「大阪の街場」にこだわってきた名物編集者が分析する維新人気の正体とは?

江 弘毅  わたしが“維新とW選挙の検証本”を編集した理由──「おもろい」維新が大阪の街の「おもろい」を壊す

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大阪人の根を知りつくした維新の悪辣な政治手法にどう対抗していくのか

 メディアやSNSのツボを押さえつつ、自民党よりも自民党的な「どぶ板選挙」をやるのが維新だと吉富氏は言う。維新はメディア使いのうまさと、街場での「顔のつくりかた」のマメさを併せ持つのだ。

  市民にすれば、喩えは悪いかもしれないが、例えば「使わな損やで」とタダの食事券が渡され現場へ行ったところ、店が2軒並んでいる。「どっちで食べようか」と迷う。「あの店、吉本の○×が出てるCMやってる。おもろそうや」とそちらに入る。

 酷いクロス選挙の投票率は、府知事選が49.49%、市長選が52.7%、その2か月後の維新の候補が初当選した堺市長選では40.83%。低い投票率で維新が勝ったのは、この部分も大きいのかもしれない。

 大阪人という「根の部分」を維新は知り抜いている。そこにつけこむ橋下徹氏以来の維新の悪辣さがある。

 その維新的なる政治手法にわれわれはどう対抗していけばいいのか。

明解な答えはないが、とにかく維新的な「分断」のアジェンダに乗せられないこと。都構想に反対だ賛成だという立場や考えを超えて、生身の実生活者同士、“街場での「ツレ」、知り合い”という目線で話し合いを始めること。それが第一歩になるような気がしている。

大阪は大都市、都会だ。都会では人は匿名的存在でやっていけるが、大阪の街場では、店と客、あるいは客同士の双方が実名的存在で、どちらも「地元意識」を共有するコミュニティの一員であるようなことが多い。

大都会のなかで人格的な接触があって知り合いになれる他者の数が、有限と見るのか無限と考えるのか、どちらにブックエンドを置くかで、生活哲理ががらりと変わってくる。

 それは同時に、維新的な「おもろい詐欺」を見破る最大のリテラシーになるのではないか。
(江 弘毅)
 1958年、岸和田市生まれ。編集者/著述家。89年『ミーツ・リージョナル』誌を創刊し、12年間編集長を務める。2006年、編集・出版集団140Bを大阪に立ち上げ、編集責任者。主な著書『街場の大阪論』『飲み食い世界一の大阪』『いっとかなあかん店大阪』『K氏の大阪弁ブンガク論』。

最終更新:2019.07.04 09:14

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