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長谷川豊が出馬辞退後、再び部落差別発言を「切り取り」と主張! 維新の堺市長選勝利のため謝罪、「謝罪文は馬場幹事長が作った」とも
長谷川豊公式コラムより
部落差別発言で大きな批判を浴びた元フジテレビアナウンサー・長谷川豊氏について、10日、日本維新の会は「参院選の出馬を辞退した」と発表した。
当然、というより、維新はもっと早く公認取り消しをすべきだったし、ことの重大性を考えれば、公認一旦停止のまま明確に「公認取り消し」をせずに、「本人の辞退」というかたちにしたのもおかしい。
と思っていたら、当の長谷川氏がブログでとんでもないことを言い出した。なんと“部落差別発言の動画は「切り取られて編集されている」ものだったが、維新の堺市長選勝利のために、馬場伸幸幹事長と相談して全面謝罪した”というのだ。しかも、維新・馬場幹事長は最後まで長谷川氏をかばい、公認取り消しではなく、出馬辞退にこだわったという。
ようするに、長谷川氏も維新も、部落差別発言じたいについては、まったく真摯な反省をしていなかったのである。
流れを最初から解説しよう。問題の発端は今年2月の東京での講演会で長谷川氏がこんな発言をしていた動画が発見されたことだ。
「日本には江戸時代にあまりよくない歴史がありました。士農工商の下に、穢多・非人、人間以下の存在がいると。でも、人間以下と設定された人たちも、性欲などがあります。当然、乱暴なども働きます。一族夜盗郎党となって、十何人が取り囲んで暴行しようとしたときも、侍は大切な妻と子どもを守るためにどうしたのか。侍はもう、刀を抜くしかなかった。でも刀を抜いたときに、どうせ死ぬんです。相手はプロなんだから、犯罪の」(発言ママ)
念のため言っておくが、差別された「穢多・非人」の人々を「人間以下」「乱暴・暴行を働く」「犯罪のプロ」などとするのは明らかに事実誤認で、偏見を助長する悪質な発言だ。江戸時代の部落史研究の第一人者のひとりである寺木伸明・桃山学院大名誉教授も、毎日新聞の取材に対し〈長谷川氏の話を裏付ける資料は全く見たことがない。犯罪は身分とは関係なく起こっていた。江戸時代に被差別の身分の人々が携わった主な役目の一つは、警察的な仕事だった〉と話している。
ネット上でこの差別発言が問題視された当初、長谷川氏は「切り取り」「ねつ造」などと開き直ったが、5月21日、部落解放同盟中央本部が日本維新の会に抗議文を提出、中央本部の組坂繁之・中央執行委員長が維新の馬場幹事長と面会して抗議すると、22日に一転、ブログに謝罪の文書をアップした。
長谷川氏は5月22日のブログで〈「差別の助長」「差別の再生産」を聴衆の皆さんにもたらす弁解の余地のない差別発言〉〈私自身の「潜在意識にある予断と偏見」「人権意識の欠如」「差別問題解決へ向けた自覚の欠如」に起因する、とんでもない発言〉であると認め、〈発言を全面的に謝罪するとともに、完全撤回〉を表明。23日には維新の常任役員会が長谷川氏の公認を「当面、停止する」としていた。
そしてようやく、「長谷川氏の立候補辞退」が発表された6月10日、長谷川氏は冒頭で指摘したようにブログを更新、仰天の言い訳と、謝罪、出馬辞退の裏側を書き連ねていたのだ。
動画は反維新に「切り取り・編集された」という長谷川豊のトンデモ主張
まず、長谷川氏は、自分の部落差別発言が収められた動画が、いかに不自然であるかをこう主張する。
〈僕はアナウンサーをしていました。17年半。毎日のようにニュースを伝えてきました。教育も受けてきています。
なんだこれは。
画面上の僕は「江戸時代には士農工商の下に人間以下に設定されたエタ・非人がいてね」「その人たちにも性欲がある」「犯罪のプロ集団」と嬉々として話していました。
なんなんだこれは。
しかもよく聞くと、そうとも言い切ってない。なんだか主語も述語もおかしなことになっていて、とてもじゃないですが、アナウンサーの喋りじゃあない。〉
〈しかも、これは2月の講演会の映像でした。
僕がそんなことを言っていたのが本当だとしたら、2月に問題になっているはずです。それくらいおかしな映像。何で3カ月もたって5月に問題になるのか。〉
