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小池百合子が五輪マラソン札幌案を潰すため今さら東北開催を持ち出し! さんまや渡辺謙も批判してきた東京五輪の被災地軽視
『とくダネ!』に生出演した小池都知事
2020年東京五輪のマラソンと競歩について、国際オリンピック委員会(IOC)がコースを東京から札幌に移すことを提案した問題。東京のあの猛暑のなかで、マラソンを強行すれば、棄権者が続出することになる可能性が高いうえ、最悪、死亡者が出た可能性もあることを考えれば、妥当な判断だろう。
ところが、この期に及んでも東京都はこの札幌案に猛反発している。代替案として、競技の開始時間を現状の午前6時から前倒しする案や、東日本大震災の被災地である東北での開催案などを提案することを検討しているのだという。
小池百合子都知事は、本日25日午後、IOCの調整委員長を務めるジョン・コーツ副会長と、マラソン札幌開催案をめぐり緊急会談をおこなった。
小池百合子都知事は、本日25日午後、IOCの調整委員長を務めるジョン・コーツ副会長と、マラソン札幌開催案をめぐり緊急会談をおこなった。
報道によると、これに先立ち、東京都側からIOCに対し「開始時間を午前5時以前に前倒ししての東京開催案と札幌案を比較したか」「復興五輪の観点から東北・被災地も検討比較したか」などの質問状も送付しているという。
実際、小池都知事自身、今朝放送のワイドショー『とくダネ!』(フジテレビ)に生出演し、一部で報道された“午前3時スタート案”こそ否定したものの、“東北被災地開催案”については「被災地については都庁のなかにも復興五輪って言っていたんだから被災地でっていう声もあります」と認めていた。
いったい、何を言っているのだろうか。夏の東京の猛暑は、IOCの札幌案提案によってはじめてわかったことではない。
酷暑問題については、かなり早い段階から本サイトはもちろんメディアや有識者、選手からも危惧する声が上がっていた。しかし、東京五輪・パラリンピック組織員会も東京都も、「打ち水」「朝顔」「氷風呂」など文字通り“焼け石に水”“戦中の竹槍精神”のような非科学的な対策や、その効果が疑問視される遮熱性舗装など、場当たり的な策を弄するばかりで、開催1年を切った現在にいたるまで、なんら根本的な解決をはかってこなかった。
だいたいスタート時間を午前5時以前に早める案も、1年以上前からメディアでも世論からも提案する声は上がっていたが、無視し続けてきた。
そして、“スタート前倒し案”以上に、許しがたいのが“東北の被災地での開催案”だろう。もしも暑さ問題が解消され、復興に寄与するのであれば、東北の被災地でマラソンや競歩が実施されること自体は、悪いことではない。
しかし、本当に東北の復興を考えているであれば、なぜ開催まで1年を切ったいまごろになって、そんなことを言い出すのか。IOCに東京でのマラソン開催をダメ出しされなくても、もっと前からマラソン・競歩以外の競技も含め、東北の被災地での開催を検討すべきだっただろう。
ようは、IOCから主導権を奪われるかたちで札幌案を提案されたことから、札幌案を潰すために泥縄的に、あるいは費用問題などをめぐりマウントを取るためだけに東北の被災地での開催を言い出しているだけなのだ。醜悪な被災地利用としかいいようがない。
今回だけではない。招致段階では東日本大震災からの復興をテーマとした「復興五輪」というお題目がつけられていたが、いまではそのテーマは完全に忘れ去られている。東京五輪は、招致の際から都合のいいときだけ「復興五輪」を持ち出し、被災地を利用し続けてきたのだ。
渡辺謙「復興五輪のはずなのに経済五輪」「東北が全然そっちのけ」と東京五輪批判
こうした東北への仕打ちに憤りの声をあげたひとりが、俳優の渡辺謙だ。渡辺は宮城県気仙沼市でK-portという名前のカフェを開くなど被災地復興活動に力を入れているが、2019年2月11日付朝日新聞DIGITALのインタビューでこのように語っている。
「2020年の東京五輪だって、復興五輪のはずなのに経済五輪になっているところが気になります。日本が復興していく姿を世界に見せていくんだというところに端を発しているはずなのに、経済効果だけを考えるオリンピックになっている気がします。東京だけ盛り上がって、東北が全然そっちのけっていうかね。遠い国の話みたいな感じなんじゃないかなあ」
