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広末涼子が「育児放棄バッシング」に大反論! 紗栄子、辻希美、スザンヌら芸能人ママ攻撃にひそむ歪んだ“母性神話”
「FRaU」(講談社)7月号
女性誌「FRaU」(講談社)7月号の広末涼子ロングインタビューが大きな話題になっている。
それは、数々の奇行やスキャンダルが報じられてきた広末が、これまでのプライベートや過去に言及しているからだ。例えば2008年、23歳のときに「デキ婚」したことついて、広末は“確信犯”だったと告白している。
「ホントに、仕事を辞めたくて仕方がなかったです。もちろん結婚なんて許されていない時だったので、そこへの反発は大きかったし、正直、確信犯ですよね。出来ちゃった結婚だと言われたけど、そうじゃないと結婚なんて出来ない状況だった」
デキ婚は事務所からの“縛り”で結婚できなかったための強行突破──。しかし、その結婚もわずか5年で破局。理由は夫だったモデル・岡沢高宏の金銭問題や、また一部では岡沢と関東連合との繋がりも囁かれたが、この時期、広末は自殺さえ考えたことも仄めかしている。
「20代後半に、人生の中で最悪なことが訪れて――。自分の中では天地がひっくり返るくらいショックなことがあって、何を信じていいのか分からなくなってしまった──」
「いつも気が付いたら高いところに行っていて、誰か背中を押してくれないかな――っていう感じだったので」
そんななか、広末がこのインタビューで語気を荒げて主張していることがある。それは週刊誌などで報じられた“育児放棄”への反論だ。
広末は「私に関して世の中に出回っているものの全ては真実なわけではない」と前置きしたうえ、報道をこう否定している。
「育児放棄なんてありえないし、新宿二丁目に通っているとか、誰かのバイクの後ろに乗ってたとか──。その人が私にすごく似てたのか、単なる思い込みなのか、単純にそういう話にしたいだけなのか、いったいなんなんだろう?って」
「作品の打ち上げひとつとっても『夜遅くまでいらっしゃいましたね、お子さんはどうしてるんですか?』って言われる。それはおばあちゃまに来てもらうとかパパがおうちにいてくれるとか、あるでしょ!って(苦笑)。打ち上げに行ったからって飲み歩いてるってことなんですか? それはありがとうとかお疲れ様という気持ちがあってのこと。友達と飲むこともあるし、子供がいるので大体はうちになっちゃうんですけど、それがそんなに非難されること?っていうことだったり」
そして、子どもたちとの関係についてもこう明言していた。
「子供がコンビニで週刊誌を見た時にどう思うかは、考えなくはないです。でも、うちの子がそれを見て、例えば夜遊びだのと書かれていても、夜家にいることは彼らが一番知ってるし、背中を見てるから。そんな記事は信じないから大丈夫って私は思っています」
広末はよほど腹を立てていたのだろう。インタビューはこの育児放棄報道への反論にかなりの誌面が割かれていた。
しかし、広末が怒るのも当然で、実際、彼女はこれまで、理不尽とも思える育児放棄バッシングを受け続けてきた。
最初は05年、岡沢との間に生まれた長男が1歳になったころのことだ。「週刊現代」(講談社)05年5月7日・14日合併号で、広末が新宿・歌舞伎町のホストクラブで泥酔し、育児放棄をしているかのような記事が掲載された。
現夫のキャンドル・ジュンと再婚した後も、育児放棄説が度々話題になった。14年に、広末は「女性セブン」(小学館)3月13日号で俳優・佐藤健との岩盤浴デートが報じられたが、この際も「母親としての自覚がない」と批判が巻き起こり、その後も、街や飲み屋での目撃情報があるたびに、育児放棄を叩かれるという状況が続いた。
しかし、広末はホストクラブでの泥酔と育児放棄を書き立てた「週刊現代」の記事については、訴訟を起こして勝訴しているし、佐藤との岩盤浴についても、不倫関係の有無はともかく、当時、子どもは3歳になっており、家を空けたのはほんの数時間。育児放棄とはなんの関係もない。
にもかかわらず、広末がことあるごとに育児放棄を責め立てられてきたのは、あいかわらずこの社会が「育児は母親がひとりですべきもの」という間違った“母性神話”に支配されているからだろう。
だから、たまたま年に1回か2回、数時間、飲んでいる姿を目撃されただけで、「母親の自覚がない」と非難され、不倫密会スキャンダルが報じられた際も実際はまったく無関係な「育児放棄」と結びつけられてしまう。
実際、こうした育児放棄バッシングを浴びてきたママ芸能人は広末だけではない。
例えば前夫・ダルビッシュ有との間に2児をもうけて離婚した紗栄子も「頻繁に海外に行っている」「子育てを実家の母親に任せて飲み歩いている」などと育児放棄がさんざん噂されたひとりだ。
