不祥事・トラブルに関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
天皇「生前退位」有識者会議メンバーの宮崎緑に経歴詐称疑惑! そもそもなぜ皇室問題のド素人が選ばれたのか
千葉商科大学HPより
本サイトでは昨日、天皇の「生前退位」の意向に対する、安倍政権の“宮内庁報復人事”の裏側を暴く記事を配信したが、その際、生前退位問題を検討する首相の諮問会議「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(以下、生前退位有識者会議)のメンバーの人選についても厳しく批判した。
すると、早速、このメンバーのひとりに、皇室問題を検討するメンバーとは思えないスキャンダルが浮上した。
その人物とは、“女性キャスターの草分け”として知られる宮崎緑千葉商科大教授。本日発売の「週刊文春」(文藝春秋)10月6日号が、「宮崎緑に『経歴詐称』疑惑」と題する記事を掲載したのだ(外部リンク)。
宮崎氏といえば、1982年、NHKの『ニュースセンター9時』に起用され、“美人女性キャスター”“クールビューティ”として話題に。だが、同番組を6年間勤め、その後90年代にはテレビ朝日『ニュースフロンティア』や『朝まで生テレビ!』に出演していたが、2000年代以降はテレビからめっきり消え、今年8月、相場操縦の疑いで令状が出されていた元夫が逃亡先のタイで逮捕されたときに週刊誌の片隅でその名を見かけたぐらいだった。
そんな宮崎氏は前述の通り、現在、千葉商科大学国際教養学部の教授および同学部長を務めているのだが、「週刊文春」によると、実はその学者としての経歴には重大な“詐称疑惑”があるという。首相官邸のホームページの他、複数のプロフィールによれば、宮崎氏は1988年、東京工業大学で「講師」あるいは「非常勤講師」を勤めていたとされる。ところが、その東工大出身の研究者から「週刊文春」にこんな内部告発が寄せられているのだ。
「九〇年代に彼女が計画理論の分野で有名な故・熊田禎宣教授(当時)の研究室に週一回程度出入りしていたのは確かです。ただ、彼女が講師として教鞭をとっていたということはなかったはずです」(「週刊文春」より)
他にも記事では、別の東工大関係者の、宮崎氏が2000年に熊田教授と同時に東工大から千葉商科大に移籍し助教授になった当時「学術的な実績はほとんどなかった」というコメントや、千葉商科大関係者によるこんなコメントが掲載されている。
「当時、宮崎先生は東工大の非常勤講師を名乗っていました。それについて、熊田先生が『東工大に非常勤講師なんていないんだけどなぁ』と言っていたのを聞いたことがあります」
これはどういうことなのか。「週刊文春」が東工大に問い合わせたところ、その回答は「もう資料が現存していないので確認できない」というもの。さらにこの経歴詐称疑惑について宮崎氏自身に自宅で直撃しているが、直撃の翌日、宮崎氏から「週刊文春」編集部に送られてきた名簿は〈彼女が同大の非常勤講師だったことを証明するものではなかった〉という。
宮崎氏にきちんとこの“経歴詐称疑惑”を説明する必要があるだろう。というのも、宮崎氏は前述のように、生前退位有識者会議のメンバーだからだ。この有識者会議は、政府が政策決定に先立って、その分野で高い識見を有する人々の意見を聞くという目的で開催するものだ。そこで宮崎氏の学者としての経歴の正しさが問われるのは、当然のことだ。
ただ、宮崎氏の有識者会議入りには経歴詐称以前の疑問もある。それは、彼女に皇室制度について意見を述べるだけの知見があるとはとても思えないからだ。千葉商科大ホームページによれば、専攻は国際政治学、政策情報学。ジャーナリストとしての経歴を見ても、皇室問題とほとんど関係がないし、憲法や法律の専門家でもない。歴史学や皇室問題に関する著作も見当たらない(というか、国際政治学に関するまともな著作もほとんどないのだが)。それがなぜ、「生前退位」という前例のない議論をする有識者会議に呼ばれることになったのか。政界関係者がこう解説する。
