内田樹が喝破! 安倍独裁を受容する“株式会社マインド”の蔓延…「実行」「結果」と叫ぶ安倍首相、「独裁で何が悪い?」と冷笑する有権者

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

会社のワンマン経営者のように“独裁”する安倍首相に、抵抗するために

 ここに安倍政治体制における有権者のマインドとの連関を見出すことは飛躍ではない。いうまでもなく、民主主義(民主制)と資本主義市場経済の関係性は政治学の主題のひとつだ。たとえば民主主義の意味を参加(participation)とする政治思想史家のシェルドン・ウォリンは、ロナルド・レーガンの自由化政策を俎上にあげ、合理化を主とした経済観念が国家と結合して優先される体制についてこう論じた。

〈政治性についての沈黙と民主主義にたいするシニシズムは関連している。政治性は、すでに生まれた政治体の形態が要求する諸条件とは相容れない。しかし、この形態は正統性(legitimation)を欠いているため、「われわれ人民」という民主主義の原理が正統性の調達のために厚かましくも利用される。この新しい政治体を「政治経済体制」(political economy)と名づけることができる。この名称の示すのは、政治の限界が、企業体の支配する経済のニーズ、および企業体の指導力と緊密な協働関係において作動する国家組織のニーズによって決定される、一つの秩序体である。〉(『アメリカ憲法の呪縛』みすず書房、原題“THE PRESENCE OF THE PAST”/訳・千葉眞ほか)

 ウォリンによれば、政治経済体制によって社会は経済に吸収され、経済の優位性は〈包括的規模の社会的解釈学の第一原理として機能する〉。そしてこれが個々人にとっても普遍的な解釈上のカテゴリーとして〈個人の生活と公的な生活とを理解し、それについて判断を下し、さらにそれらの問題の本質を規定するためにもちいられる〉という。筆者なりに解釈すれば、そこでは業績主義に似た概念が個人の実存を支え、政治的行為もまたその鋳型に流し込まれる。したがって、民主主義にかなうための熟議が要請されるはずの国会は無用の存在と認識されてしまう。

 話を戻して、安倍首相の所信表明演説である。先に述べたように、安倍首相の言う「実行」はもっぱら「結果を出す」ためにあり、その過程として位置づけられるべき論議は客観的事実として完全に無視されている。とりわけ「実行、実行、実行」と叫んで「総選挙で示された国民の意思」と身勝手に断じているのは勘違い甚だしい。だが、新聞各社の社説は「国会での議論に建設的に臨むべき」「もっと踏み込んだ政策の説明が必要」などと上品ぶるだけだ。

 もはやそんな段階ではないだろう。内田が指摘するように、安倍首相はまさに国家を会社のワンマン経営者のように“独裁”している。所信表明はそれを直裁的にあわらしている。有権者は民主主義を冷笑し、諦めつつある。あえて言うが、「国会の議論など無駄だ」と思わせようとする政治に「国会で建設的に議論せよ」と呼びかけるのは愚かなだけだ。メディアが呼びかけるべきは市民である。「議論を始める」ための政権打倒しかない。

最終更新:2017.11.20 11:18

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

内田樹が喝破! 安倍独裁を受容する“株式会社マインド”の蔓延…「実行」「結果」と叫ぶ安倍首相、「独裁で何が悪い?」と冷笑する有権者のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。内田樹国会安倍晋三宮島みつやの記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 葵つかさが「松潤とは終わった」と
2 れいわから出馬 水道橋博士が主張する「反スラップ訴訟法」の重要性!
3 高市早苗が統一教会問題でも“嘘”、領収書偽造、勝手に収支報告書修正も
4 あのチェーン店の料理がヤバい
5 放送法解釈変更は氷山の一角!安倍官邸は同時期、あの手この手で言論弾圧
6 三浦瑠麗問題に「週刊文春」「週刊新潮」は完全沈黙する理由!
7 古舘伊知郎が激白“テレビは噓ばかり”
8 安倍内閣「日本会議」の目的は徴兵制
9 田母神を担いだ百田、中西の責任
10 安倍政権の「放送法解釈変更」内部文書のリアルすぎる中身!
11 自民党がネトサポに他党叩きを指南
12 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
13 高市早苗と赤旗が「政治資金規正法違反」報道でバトル!
14 辻仁成が告白「彼女に新しい人が…」
15 吉高が“私の裸を見て”と迫った男
16 岸田には安倍が乗り移っている! 政策だけでなく答弁も
17 米イラン緊張のなかダルビッシュが排外主義と戦争反対を表明!
18 貧乏人の努力で教育格差の克服は無理
19 『報ステ』古舘が安倍に最後の反撃!
20 ジャニー喜多川社長の性的虐待問題を一切報じないマスコミ
1放送法解釈変更は氷山の一角!安倍官邸は同時期、あの手この手で言論弾圧
2安倍政権の「放送法解釈変更」内部文書のリアルすぎる中身!
3高市早苗が統一教会問題でも“嘘”、領収書偽造、勝手に収支報告書修正も
マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