上田晋也『サタデージャーナル』終了の不可解! 政権批判する貴重な番組、年金問題でも鋭く安倍政権の責任を追及していたのに

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TBSテレビ公式サイトより


 耳を疑うニュースが飛び込んできた。本サイトでも度々取り上げてきた上田晋也(くりぃむしちゅー)がMCを務める土曜早朝の報道番組『上田晋也のサタデージャーナル』(TBS)が、6月で終了するというのだ。

 7月6日から同時間帯では、先日『NEWS23』(現『news23』)を卒業した駒田健吾アナがMCの新情報番組『まるっと!サタデー』が始まるというが、『サタデージャーナル』は終了とだけされており、時間帯を移してのリニューアルなどの情報はいまのところ出ていない。

 駒田アナの新番組がどういうスタンスの番組になるかはわからないが、『サタデージャーナル』が時間帯移行などなく、このまま本当に終了してしまうのだとしたら、大きな損失だろう。


 本サイトでも度々取り上げてきたが、『サタデージャーナル』における上田は、政権に媚びへつらい太鼓持ちの醜態をさらす他のコメンテーター芸人とは違い、権力への厳しい目を持ち、安倍政権批判も臆することなく発してきた。たとえば、「赤坂自民亭」問題を「えひめ丸の事故のとき、森喜朗首相がゴルフやってて退陣まで追い込まれたじゃないですか。僕はまったく同レベルの話だと思うんですよ」と一刀両断したり、沖縄県民投票の結果を無視して辺野古埋め立て工事を続行することに対し「真摯に受け止めるっていうのは無視することなのか」と安倍政権の強行姿勢を問題視。さらに6月8日放送回では「芸能人の政治的発言問題」を取り上げ、政権批判を許さない安倍政権下の異常な言論状況を厳しく批判していた。

 つい3日前の放送でも、上田の舌鋒はまったく勢いを失っていなかった。

 金融庁による「老後は年金頼らず2000万円自力で貯めろ」報告書に端を発し、大きな批判を浴びている「年金問題」。6月15日放送の『サタデージャーナル』でもこの問題を取り上げたのだが、そこで上田らが報告書の問題や年金制度の破綻そのもの以上に強く問題視したのが、安倍政権による「民主主主義の破壊」だった。

 番組ではまず、報告書の問題が国会で追及されてまともに答弁できない安倍首相や、国民の間で怒りが噴出した途端「政府のスタンスと違う」ということを理由に報告書を受け取らないという前代未聞の対応に出た麻生太郎財務相兼金融担当相の所業をVTRで紹介。

 その映像を受けた上田は、呆れ返った表情でこのように語った。

「僕、最近ね、本当にこの国の政治大丈夫かなと思うんですよ。そもそもおかしいのが、麻生大臣もね、内容が出た当初は同調していたわけですよ。それにも関わらず、問題が大きくなってくると、金融庁に問題を押し付けて報告書を受け取らないという、最終的にはそういうことになったわけですけど」

 そもそも、報告書の内容が政府のスタンスと合っていないという言い訳自体がおかしな話だ。上田も番組のなかで「麻生大臣は政府の政策スタンスとは違うから受け取らないということなんですけど、そもそもは厚労省、いわゆる政府がその数字の根拠を示したわけですよね」と指摘したが、本サイトがスクープした通り、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」がとりまとめたこの報告書の根拠を出したのは厚労省である。

 つまり、麻生財務相の発言とは裏腹に、国民に「自助」を求める姿勢は、むしろ政府全体の方針だ。それを麻生財務相は、国民から批判があがったからといって手のひらを返して金融庁だけに責任を押し付けたのである。

 では、この審議会はなんのために開かれたのか。上田は「こんな対応だったら、『じゃあこの政府に協力しないよ』と、いうようなことにも(なってしまう)」「今後、『こういうデータを受け取らない』『報告書を受け取らない』と、なるんだったら、政府に都合の良いデータばかりがあがってくることになるんじゃないかと思うんですが」と指摘した。

『サタデージャーナル』は安倍政権の「不都合な事実をなかったことにする」姿勢を追及

 上田の指摘はその通りだろう。もとより安倍政権においては、国会や与党内の議論を軽視し、選挙も経ず政府が恣意的に選んだだけの審議会や有識者会議を偏重していることが問題視されてきた。それが、今回の「2000万円」報告書騒動を機に、忖度がよりいっそう強くなるであろうことは火を見るより明らかで、審議会や有識者会議の信頼性はますます揺らぐことになるだろう。

 番組ではさらに、安倍政権下で常態化している「国会軽視」「議論無視」、そして「事実隠蔽」の姿勢を厳しく追及した。

 自民党の森山裕国対委員長は「この報告書はもうないわけですから、予算委員会ではなじまないと思います」と発言し、予算委員会での集中審議には応じられないとした。問題を「なかったこと」にして強引に話を終わらせようとするこういった姿勢に対し、番組では、ジャーナリストの龍崎孝氏が、このように語った。

