企業(会社)に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
経済界「極右&ヘイト」ミシュラン発表!(前編)
アパから出光創業者まで…歴史修正主義や極右、ヘイト思想に侵されている企業・経営者を判定する
安倍政権の下で、日本企業による歴史修正主義、排外主義が相次いで問題になっている。何度か本サイトでも取り上げてきたが、言わずもがな、日本企業によるヘイトスピーチやリビジョニズムの喧伝は極右思想と地続きにあり、国際的スタンダードから逸脱した“日本の恥”に他ならない。しかし、一般の消費者の視点からは、そうした企業のグロテスクな性格は覆い隠されやすく、残念なことに間接的にヘイトや歴史修正に加担してしまっていることもあるだろう。
そこで今回は、歴史修正主義や極右思想をもっている、あるいはヘイト的行動に関与していると思われる8つの会社もしくは経営者をリストアップ。経営者や創業者らのヘイトや歴史修正などの総合的悪質性(極右度)と、安倍政権との関係も含めた政治力及び社会的影響力(影響度)を、それぞれ最大星5つで評価してみた。
ちなみに、産経新聞社や青林堂など、極右ヘイト運動を牽引する“新聞・出版業界の恥垢”と呼ぶべき輩たちについては、該当企業があまりにも多すぎるので今回は割愛。別の機会に譲ることにしたので、あらかじめご了承いただきたい。
それでは、企業経営者ウヨミシュラン、まずは前編の4社を紹介しよう。これだけでも、極右思想やヘイトがいかに色んな分野に広がっているかがわかってもらえるはずだ。(編集部)
……………………………
●アパホテル(アパグループ)
「南京大虐殺はなかった」と主張し核武装まで提言! 安倍首相の有力支援者は“極右のタニマチ”
極右度 ★★★★★
影響度 ★★★
本サイトでも既報のとおり「南京虐殺はなかった」などと主張する元谷外志雄・アパグループ代表の歴史修正本が国際問題となっているアパホテル。この問題を受けアパはHPに“反論声明”を出して開き直りを見せているが、その詐術やトンデモについてはすでに詳しく解説したので過去記事をご覧いただきたい。
だが、見方を変えれば、今回の問題となったトンデモ歴史修正本は、アパという企業の極右性をあらわす氷山の一角にすぎないとも言える。
近年のアパといえば、2008年に始まり、田母神俊雄が航空幕僚長更迭のきっかけとなった「真の近代史観」懸賞論文の主催が有名だろう。総額賞金額は巨額の500万円で、実に今年で10年目を迎える。第1回の田母神以降も、“ナンチャッテ皇族芸人”こと竹田恒泰(第2回)、“尖閣ビデオ流出男”こと一色正春(第4回)、また政治家からも民進党の極右議員・松原仁(第6回)や、ネトウヨを地で行く杉田水脈(第7回)など、錚々たる(?)メンツにペンネームを冠した「最優秀藤誠志賞」(賞金300万円)を贈呈している。これぞ、アパがトンデモ歴史修正主義界隈の“タニマチ”と言われる所以である。
また、元谷代表が取り組むのは、歴史修正運動だけではない。持論として「平時には米軍が核兵器を保持・管理するが、戦時にはこれらの核兵器を同盟国に提供して事実上核武装するという核抑止の新しいオプション」なる日本の核武装まで提言している(『謀略に!翻弄された近現代 誇れる国、日本。』アパグループ)。
政界人脈にもぬかりない。元谷代表は同郷の森喜朗元首相と近しく、安倍晋三の秘密後援組織「安晋会」の副代表も務めた。ほか、私塾の「勝兵塾」の講師には、下村博文、今村雅弘、馳浩、原田義昭、片山さつき、佐藤正久、長尾敬などの極右政治家が多数名を連ねる。なかでも、森の子分格である馳浩と、一昨年「南京大虐殺や慰安婦の存在自体を、我が国はいまや否定しようとしている」と公言した原田義昭は、毎回のように勝兵塾月例会に参加していた。
