阪市財政局は人口を根拠に計算して出したのだから、どこにも誤りはない。そういう根拠で出した「218億円」を毎日新聞は正しく伝えた。どこに「捏造」があり、どこに「誤報」があるのか。そういうことを拡散する政治家が問題。〉
松井市長が「架空の数字を提供することはいわば捏造だ」、捏造は維新のデータの方だ
松井市長は「『態容補正』を無視している」などと言っているようだが、毎日新聞の記事では、〈制度案では、消防などの事務が府に移管されるため、行政コストの差額は218億円からは縮小し、最終的には200億円程度になるとみられる。〉ときちんと説明し、態容補正に含まれる消防費分を差し引くなど補正をした数字を挙げている。
また、松井市長は、毎日が国からの地方交付税は4特別区になっても変わらないと指摘していたことについて、「交付税の実態としてありえない」などと言っていたようだが、特別区の交付税は、地方交付税法や都構想の根拠法となる大都市地域特別区設置法に基づいて、4特別区を一つの市町村とみなして計算する。このため交付税の合計は現在の大阪市と変わらないというのは、それこそ大阪市のHPに書いてあるではないか。もしかして松井市長はそんなことも知らずに、都構想をやろうとしてきたのか。
あげく、財政局長によると、松井市長は「世の中には存在しない架空の数字を提供することはいわば捏造だ」と恫喝していたらしい。
そんなことを言い出したら、行政が公表しているシミュレーションのデータはすべて「捏造」ということになってしまう。というか、維新のぶちあげている「都構想で経済活性化」とか「行政コストは年間30億円増にとどまる」というシミュレーションこそまともな根拠を示していないのだから「捏造」ではないか。
松井市長は大阪市の試算を「世の中にない」というが、そもそも、都構想で大阪市が4つの特別区に分割された際の正確な「基準財政需要額」試算が「世の中にない」こと自体、維新の責任だ。
橋下徹は「大誤報」「都構想が否決されれば住民投票は無効」と予防線
都構想にともなって、大阪府と大阪市は議会可決の前に法定協議会という組織を設置し、特別区の設置にともなう制度を協議してきたが、この法定協議会で自民党が何度も4特別区の基準財政需要額を示すよう求めていたのに、維新サイドはこれを拒否。事務作業を担う府市の共同部署「副首都推進局」も試算してこなかった。
しかし、大阪市を廃止して特別区を設置するという行政の大改革をやるのだから、独自の計算式を立ててでも、どれくらい増減するかを示すのは当たり前だろう。結局、それをやらなかったというのは、補正をしても、財政局が試算した「200億円程度の増加」になってしまうことがわかっていたからだ。
自分たちに都合の悪い試算データを隠しておいて、都合の悪い試算数字が出てきたら「捏造」「大誤報」などとわめいて否定にかかる。そして、否定のために自分たちがフェイクをまきちらす。維新のやり口はまさにトランプ大統領とそっくりといっていいだろう。
しかも、それは松井市長や馬場幹事長ら現役の維新政治家だけではない。橋下徹・元大阪市長や応援団連中も相変わらずスリカエや扇動を行なっている。橋下元市長にいたっては、〈住民投票直前に、最大の争点について、大阪都構想に不利な形で在阪メディアが大誤報をしでかした。都構想が可決されればそれでいいが、否決されれば住民投票は無効だろう。〉などと言い出した。
ありもしない事実を捏造し、虚偽をふりまいているのはどっちなのか。大阪市民にはぜひ賢明な判断をしてもらいたい。
(編集部)
最終更新:2020.11.01 10:44
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