真木よう子出演『焼肉ドラゴン』は反日映画ではない! 監督が「アンチ『ALWAYS 三丁目の夕日』」と語ったその意味

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映画『焼肉ドラゴン』公式サイトより

 真木よう子、大泉洋、井上真央らが出演している現在公開中の映画『焼肉ドラゴン』(鄭義信監督)が、ネトウヨや安倍応援団らから「反日」と攻撃を受けていることを先日お伝えした。

『焼肉ドラゴン』は、1969年の大阪を舞台とした家族ドラマ。伊丹空港(大阪国際空港)近くの集落で焼肉店を営む、父・龍吉(キム・サンホ)、母・英順(イ・ジョンウン)、長女・静花(真木よう子)、次女・梨花(井上真央)、三女・美花(桜庭ななみ)、末っ子の時生(大江晋平)からなる金田一家を中心とした物語だ。劇作家であり『愛を乞う人』や『血と骨』などの映画脚本も手がけ多くの賞を受賞した巨匠である鄭義信が初監督を務めている。

『焼肉ドラゴン』を攻撃しているネトウヨたちは、ただ在日コリアンを描いた映画というだけで「反日」と攻撃しており、そのグロテスクな差別感情には吐き気がする。たしかに『焼肉ドラゴン』は在日コリアン一家が主人公で、差別やいじめを受けるシーンも出てくるが、その主題は社会の片隅に追いやられても生きようとする人間とその家族の絆を描くことであって、ネトウヨたちが言うような「反日」的主張などみじんもない。

 それに、そもそもこの作品の出発点にあったのは日韓友好の思いであり、その両国の狭間にある存在が在日コリアンだった。

『焼肉ドラゴン』は、もともと舞台作品として上演されたものだが、日本の新国立劇場10周年と、韓国の芸術の殿堂(ソウル・アート・センター)20周年を記念して、両劇場が共同制作する舞台として企画された。そこで韓国側の強いリクエストにより作品を手がけることになったのが、在日韓国人の鄭だった。

 映画『焼肉ドラゴン』公式パンフレットのインタビューで鄭義信は「日韓合作ということを考えた時、「自分の出自である在日韓国人についての物語を書こう」とすぐ思い至りました。それも、日韓の狭間で時と共に忘れ去られていくであろう人たちを主軸に捉えようと」と語っているが、それは、ある映画へのアンチテーゼでもあった。

 彼は「『焼肉ドラゴン』は裏『ALWAYS 三丁目の夕日』でもある」と語っている。それはいったいどういうことか。「すばる」(集英社)2008年5月号のインタビューで鄭義信はこのように説明する。

「高度経済成長の時代が美しかったように言われるけれど、キレイごとばかりじゃありませんでしたよと、僕は言いたい(笑)。今回、伊丹空港に隣接する伊丹市の中村地区に取材に行ったのですが、万博のために空港の滑走路を拡張する、その労働者は九州の炭坑から大量に流れ込んでいるんです。ちょうど九州で炭坑が次々と閉鎖された時期なんですね」

『ALWAYS 三丁目の夕日』は05年に公開されヒットした作品。1958年の東京の下町を舞台に、高度経済成長期の日本をノスタルジーたっぷりに描き、多分に美化して映像化した。監督を務めたのは山崎貴。後に『永遠の0』や『海賊とよばれた男』の監督を務め、東京2020開会式・閉会式 4式典総合プランニングチームの一員にも選ばれている人物だ。

『焼肉ドラゴン』は、日本中が高度経済成長の波に乗って激変していくなか、その成長を下支えしたのにも関わらず、虐げられた人々の生活に光を当てている。それは、『ALWAYS 三丁目の夕日』が美化して描いた、書き割りのような「古き良き日本」の世界線では「なかったこと」にされたものだ。

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