「代表は日本の保守のオピニオンリーダーのお一人であり、安倍首相のビッグサポーターとして知られていらっしゃいますから」
アパグループの機関誌「Apple Town」2月号の対談で、こんなふうに元谷代表をヨイショしたのは片山さつき。長年にわたって極右界隈に“資金”を投げ続けた実績も含めて「極右度」は★4つ、その歴史修正運動が自民党の中枢にも浸透していることから「影響度」を★3つとしてみた。今後もこの「安倍のビッグサポーター」の動向を注視せねばならないだろう。
●アリさんマークの引越社
“ブラック”だけじゃない、社員に「北朝鮮人は帰れ」のヘイト攻撃! 採用では部落差別も
極右度 ★★★★
影響度 ★
赤井英和のCMで知られる「アリさんマークの引越社」(株式会社引越社)。グループ会社である引越社関東の現役社員からの告発で、長時間労働や残業代未払いはもちろん、引越し作業中の荷物破損や車両事故の損害を社員に弁償させるというとんでもない制度を敷いていたことが発覚。2015年のブラック企業大賞にノミネートされ、「アリ得ないで賞」も受賞した。
だが、忘れてはならないのは、引越社関東はブラックであるだけでなく、卑劣なヘイトスピーチで社員を追い詰める“ヘイト企業”の側面が指摘されたことだ。
追い出し部屋に異動された末、懲戒解雇された社員のA氏が、「FLASH」(光文社)2015年11月17日号で、引越社関東の「差別採用」の実情についてこう告発している。「研修では被差別部落出身者への露骨な差別が叩き込まれました。この会社は人間を人間とも思わない本当のブラック企業です」。実際、同社の管理職研修では、採用NGの対象として、「労働基準法に詳しい人」などの条件以外に、「三国人、ミツ、ヨツ」などの差別用語を使いながら、「韓国人」「朝鮮人」「被差別部落出身者」を採用しないように指導されることを、複数の社員・元社員が証言している。
もともとA 氏は、2014年から羽田支店の営業専任職に就き優秀な成績を収めていた。だが、15年1月、営業車で交通事故を起こした際に、会社側から48万円の弁償金を請求されたことに疑問を感じ、組合に加入。団体交渉を行った。すると、会社側は突如、A氏を営業部からアポイント部に配置転換させ、その後、明らかに追い出し部屋であるシュレッダー係への配転を命じる。A氏は見せしめとして、一人だけオレンジ色の長袖シャツを着るよう強要されたという。
しかも、この不当な配転に対し、A氏が東京都労働委員会に不当労働行為救済申立てを行うとともに、東京地裁に「配転無効」の訴えを起こすと、引越社はなんと懲戒解雇処分を通知してきた。A氏は解雇無効、地位保全の仮処分を申し立てた。すると、会社は解雇こそ撤回したものの、復職したA氏を信じられないヘイトスピーチで出迎えた。
仕事は相変わらずシュレッダー係で、引越社がA氏に解雇を通知したときに張り出した、氏名と顔写真そして「罪状」なるタイトルで解雇理由が書かれた脅しの紙もそのまま。そして、A氏が仕事をするシュレッダー機の前には、A氏の写真の切り抜きに「北朝鮮人は帰れ」の文字が書かれた紙が貼られていたのである。
A氏が言うように、ブラック企業は「人を人と思わない」ほど、社員を酷使し搾取する。その意味でも、A氏が被害にあったヘイトはやはりブラック企業との親和性の高さを物語っている。差別はマイノリティだけが直面する問題ではなく、労働者・生活者全体に関わる重大な人権問題であることを再認識する必要がある。アリさんマークの引越社には、一連の社員への不当な処遇に連なる民族・出自差別の悪質性から「極右度」★4をつけたい。
●イエローハット
創業者は日本会議系改憲団体にも参加、安倍応援の報道圧力団体“視聴者の会”スポンサー?