「これは最近の安倍政権のなかでよく見られていることだと思うんですよね。不都合な事態があると、そのこと自体をなかったことにしてしまう。なかったことにしてしまうことによって、ないんだから議論する必要がない(となる)。森友学園のときもそうでしたけど、不正な助成がされているんじゃないかということが燃え盛ってくると、そもそも認可を取り消してしまう。だから、その助成はなくなるからこの問題は終わりですという逃げをするわけですよね。これは安倍政権の常套手段といっていいんじゃないかと思いますよね。もちろん、自分のやりたいことを成し遂げたいというのが政治ですから、それはいいんです。いいんですけど、みんながみんなそれを支持するわけじゃないから。だから、議論があって、修正があって、引くところは引いて、出直すところは出直す。そういう丁寧な、ある意味謙虚な作業が必要なのに、もう決めたことは譲らない。なぜか? 『選挙で勝ったから』みたいな、この理屈はですね、もう通じないですよね。それがまかり通っているところに、私たちも含めてもう少し考えなければいけないんだろうなと思います」

 言うまでもなく、年金問題は放っておいたところで解決するものではない。

 これまで「年金100年安心」などと喧伝してきたのは嘘で年金制度を現状維持できないというのであれば、事実を明らかにし、徹底して議論をおこなう必要がある。今後、少子高齢化の流れが止まる可能性はほぼゼロなのだから、これ以上先延ばしにはできないだろう。

 しかし、安倍政権および自民党は、事実を明らかにすること、議論することから徹頭徹尾逃げ回ろうとしている。

上田晋也「与党の幹部は恥ずかしくないんですか」と真っ向批判

 安倍政権のこうした「議論無視」の姿勢はいまに始まった話ではないが、今回も、ここまで強引に問題の幕引きを図ろうとする理由はひとつ。「選挙」である。

『サタデージャーナル』は、自民党の萩生田光一幹事長代行による「金融庁がこの時期に何を目的にこういう報告書をつくったのかということを明らかにしてほしいということをいま申し上げているところでございます」という発言、二階俊博幹事長による「我々は選挙を控えているわけですからね」という発言、岸田文雄政調会長による「報告書を受け取らないという方針について理解できる」といった発言をVTRで紹介した。

 これら自民党幹部の発言を受けた上田は「『選挙前になぜこんな報告書をつくったんだ』『金融庁は出したんだ』とかって言ってますけど、本当にね、自分たちの都合でしかものを言ってないなという気がするんですけれども」と喝破。さらに、「なかったこと」にして逃げきろうとする姿勢についても、このように指摘した。

「与党の幹部は報告書がなかったんだから議論の余地がないというか、議論する必要もないみたいな発言なんですけど、恥ずかしくないんですかね?」
「与党の幹部が火消しに走れば走るほど、『あぁ、この報告書ってリアルなんだな』と、もう国民みんな思ったと思うんです。じゃあ、もう本当に年金だけじゃダメだぞ。それをいまさら違うよとか言っても誰も信じない隠せばかくすほど、どんどん泥沼化するんじゃないかと僕は思うんですけど」
「都合の悪いものは隠す、改ざんする。で、まあ、ほとぼりが冷めるまで放置するというような、これが慣れきって体質にまでなっているんじゃないかと思うんですけど」

 今回の報告書をめぐる騒動は、これまでの安倍政権の姿勢が集約されたものといえる。

イージス・アショア問題にも踏み込んだ上田晋也

 この日の『サタデージャーナル』では年金問題のほか、番組の冒頭でイージス・アショアの問題も取り扱い、これに対しても上田は「役所の統計の杜撰さですとか、資料のいい加減さとか、あれほど大きな問題にここ数年なっているのにも関わらず、またこんなひどい資料が出てきました」「地元の方、それは納得するわけないですよね」と、徹底的に批判していた。

 年金問題とイージス・アショア問題。上田はこの2つの問題を並べたうえで、このように番組をまとめた。

「選挙前ににわかに浮上した2つの問題。そこに共通して感じたのは、どこかで見たことがあるような既視感でした。あったことをなかったことにする。答えありき、結論ありきで進める政策。政治は結果がすべてという声も聞こえてきますが、民主主義の国においてはそのプロセスを見せることも同じぐらい大事ではないかと思います。選挙前だからこそなかったことにするのではなく、国民の前に選択の判断材料をしっかりと見せてほしいと思います。目先の選挙ばかりにこだわる政治。それが果たして、我々国民、未来の子どもたちにとって、より良い世の中をつくることにつながるんでしょうか?」

 上田が「既視感を感じた」と言っているとおり、金融庁報告書問題、イージス・アショア問題、加計学園獣医学部新設問題、森友公文書改ざん問題、統計不正問題……これらの問題はすべて同根だ。政権に都合のいい「結論ありき」で、政権の意に沿わなければ、公文書も統計も事実も都合よく書き換えるか破棄してしまう。こうした安倍政権の体質そのものが問われるべき問題である。

 上田は「政治は結果」「結果を出す」という安倍首相の常套句を持ち出したうえで、「民主主義のプロセス」こそを大事にすべきであると、安倍政権の独裁的手法を批判したのだ。

 どうだろうか、この上田の鋭さ。『サタデージャーナル』がもし本当にこのまま終了してしまうのだとしたら、つくづく惜しいと思う。時間帯を変えて存続してもらいたい。愛人問題の言い訳を垂れ流すか、時事オンチの放言を吐き出しているだけのビートたけしの『新・情報7DAYS ニュースキャスター』(TBS)あたりと交代してもらえないだろうか。

最終更新:2019.06.18 10:49

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