渡辺の指摘するとおり、招致段階での「復興五輪」というお題目が完全に忘れ去られているだけでなく、経済効果重視と五輪至上主義の結果、「復興五輪」どころか、オリンピックは復興を妨げる原因ともなっている。五輪関連の建設ラッシュなどのせいで労務単価が上がり、東京の工事費は高騰しているからだ。
2015年9月25日付毎日新聞の報道によれば、〈工事原価の水準を示す「建築費指数」(鉄筋コンクリート構造平均)は、05年平均を100とすると今年7月は116.5。東日本大震災前は100を下回っていたが、五輪決定後の13年秋から一気に上昇〉したという。挙げ句、〈復興工事が集中している被被災地では人手不足に加え、建築資材費の高止まりにより採算が合わず、公共工事の入札不調が相次〉いでいるというから、五輪開催がむしろ被災地の復興を妨げているのだ。
渡辺と同じく、東北を置いてきぼりにして東京五輪オリンピックの盛り上がりに酔いしれる状況に疑問の声をあげているのが、明石家さんまだ。
さんまは東京五輪の開催が決まった直後、2013年9月14日放送の『MBSヤングタウン土曜日』(MBSラジオ)で「いや、だからでも、福島のことを考えるとね……」と切り出し、このように語った。
「こないだも『福島から250キロ離れてますから大丈夫です』とかいうオリンピック招致のコメントはどうかと思って、やっぱり。俺までちょっとショックでしたけど、あの言葉はね」
さんまがショックだったと言っているのは、同年9月4日に東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会の竹田恒和理事長がブエノスアイレスでの記者会見で語った言葉だ。まるで福島を切り離すかのようなこの暴言に、さんまは「『チーム日本です!』とか言うて、『福島から250離れてます』とか言うのは、どうも納得しないコメントやよね、あれは」と不信感を隠さなかった。
明石家さんまも有森裕子も東北復興を無視する東京五輪を批判
さらに、さんまは、安倍首相はじめ招致に躍起になる人々から“お荷物”扱いを受けていた福島に、こう思いを寄せた。
「福島の漁師の人にインタビューしてはったんですけど、『7年後のことは考えてられへん』と、『俺ら明日のことを考えるのに精一杯や』って言わはったコメントが、すごい重かったですよね。だから、あんまり浮かれて喜ぶのもどうかと思いますけどもね」
東北のことを無視した東京五輪に対する怒りの声は、当のアスリートからも出ている。
バルセロナ、アトランタ五輪のメダリストである元マラソン選手の有森裕子氏は、2017年6月17日放送『久米宏 ラジオなんですけど』(TBSラジオ)にゲスト出演した際、「あまりにも“オリンピックだからいいだろう”“だからいいだろう”“だからこう決めるんだよ”とあまりに横柄で。なぜこうまで偉そうになっちゃうんだろう。社会とずれる感覚を打ち立てて物事を進めている。横柄だし、雑だし傲慢」と、五輪至上主義を強引に押し付ける政府のあり方に疑問を呈しつつ、このように語っている。
「そもそもなぜ東京五輪を招致したのか。一番大切なのが、復興だったはずです。スポーツによって、日本を元気に変えよう。日本に大きな災害があって、オリンピックを呼ぶことで復興させられるんだと、最たる手本になる国になる。そのつもりで私もブエノスアイレスでロビー活動をしました。でも蓋を開けたら全然いま違う。復興どころか、どこを見ているんだろう。結局何をやろうとしているんだろうというのが正直あります。どこか不安で、反抗したくなるような、やらなきゃいい、返上すればいいという感情を促してしまう。すごく残念です」
「復興五輪」のテーマが完全に忘れ去られているという思いは、東北に暮らす多くの人がもっているものだ。河北新報社とマーケティング・リサーチ会社のマクロミルが、東北6圏と首都圏を対象に実施したアンケートでは、「「復興五輪」の理念は明確か」の質問に63.6%が「明確でない」と答え、また、「復興に役に立つか」の質問にも52%が「役に立たないと思う」と答えている(2018年3月11日付河北新報ONLINE NEWS)。
これだけ東北の被災地を蔑ろにし続けてきて、IOCにマウントを取るためだけにまたぞろ「復興五輪」を持ち出す。今回浮上した“被災地開催案”は、小池都知事が、東北の復興を真剣に考えているから出てきたものではなく、むしろ東北の被災地を利用することしか考えていないということが、あらためて浮き彫りになったと言えるだろう。
(編集部)
最終更新:2019.10.25 05:44
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