「稀勢の里に『カエルの楽園』が力を与えた」百田尚樹の自慢は本当か? 新横綱はネトウヨの広告塔に

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 その違和感を共有してもらうために、『カエルの楽園』がどんな小説なのか、改めて簡単に振り返っておこう。

 物語は国を追われた2匹のアマガエルが、「ナパージュ」という国にたどりつくところから始まる。このナパージュに住むのはツチガエル。このツチガエルたちは「一.カエルを信じろ。二.カエルと争うな。三.争うための力を持つな」という「三戒」を守り、何を謝っているのかわからないまま、「謝りソング」というものを歌っていつも謝っている。

 一方、ナパージュの崖の下には「気持ちの悪い沼」があり、そこには「あらゆるカエルを飲みこむ巨大で凶悪な」ウシガエルが住んでいて、ナパージュの土地を自分たちの土地だと言い張り、侵略しようと虎視眈々と狙っているのだが、ナパージュのカエルたちは「三戒」のおかげで平和が守られていると信じている。

 なんのひねりもないのでもうおわかりだと思うが、ナパージュは日本、ツチガエルは日本人。でもって、三戒は憲法9条、謝りソングは自虐史観、凶悪なウシガエルは中国。ようするに、これ、日本の過去の戦争を肯定し、憲法9条改正を扇動する極右プロパガンダ小説なのである。

 実際、その後の展開も笑っちゃうくらい露骨だ。聡明で真実を語る存在として、安倍首相と思しきプロメテウスなるカエルや、百田自身のことらしいハンドレッドなるカエルが登場して、三戒(憲法9条)破棄を主張する。ところが、長老のデイブレイク(どう考えても朝日新聞のことだろう)に影響を受けたツチガエルたちは、これを拒否。その結果、ウシガエル(中国人)によるツチガエル(日本人)の大殺戮がおき、あっという間に国中をウシガエルに占拠され、ナパージュ(日本)は滅亡してしまう。オシマイ。

 その政治的主張の恣意性や小説としての安直さは置いておくとしても、こんな物語を読んで、どうやって「おれも頑張ろう」という気持ちになるのか。仮に稀勢の里が百田と思想が100パーセント一致したネトウヨだったとしても、これを読んで折れた心を立て直せるとは思えない。

 というか、問題はそれ以前だ。前出の共同電によると、稀勢の里が心が折れそうになって百田や池井戸潤の小説を読んだのは2014年初場所休場の後。『カエルの楽園』は2016年2月の出版だから、そもそも心が折れた当時の稀勢の里が読んでいるはずがないのだ。

 にもかかわらず、百田センセイが『カエルの楽園』をもちだしたのは、昨年11月25日付のサンケイスポーツの記事が根拠ではないかと思われる。そこにはこんなくだりがあった。

〈9月の秋場所では3場所連続の綱とりに挑み、10勝に終わって横綱昇進へのチャレンジは白紙に戻った。場所前、1カ月ほど続いた秋巡業中。稀勢の里は複数の本を持参していた。古武術を主とした身体技法の研究家、甲野善紀氏のシリーズ本を3冊、百田尚樹氏の「カエルの楽園」だ。父・萩原貞彦さん(70)が茨城・牛久市の実家に戻った際に持たせたもので「(武道書は)文字通り体の使い方、動きの参考になればと思ってね。(百田氏の本は)自分の置かれた環境をよく考えてほしいと…」という親心があった〉

 こちらは、稀勢の里の父親が証言しているだけなのだが、百田センセイとその信者たちはこの記事と今回の共同電を混同して、いつのまにか、稀勢の里に力を与えたのは『カエルの楽園』だったということにしてしまったのだろう。事実を自分に都合よく平気で捻じ曲げる、この人たちらしい勘違いである。

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