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唖然! 橋下の腰巾着・辛坊治郎が「都構想否決は生活保護受給者のせい」と差別デマ拡散!
「大阪綜合研究所 辛坊治郎」より
今週日曜、住民投票によって否決された「大阪都構想」。大阪がぶっこわされるという最悪のシナリオは免れたが、しかし今度は賛成派たちが露骨な“反対派バッシング”を繰り広げはじめた。その筆頭が、元読売テレビアナウンサーでキャスターの辛坊治郎だ。
辛坊といえば、住民投票前に芸人のたむらけんじが開いた都構想賛成派の勉強会にもゲストとして登場。これまで出演番組を通じて幾度となく橋下徹を持ち上げてきた“橋下派”の代表株である。当然、今回の都構想否決のニュースにも納得がいかないようで、投票翌日の18日、自身が解説を務めるニュース番組『朝生ワイド す・またん!』(読売テレビ)では、「大阪で(投票率)67(%)近いっていうのは圧倒的な高さ」と言った後、「たぶん75まで行ってたら賛成が勝ってるね〜」「あと5%投票率が高けりゃって感じですけどね」と往生際の悪さを見せ、「結果は大阪市民の判断ですからね。大阪市の職員だって大阪市民だから。ね。お前ら投票するなって……うーん微妙なとこだな、そう言うべきかどうかって」などと、“既得権益を守りたい大阪市職員による組織票”の存在を言外に滲ませた。
さらに、今回投票者数より投票数のほうが1、2票増えていた区が3区あったことについて触れ、
「だけどね、これちょっと妙なことになってですね、なんか一部投票に不正が行われたんじゃないかって話があって。途上国の選挙かっていう(笑)。途上国ではよく選挙のたびに不正ってのがあるんですが」
と発言。こうした問題は今回に限らず、過去にちがう選挙でも起こっているし、なおかつ今回はたった1、2票の話で結果に影響しないと判断されている。これをわざわざ辛坊は“途上国のような不正だ”と言い、口にはしないがあたかも反対派側の不正と言わんばかりに取り上げたのだ。
自分の思う通りの結果が出ず、生放送のニュース番組で不満をタラタラと述べて憂さ晴らしをする。これだけでもキャスターの資格はないと断言できるが、問題はこのあと。今回の住民投票では、反対が上回った区と賛成が上回った区が南北でくっきりと分かれたが、それについて辛坊はこのように解説し始めたのだ。
「まあ、西成区なんかは生活保護が極めて多いところということで、まっ、どっちかっていうと大阪でも、うーん、微妙な言い方をしますけれども、弱者と見られる人が多いところは反対が多数になったと」
また、出口調査の結果では70歳以上の男女がともに賛成派よりも反対派が上回っている点を挙げ、「今回、圧倒的にこの結果をもたらしたのはこの層、70歳以上ですから」「大阪のやっぱこれからの世代の人たちはかわいそう」と発言。そのうえでこう言いきったのだ。
「やっぱ高齢者の方で、生活保護受けてて、いまの大阪市のゆるい生活保護基準だから生活保護受けられるけれども、きめ細かい行政で行政単位が小さくなって生活保護受けられなくなっちゃあ困るとか。それからやっぱり大阪って長年、橋下徹が出るまで、市バスとか地下鉄、高齢者がタダだったやつを橋下徹が一部カネ払わなきゃいけなくなって、それだけでも腹立ってんのに、今後さらに市のタダのバス……若干払ってますけど、タダのバスとか地下鉄の切符を取り上げられたらたまんねー!っていう人たちが、もう圧倒的に反対派の方向に舵をきったというのが、結果ですね〜」
そして、「間違いじゃないよな?」と報道局記者に同意を求め、カメラ目線で指し棒を振り回しながら「かならずこう言うとなあ(こういう話をすると)、おかしな反対派からな、おかしなクレームの電話くるんだけど、いいかげんにしろ! お前ら!」と吠えたのだ。
……おいおい、「いいかげんにしろ!」はこっちの台詞だ。未来ある世代は都構想に賛成したのに、「死にかけの老人」や生活保護受給者という“弱者”のせいで否決されてしまった──こんな暴力的で賛成派の一方的な言いがかりを垂れ流して、クレームが来ないほうがおかしいだろうよ。“公平中立”というのなら、これこそ放送法違反ではないのか。
