つんく♂「アイドルが恋をしたらすぐ分かる」発言をファンが絶賛! アイドルを所有物扱いする秋元康との違い

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「つんく♂オフィシャルサイト」より


 昨年9月に出版した『だから、生きる。』(新潮社)のなかで、2014年秋にハロー!プロジェクトの総合プロデューサーの職を退いていたことを明かしたつんく♂。

 現在では、喉頭がんによる声帯摘出を経た闘病生活について各メディアでインタビューを受けたり、ハロー!プロジェクト関連の歌手以外にも積極的に曲提供を行うなど精力的に活動を行っている。今年の夏には、つんく♂の作詞に、小室哲哉が作曲という布陣でMay J.に楽曲「Have Dreams!」を提供。これが話題となったのも記憶に新しい。

 そんな彼が、「B.L.T.」(東京ニュース通信社)17年1月号で、Base Ball Bear小出祐介との対談企画に参加。そこで発した「“アイドル”と“恋”」に関するぶっちゃけ話が話題を呼んでいる。

 この対談では、モーニング娘。をはじめとしたアイドルプロデュース業の仕事を振り返るなかで、おもむろにこんな告白をしている。

「ハロー!プロジェクトに関しては音楽プロデュース以上のことをしていたので。それこそ『あの衣装あまり好きじゃないんです』ということから、『あの子と一緒にいるのがしんどいです』という悩みまで聞いていた」
「メンバーに彼氏ができた場合、レコーディングをしているときの距離の置き方で“あれ?”って思ったり(笑)」

 どんなところから「あれ?」と思うのか。つんく♂はこう続ける。

「それまでは学校の先輩が好きとか、アイドルの誰々くんが好きとかそういうのはあったと思うねん。でも、中学生くらいでこの世界に入って、いきなり目線が『つんく♂さん!』っていうふうになる。この人を見ておかないと歌の割合いが少なくなるかもしれない、立ち位置を後ろに下げられちゃうかもしれないって。で、みんなの目線が俺のほうに向く。それは俺も感じてんねん。でも、彼氏ができた瞬間、こっちを見てないねん。目はこっちを見ているで。でも、気持ちがこっちを向いていない」

 そして、まるで彼の書く歌詞の1行のようなこんな言葉を放ってこの話題を締めるのであった。

「わかりやすいよ。初めて恋をした女の子は、その気持ちなんて隠せない。目がキラキラしているから。『今はこの1行の歌詞をもらうよりも、早く帰って電話がしたい』って目をしている」

 この発言が掲載された「B.L.T.」が発売されるや否や、ネット上には微妙な心の機微を読み取るつんく♂の感性に驚く声が溢れた。

〈女目線の歌詞が書ける作詞家は他にもいるけどおっさんなのに目線の高さが中高生女子と同じなのが凄い〉
〈つんく乙女心把握しとんなぁ〉
〈そういう女の子達をみてまた歌詞に対してのインスピレーションが生まれるってことはあるんだろうな〉

 つんく♂の歌詞を読むと思春期女子の淡い心の機微があまりにも具体的に書かれていることから、ネット上ではこれまでも「つんく♂の心のなかには女子中学生が住んでいる」とネタ的に言われ続けてきた。

 この対談でも小出が「つんく♂さんを構成するものとして“妄想力”が大きな要素としてあると思うんです。言い換えれば、ディティールの細かい“豊かすぎる想像力”というか。つんく♂さんが積んでいる妄想エンジンの馬力ってすごいな、と感じます」と語っているが、その機微を読み取る「豊かすぎる想像力」は創作に関わる場面だけでなく、日常生活でも活かされていたようだ。

 しかし、なぜいまになって「“アイドル”と“恋”」に関するこんな過去の裏話をわざわざ暴露する気になったのだろうか。

 実は、今年1月にもつんく♂はインタビューでこんなことを語っていた。

〈まず、自分が高校生のファンだとして、「どんな問題が起こったら、そのアイドルの応援をやめるだろうか」と考えました。メンバーとプロデューサーの距離が近すぎたら、本気でむかつくだろう、もし何か間違いが起こったら発狂するだろう、と思ったので、「モーニング娘。」のシングル3~4枚目までは、テレビの同じ画面には絶対に収まらないようにしていましたね〉(産経新聞1月7日付)

 この発言はファンの間で大反響を呼び、当時本サイトでも記事を配信している。この発言が大きなリアクションを呼んだ理由、それは『だから、生きる。』のなかに、こんなエピソードが載っていたからである。

〈秋元康さんからは「プロデュースは、教え子と結婚してこそ完結だから」みたいなことを言われた〉

 つんく♂本人は秋元康への宣戦布告のようなつもりでこのようなことを話したわけではないだろうが、改めて振り返ると、つんく♂と秋元康とのアイドルへの接し方は対照的だ。

 前述のように、つんく♂は自身がプロデュースする女性アイドルをきちんと観察し、思春期の多感な時期にいる彼女らの細かい感情の機微や特徴を作品に活かそうとする。だが、秋元康はそういったものを一顧だにせず、自分の「オッサン」目線のコンセプトをアイドルに押し付ける。その究極系が、〈女の子は可愛くなきゃね 学生時代はおバカでいい〉〈女の子は恋が仕事よ ママになるまで子供でいい〉といった歌詞で世間から猛反発を受けたHKT48の「アインシュタインよりディアナ・アグロン」であろう。

 実際、つんく♂の歌詞は秋元康的な歌詞とはまったくちがうものだ。それゆえに、つんく♂の歌詞は、朝井リョウや柚木麻子、石田衣良といった芥川賞・直木賞作家から高い評価を得てきた。たとえば、朝井リョウはこのように分析する。

「モーニング娘。の「Give me 愛」には「こんな風に人を スキになるのなんて もっと先だって思ってた」という歌詞があるんですよ。「もっと先だって思ってた」ということは、自分はいつかはアイドルを卒業して恋愛をすることがあると思っていた、ということじゃないですか。あなたに性欲があることはおかしくないよ、あなたが恋愛をすることはおかしくないんだよ、って、つんく♂さんがアイドルの子たちにきちんと伝えているような気がするんですよ」(「本の話WEB」15年5月9日)
「下手な作詞家だと“一生ないと思ってた”とかにすると思う。アイドルには恋愛感情はないってことにしないといけないから。でも、“もっと先だと思ってた”ってことは、いつかはあると思ってたってことですよね。そこにつんく♂さんのアイドル観が出てるなと思って」(『HELLO! PROJECT COMPLETE ALBUM BOOK』音楽出版社)

 アイドルブームはとうに終わり、14年には4つにまで増えたAKB48グループの紅白歌合戦出場枠も今年はついにひとつになった。これからまた、長い「アイドル冬の時代」に突入するのかもしれないが、そんな時期にこそ、真摯なつくり手が生み出した確かな作品に光が当たるはずだ。今後もつんく♂の書く作品が楽しみである。
(新田 樹)

最終更新:2016.12.05 11:07

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