極右度 ★
影響度 ★
イエローハットといえば、カー用品チェーンを展開する東証一部上場企業。目印の黄色いカウボーイハットや、明るいイメージのテレビCM、Jリーグチームのスポンサーについていることもあって、“極右企業”のイメージが薄い人も多いかもしれない。
しかし、イエローハットの創業者で、2008年まで相談役を務めた鍵山秀三郎氏はバリバリの右派、歴史修正主義者である。
鍵山氏といえば、もともと「便所を磨けば心が磨かれる」をモットーにした掃除の啓蒙活動で知られるが、他方で「清掃」と称し、沖縄の基地運動で住民がフェンスに反対の意思表示を行ってきたものを撤去する運動を支援。また、日本会議の関連集会で講演し、フロント団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の代表発起人や、「日本教育再生機構」の顧問も務めるなど、保守・極右陣営に積極的に食い込む存在だ。
しかし、このイエローハット創業者について、とりわけ注目せねばならないのは、報道圧力団体「放送法遵守を求める視聴者の会」との関係だろう。「視聴者の会」といえば、TBS『NEW23』のアンカー・岸井成格に「放送法違反だ」と言いがかりをつける意見広告を産経新聞と読売新聞に出し、結果、岸井氏を番組降板まで追いやった団体。同会は、安倍晋三のヨイショ本『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)でデビューした自称文芸評論家の小川榮太郎事務局長を筆頭とする“安倍応援団”だが、鍵山氏はその「視聴者の会」の「共同呼びかけ人」のひとりとして中心的役割を担っているとみられる。
本サイトは15年11月、「視聴者の会」にメールで質問し、鍵山氏またはイエローハット社が同会に資金を提供した事実があるか、質したことがあった。このとき同会事務局は、「資金提供者に関する詳細はお答えできません」と言葉を濁したのだが、ハッキリと否定しないところを見ると、この報道圧力団体の陰に鍵山氏がいる可能性は、やはり捨てきれない。
現段階でイエローハットという会社じたいに明確な政治性や差別性は見えないので、極右度、影響度ともに★1としたが、創業者・鍵山氏が極右界隈とつながる人物であることは事実。今後の展開には要注意といえよう。
●出光興産
『海賊とよばれた男』では描かれなかった創業者の歴史修正と右翼殺人テロ礼賛
極右度 ★★★★★
影響度 ★★
石油元売り業界第2位の出光興産。業界5位の昭和シェル石油との合併話が出光側の創業家の抵抗で泥沼化しているが、昨年末、その創業者である出光佐三氏(故人)をモデルにした映画『海賊とよばれた男』(原作・百田尚樹)が公開されたことは記憶に新しい。安倍首相も原作『海賊とよばれた男』は愛読書で、元旦には映画も鑑賞しに行ったという。
しかし、この出光興産という企業、百田の小説では“社員への愛情で溢れる愛国企業”というふうに描かれているが、そもそも、出光といえば“定年なし、タイムカードなし、労働組合なし”が有名で、実際は労組をタブー化するブラック企業の典型例と指摘されることも少なくなかった。そして、百田が“憂国の士”として美化する創業者・佐三氏は、実のところ「日本はいかなる場合でも自衛の戦争」と断言する先の戦争の肯定派で、「現在は、憲法をタテにとって、つまらんことばかりをいっておる」「なんといったって、天皇中心の憲法ですよ」と主張する戦前回帰の改憲派(過去記事参照)。さらには、なんと右翼による殺人テロを大絶賛するほどの極右人士であったのだ。
たとえば、佐三氏の四女で映像作家の出光真子氏がこう証言している。真子氏は出光家の強い家父長制のなかで常に父に怯え、学生時代の60年安保のときもデモに参加したことを言えなかったというが、他方で、同時期の浅沼稲次郎刺殺事件というテロについては、父・佐三氏がこう絶賛していたと自伝で綴る。
「一方、同じ年に起こった社会党委員長の浅沼稲次郎が、論壇で右翼の一少年山口二矢に刺殺された事件について、父は犯人の山口二矢をほめたたえた。そのときも、父と私はふたりきりでダイニング・ルームにいた。テーブルの向こうで、父は、私が女なのが残念でしょうがないといった様子で、男だったら彼を見習え、日本にも未だこういう若者がいたのだと、声を震わせている。父がこれほど激して人をほめるのを見るのは、私には珍しかった。
どんな理由があっても、人を殺すのはよくないとこころの中で思ったが、私は黙っていた」(『ホワット・ア・うーまんめいど』岩波書店)
まさに唖然とするほかない。ところが、こうした佐三氏の明確な極右性は『海賊とよばれた男』では完全にネグられ、お国のために身を粉にする熱血経済人に“毒抜き”されていた。しかし、佐三氏の遺志は、現在の出光興産にも脈々と引き継がれており、現在も労組がないばかりか、昭和シェルとの合併騒動では出光創業家が労組の有無を「企業文化の違い」として反対理由に挙げている。ここは、創業者・出光佐三の極端に右翼的なキャラクターを鑑み「極右度」を最大の★5とし、合併騒動の今後を見守っていくことにしよう。
(編集部/後編に続く)
最終更新:2017.11.15 07:22
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