「宮崎さんは学問的業績やジャーナリストとしての実績はたいしたことがないんですが、政財界の人脈がすごい。例の逮捕された元夫との結婚式には、当時『NC9』のキャスターでありながら、中曽根康弘や宮沢喜一、竹下登、後藤田正晴など政界の大物、他にも当時の東電会長や経団連会長まで招待して『ジャーナリズムの風上にも置けない』『これじゃ、ただのジジ殺し』と顰蹙を買っていたくらいです。しかも、権力者に媚び、意に沿うようなことばかり言うタイプなので、政府の審議会や有識者会議に人数合わせでよく選ばれるんです。安倍首相にもかなり接近しているという話でしたね」
実際、宮崎氏は2013年に、やはり専門外である日本版NSC設置を検討する有識者会議のメンバーになっている。このときの他のメンバーは、先の参院選で自民党から立候補して当選した青山繁晴氏や、“安倍首相の極右思想の指南役”とも言われる中西輝政京都大学名誉教授など、ウルトラ右翼のオトモダチばかりだった。
しかも、安倍政権は、今回の生前退位有識者会議の人選にかなり苦慮していており、宮崎氏のような“ド素人”にまで頼らざるをえない事情があったらしい。
というのも、周知のように、安倍首相の支持基盤である日本会議などの右派は皇室典範改正に強硬に反対をしており、安倍首相も生前退位を一代限りの特措法で対処する方針だからだ。しかし一方、天皇は皇室典範改正によって恒久的な生前退位制度の構築を望んでいる。つまり、今回の有識者会議は、天皇の希望を否定して官邸の言い分を代弁してくれるメンバーを集める必要があった。
だが、実際に人選に入ると、皇室問題や歴史学の専門家からは、ことごとく依頼を拒否されたという。
「保守系の人からもことごとく逃げられてしまったようです。そりゃそうでしょう。歴史的に見ても生前退位はあり得る制度。それを天皇の希望を無下にするようなかたちで、否定できる専門家はそうそういない。まあ、日本会議系の極右の学者なら引き受けたでしょうが、そんな連中を人選したら、今度は世論の反発を招くのは必至。そういう意味では、なんの定見ももたず、政権の希望通りの結論を導いてくれる宮崎さんのような人材はうってつけだったんですよ。女性の意見も聞いたというアリバイづくりにもなりますしね」(ベテラン皇室記者)
とんだ茶番な人選というわけだが、しかし、これは宮崎氏だけではない。他のメンバーを見ても、皇室問題の専門家はまったくおらず、安倍政権の意に沿う発言しかしないような顔ぶれで固められている。
たとえば、座長の今井敬・経団連名誉会長は首相の側近中の側近と言われる今井尚哉政務秘書官の叔父で、安倍首相とも頻繁に会食を重ねている。また、御厨貴東京大学名誉教授は論壇誌に頻繁に登場する保守派論客で、第一次安倍政権での「防衛省改革に関する有識者会議」のメンバー。清家篤慶應義塾長も同じく保守派で、第二次安倍内閣の「社会保障制度改革推進会議」の議長を務めている。イスラムを専門とする歴史学者の山内昌之東大名誉教授は、教育再生実行会議(委員)や国家安全保障局顧問会議(座長)、そして昨年の戦後70年談話有識者会議など、安倍政権による有識者会議の常連メンバーである。
おそらく、この生前退位有識者会議では、議論は形式的なものにとどまり、最終的には官邸のコントロールで、一代限りの特措法へと進むだろう。
改めて指摘しておくが、世論調査では、圧倒的多数の国民が恒久的な退位の制度を求めているという結果が出ている。国民の意思を無視し、なんの専門的知見ももっていない、ましてや経歴詐称疑惑を指摘されるような“御用達有識者”を使ってまで、安倍政権はいったい何を守ろうとしているのか。
少なくとも、それは“皇室の伝統”などとはまったく関係のないグロテスクなシロモノであることは確実だろう。
(編集部)
最終更新:2017.11.24 07:13
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