だいたい、辛坊が論拠にしていた出口調査による「年代別・性別」のグラフは正しいものなのか。もし70代と他の世代の賛成・反対の割合を比較するのならば、出口調査に応じた人の世代別数などを鑑みる必要があるが、そうした精査がなされた情報なのかは示されていない。そもそも、これは出口調査の結果をグラフにしたものなのだから、期日前投票の情報が加えられていない。反対派が優勢だった期日前投票の結果をこのグラフに落としこめば、70代以上だけが目立って反対派だったという見え方はしないはずである。
だが、もっとも悪質なのは、生活保護受給者や老人に対する物言いだ。まるで辛坊は生活保護を不正受給したい人間やただでバスに乗りたい(実際はただではないが)人間が反対に回ったから、都構想が否決されたかのようなデマをふりまいているが、それだけでこの数の反対票が集まるわけがないだろう。
都構想については、実現のために初期費用600億円とランニングコスト20億円というバカバカしい数字に疑問をもった人や、地域政策がカジノ構想しかないことへの不信感を抱いた人、効率主義によって歴史ある上方文化を破壊させてはいけないと感じた人など、経済・財政から文化まで、多岐にわたる面から反対の声が起こっていたのだ。
しかも、老人や貧困層が反対に回ったのは、都構想に“弱者切り捨て”という本質があり、それが見抜かれたからだ。都構想が現実化すれば大阪市民に対する行政サービスは著しく低下し、生活保護や介護といった福祉の問題はいま以上に厳しくなるのは明らかだった。
そうした具体的な政策批判には触れず、一面的に老人や生活保護受給者だけを“敵”に仕立てるのは、報道としての悪質さもさることながら、市民を分断させる下劣極まりない行為だ。
実際、前述したたむらけんじとの勉強会の席で、「もし私が生活保護を受けていたら、都構想に反対する。成立したらもらえなくなる可能性も出てくるから」と発言している。ようは、辛坊は生活保護受給者や老人といった弱者を“税金泥棒”よばわりし、そんな“ごくつぶし”によって都構想が邪魔されたと言っているわけだ。
ああ、呆れて開いた口がふさがらない。お調子者の辛坊はすっかり忘れているようだが、多くの人はまだしっかり“あの事故”の話をよく覚えているぞ。そう、いまから2年前の6月、小型ヨットで太平洋横断しようとした辛坊が遭難し、海上自衛隊に救出されたことを。
あの事故が起こったとき、辛坊は大きなひんしゅくを買った。というのも、2004年に発生したイラクの邦人人質事件の際、辛坊は自己責任論をぶっていた張本人。それが、自分の趣味で意気揚々と冒険に出かけて、結果、自衛隊に助けてもらうという失態を演じた。そのため「お前こそ自己責任だろ!」という大きなツッコミが入ったのだ。
辛坊は事故後の会見で、「(救援船が見えたとき)この国の国民であって良かったなと思いました」「正直、今後、どの面下げてという思いはする」としみじみ語っていた。たんなる趣味で出かけていたとしても、国民が危険に晒されているなら国は全力で助ける。これこそが正しい国のありようだし、それは生活困窮者や手助けが必要な老人に対しても同じこと。セーフティネットのありがたさを、辛坊はわかっているはず、いや、よーくわかっていないといけないはずなのだ。それを禊ぎは済んだとばかりに、弱者は自己責任で行政に頼るなと主張するとは、ほんとうに「どの面下げて」である。
それにしても、こうまで卑怯な論法で辛坊が負け惜しみを言いつのるのはなぜか。人の良い関西人は「辛坊さん、よほど大阪の未来を案じてはったんやね」と思っているかもしれないが、それは大間違い。橋下徹との仲を考えれば、橋下が都構想を実現させて国政に乗り出せば、自分も保守論客としてそこに食い込めるとでも考えていたのだろう。
つくづく都構想が否決されてよかったと安堵するが、こうした輩による弱者見殺しの煽りには、今後も注意を向けていく必要がある。何せ、今度は本家の橋下がテレビにガンガン登場して、今回の辛坊と同じような暴論を展開するのは必至だろうから。
(水井多賀子)
最終更新:2015.05.21 11:29
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