元モーニング娘。で3人の子をもつママとなった辻希美も、子どもの夜泣きが酷くて近所から児童相談所に通報されたことや、頻繁に更新するブログ内容が“育児放棄”として度々炎上している。
さらに、15年に離婚し実家のある熊本県を拠点に芸能活動をすると発表したスザンヌも、東京で仕事をしているというだけで、「実家の母や妹に育児を丸投げ」「実質的に1歳の息子と別居」などというバッシングを浴びた。他にも、窃盗事件で複数のベビーシッターを雇っていた神田うのや、木下優樹菜、小森純などにもこうした批判が向けられた。
ようするに、働く女性芸能人ママが“独り”で子育てすることなく、実家の母親やベビーシッターにそれを手伝ってもらったり、任せているだけで、“母親としてあるまじき”行為だという攻撃を受けているのだ。なかには「たくさんテレビに出ている」というだけで、「育児放棄」と決めつけているケースまであった。
だが、働く女性、特に時間も不規則な芸能人ママが1人で育児をすべて担うなんてことは現実的に考えて到底不可能だろう。当然、夫や肉親、ベビーシッターにそれを手伝ってもらうことになるが、それがどうして育児放棄などと的外れな批判をされなければいけないのか。
しかも、こうした批判は、なぜか母親に対してのみに向けられ、父親の芸能人に対してこうした声が出ることは皆無である。
結局、これらも前述した「育児は母親がすべき」という社会の価値観から出てきているのだ。
しかし、これらは一方的に刷り込まれた偏見にすぎない。例えばフランスを代表する歴史家のエリザベット・バダンテールは1980年に発表した『母性という神話』(ちくま学芸文庫)で、母性は18世紀ごろにつくられた神話であるとして、こう批判した。
〈女は母親という役割に閉じ込められ、もはや道徳的に非難されることを覚悟しなければ、そこから逃れることはできない〉
〈人はこの母親の任務の偉大さや高尚さをたたえる一方で、それを完璧にこなすことのできない女たちを非難した。責任と罪悪とは紙一重であり、子どもにどんなわずかな問題点があらわれても入れかわるものだった〉
だが、日本社会はこの「育児は母親がすべき」という母性神話の強制力がとてつもなく強く、いまでも「3歳までは母親が常に傍にいないといけない」「24時間密着していることが望ましい」などというまったく科学的根拠のない迷信が平気でまかり通っている。
それはやはり、政府が、長い間「子育ては母親が担うもの」として強制、刷り込みを行ってきたからだ。しかも、現在の安倍政権はその母親への育児押し付けを緩和させるどころか、さらにエスカレートさせる政策を次々と打ち出している。
そもそも少子高齢化が深刻化しつつあった小泉政権下の05年、「子育ては社会のもの」という概念が取り入れられたことがあった。この年の国民生活白書「子育て世代の意識と調査」にはこんな一文が記されている。
〈親世代だけでなく、同世代の友人、あるいは会社の同僚、近隣に住む人々など、社会全体で何らかの子育てに参加する、あるいはそれができる仕組みを構築していくことが望まれる。子育てが家族の責任だけで行われるのではなく、社会全体によって取り組む、『子育ての社会化』が重要〉
しかしこうした「子育ての社会化」理念に逆行し、ストップをかけたのが安倍政権だった。
例えば、「女性の活躍」「1億総活躍社会」を打ち出した安倍政権は「3年育休」なるものをもち出したこともあった。これは「子育ては母親が担うべきもの」「3歳まで母親と過ごすことが大切」とする3歳神話に基づいたものだ。
さらに、子育て支援の充実として、親・子・祖父母の3世代同居に対応するリフォームに所得税減税を打ち出したが、これにしても「子育ては母親や家族がする」というもので、「社会全体で子育て」という理念とは遠く離れたものだった。また、待機児童問題をクローズアップさせた「保育園落ちた日本死ね」問題でも、当初、安倍首相は「匿名である以上、実際起こっているか確認しようがない」などと嘯き、子育て世帯を支援する「子育て給付金」も廃止方針が決定している。
こうした閉塞した現状のはけ口が、噴出する有名芸能人ママに対する育児放棄批判であり、バッシングなのだろう。
しかし、いま、夫婦が子育てを等しく分担、共有し、家族だけでなく、国や自治体、社会全体がそれに協力していくことは世界的な流れであり、少子化を食い止める唯一の方策でもあると考えられている。
“母親への育児を押し付け”を続ける安倍政権に踊らされて不毛で無根拠な著名人“育児放棄”バッシングに耽るより、こうした建設的な政策実現をはかっていくべきだろう。
(伊勢崎馨)
最終更新:2016.06.26 07:03
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