自衛隊日報隠ぺいを知っていたのは稲田防衛相だけじゃない、安倍首相と官邸が指示していた疑惑が浮上

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「日報」は駆けつけ警護を強行したい安倍政権にとって邪魔だった

 この一連の流れだけを見ても、明らかに省内で隠蔽工作があったとしか思えないが、注目すべきは、これが安倍政権の政策遂行と密接に関係していることだ。

 布施氏による開示請求を防衛省が受理したのは昨年10月のことだが、当時の国会では、新安保法に基づく「駆け付け警護」の新任務を自衛隊に付与するかどうかで論戦が行われていた。

 当然、国会では7月のジュバでの大規模戦闘が問題になり、PKO参加5原則の違反も指摘された。だが、稲田防衛相や安倍首相は「戦闘」を「衝突」と言い換えたあげく、「南スーダンは永田町より危険」(安倍首相)などとふざけた答弁を連発。結局、「状況は落ち着いている」とゴリ押しし、11月15日に駆け付け警護の任務付与を閣議決定。新任務を付与した自衛隊部隊の第一弾を新たに南スーダンへ送り出した。これが11月20日のことである。

 そして前述のとおり12月2日、防衛省は「すでに破棄している」との名目で日報の不開示を決定したのだ。どう見ても“駆け付け警護”強行のために都合の悪い情報を握りつぶしたとしか思えない。

 そもそも駆け付け警護とは、自衛隊が現地の武装勢力などから直接攻撃を受けなくとも、国連やNGO関係者が襲撃された際に現場に駆けつけて救助するというもので、武器使用が認められる。これまで、日本政府は9条が禁じる武力行使にあたるとして「駆けつけ警護」を認めてこなかったが、安倍政権は新安保法の成立によってこれを可能とした。

 安倍政権が、南スーダンPKOをこの駆け付け警護の“先例”としたいのは誰の目にも明らかだった。一方、ジュバでは政府軍と対立する反政府軍の戦闘のほか、兵士による一般市民やNGO関係者に対するレイプや略奪が横行しているとの報告が上がっていた。もちろん、こうした状態で政府が駆け付け警護を付与すれば、自衛隊はNGO関係者などの救出に向かうことになる。

 しかし、7月のケースでNGO職員を襲撃し、殺人やレイプ行為を働いたのは南スーダン政府軍の兵士だった。安倍首相は2015年の安保国会で、駆けつけ警護に関し「国家又は国家に準ずる組織が敵対するものとして登場してこないことは明らか」として、9条に抵触しないと説明していたが、それとは裏腹に、自衛隊が「国家又は国家に準ずる組織」と敵対し、武器を使用した戦闘の発生が現実になる可能性が急激に高まったのだ。いうまでもなく違法かつ違憲の疑いが濃厚になった。

 しかし、安倍政権としては、なんとしても駆け付け警護の新任務を付与して安保法の実績をここで作っておきたい。そのためには、7月のジュバで「戦闘」と明記された日報はまさしく“邪魔”な存在に他ならなかった。

 であるからこそ、この日報隠蔽問題は、単に自衛隊内での日報の捜索が杜撰だったという話で終わらないのだ。防衛省が政権を忖度し「戦闘」をなかったことにしようとしたのか。それどころか、官邸、安倍首相が防衛省に指示をした可能性すらある。

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