そのなかで、動画について、こう結論づけるのだ。
〈切り取られて編集されている。〉
しかも、長谷川氏は〈これが反維新。デマでも編集でも何でもやってきます〉〈維新を攻撃している連中というのは選挙前には「ここまでやってくる」〉(11日の追記)などと書いている。
陰謀論の言い訳も大概にしてほしい。そもそも、最初にアップされた経緯を考えると反対勢力によるものとは思えないし、動画を見ても、問題発言部分について「切り取られて編集」された形跡はない。
また、長谷川氏は11日になって別の2本の講演動画を公開、それを証拠に問題の動画で〈「差別などは許されない」と明確に言っている→切り取られている〉などと主張したが、別の動画で“差別は許されない”と発言しているからといって、問題の動画で切り取られている証拠になるはずがない。
しかも、長谷川氏は「切り取られた証拠」として公開したその2本の講演の動画でも、やはり「穢多・非人」が「犯罪集団」になったのではないかという趣旨の差別発言をしていた。
「その穢多とか非人って人たちは普通に結婚することも引っ越しをすることも許されず。でもね、そういう人たちにしてみても、当然のことながら遊びたいですし友だちとも学びたいですし、言ってしまうと性欲なんかもあるかもしれない。そういうような人たちがひょっとしたら、一部、山賊になっていったり夜盗となって、そういう犯罪集団になっていったのかもしれないですよね」(1月の講演)
維新・馬場幹事長は謝罪文を代わりに作り、最後まで長谷川を庇い続けた
まったくその自分本位すぎる思考回路にはクラクラしてくるが、信じられないのはその先だ。反維新による〈切り取り・編集〉だと言い張る長谷川氏がなぜ、発言を謝罪・撤回したのかという理由がこんなふうに書かれているのだ。
〈覚悟を決めるしかありませんでした。
堺市長選の前。そして参院選のわずか2カ月前。
相当にしっかりと攻撃態勢が組まれていると理解するしかなかった。〉
〈馬場幹事長とすぐに相談しました。愕然としていてもしょうがありません。僕と馬場さん二人の共通認識が二点挙がりました。
①政治家である(目指す)以上は全てが『結果責任』=騒がれた段階でアウト
②今の最優先課題は堺市長選の勝利とする
(中略)
であれば今やらなければいけないのは②の最適解を求めること。そこを一番考えなきゃ。
維新が堺市長を取る。もう目の前まで来ている。絶対に負けてはいけない。
まさかの丸山さんの問題が大きく取り上げられてしまっていました。何があっても、これ以上の延焼を防ごう。〉
さらに、ブログはこう続いている。
〈すぐに馬場さんや馬場事務所と相談し、全面謝罪する文章をアップしました。
その上で、とにかく黙る。
全面的に黙る。すべてのSNSをストップ。そうすれば、きっと2・3日で収まるでしょう。
馬場さんの作って下さった謝罪文は完璧でした。事実、何とか2・3日である程度の場を収めることが出来ました。〉
謝罪・撤回したのは堺市長選のためで、ブログでの謝罪は馬場幹事長がつくったものだったと告白したのだ。また、馬場幹事長は最後まで長谷川氏をかばっていたという。
〈しかし。馬場幹事長が「長谷川さんが下りたという形にしましょう」と言い続けてくれました。「長谷川さんの将来がかかっている大事なポイントですので、これ以上長谷川さんが傷つかないようにしてください」と。〉
〈最後まで馬場さんには慮って(おもんばかって)いただきました。〉
ようするに、長谷川氏だけでなく、維新・馬場幹事長も発言の重大性、差別性についてまったく認識しておらず、堺市長選のためにその場しのぎで対応しただけだったということだろう。
そもそも、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」と発言したのをはじめ、女性差別発言など、数えきれない差別発言や問題発言を連発してきた長谷川氏に公認を与えたことじたい、維新の差別体質は明らかだったが、ここまで問題になっても、まだ「長谷川さんが傷つかないように」などとかばっていたとは……。これでは、馬場幹事長もほとんど長谷川氏と同じ思想を持っているとしか思えない。
長谷川「最新の学説では差別の歴史がなく、教科書からも削除」のデマを
長谷川氏のブログにはもうひとつ、看過できないことがある。それは部落差別の歴史について、新たなフェイクをとばしていたことだ。長谷川氏は自分の発言が「切り取り・編集」であるとしたあと、こう続けている。
〈間の悪いことはもう一つありました。
僕らの世代は、小学校などで(僕は道徳の授業でした)江戸時代に暗い差別の歴史があった、と習いました。4段階の身分制度(士農工商)。そして、その下に被差別階級があった、と。
実は日本ではその歴史自体が、なかったのではないか、と。
その認識は間違っていたのではないか、と。
最新の歴史の教科書では、実はそんな歴史認識自体が間違っていた、というのが最新の学説となっており、子供たちの教科書から、その差別の歴史の記述自体が無くなっているのです。
僕はそれを知りませんでした。
僕は神話の時代の話でもするように「小学校時代に習いましたね」「差別の歴史があったってね」そう語っていたことは事実でした。〉
つまり、長谷川氏は“士農工商の身分制度の下に被差別階級があるという認識は最新の歴史教科書では間違っているとされているが、自分はそれを知らなかっただけだ”と言っているわけだ。
はっきりいうが、これはミスリードである。たしかに、江戸時代の身分序列について、従来、「士農工商」と言われてきたものについては、実際の呼称や序列とは異なっていたとされる。だが、それは「士農工商」の話であり、〈被差別階級〉の存在が否定されているわけではない。
実際には、代表的なものとして皮多(かわた)/長史や「非人」などの被差別民が存在した。皮多は主に皮革業を生業とし、「非人」は戦乱や生活苦で都市へ流入してきた人々を中心に編成されたと考えられている。『入門 被差別部落の歴史』(寺木伸明、黒川みどり/解放出版社、2016)によれば、〈徳川氏もその他の大名も、多くの場合、皮多/長吏身分や「非人」身分の人々を組織化し統制していこうとしていた〉。被差別民の把握や身分登録、さらに死牛馬処理にかかわる穢れ視を強めて差別感を増幅したり、百姓・町人との交流に規制を加えるなどの差別政策がとられた。
改めて問われる差別発言連発の長谷川豊を公認した維新の差別体質
長谷川氏の言う〈子供たちの教科書から、その差別の歴史の記述自体が無くなっている〉というのも事実ではない。というか、完全にデマである。
たとえば、山川出版社の『詳説 日本史B』では、江戸時代(幕藩体制)の身分と社会についての項目で、村や都市社会の周縁部分の多様な職業集団を紹介したうえで、〈そうした中で、下位の身分とされたのが、かわた(長吏)や非人などである〉〈幕府や大名の支配のもとで、死牛馬の処理や行刑役などを強いられ、「えた」など蔑称で呼ばれた〉〈かわた・非人は、居住地や衣服・髪型などの点で他の身分と区別され、賤視の対象とされた〉などと説明されている。
長谷川氏は、“従来、学校で教えられていた江戸の身分制度の話が、現在では違う説明になっているのを知らずに話してしまった”と主張し、そのことが〈間が悪かった〉として維新の党に謝罪している。だが、10日のブログでは、自分の差別発言という問題の本質から論点をずらし、偏見の助長について謝罪もせず、逆に「切り取られて編集された」などと被害者ヅラをして、あげく、被差別民をめぐる歴史とその教育に関するデマまでバラまいた。
「僕はそれを知りませんでした」というのは、本来、自らを恥じ、歴史や事実を学ぶべきことだが、長谷川氏にとってそれは、単なる開き直りの語彙でしかないらしい。もはや救いようがない
繰り返すが、改めて認識せねばならないのは、そもそも以前から差別発言を連発していた長谷川氏のような人物に公認を与え、今回の差別発言問題でも長谷川氏のかわりに謝罪文を用意して収拾をはかった、日本維新の会の体質の問題だ。維新議員や公認候補の問題発言は一度や二度ではなく、何度も同じ事が繰り返されている。「不注意による失言」ではないのだ。この体質が維新という政党の本質であることを、有権者はしかと胸に刻まねばならない。
(編集部)
最終更新:2019.06.13 01:34
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