小田原「保護なめんな」ジャンパーは氷山の一角! 安倍政権下で横行する生活保護申請者への差別と辞退強要

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 そして、この「水際作戦」を組織的におこなっていたのが北九州市だ。北九州市では2005年1月に生活保護を5度にわたって申請したものの認められなかった67歳男性が、翌年5月にはやはり生活保護の申請を認められかった56歳男性が餓死する事件が発生。さらに2007年7月にも52歳男性が「オニギリ食べたい」という文章を残して餓死しているのが発見されたが、この男性は生活保護を利用していたが、「辞退届」を書くことを強要されたとみられ、保護を打ち切られていた。

 立て続けに起こった餓死事件の裏にあったもの。それは北九州市の福祉事務所に設けられていた「ノルマ」だ。

 まず、〈北九州市の生活保護行政には「三〇〇億円ルール」と言われる暗黙の取り決め〉があったといい、〈生活保護費が三〇〇億円を下回るように予算の総枠が抑制されていた〉。生活保護利用者数は景気や失業者数に左右されるもので、300億円以下に抑えるためには〈人為的な操作が不可欠〉となる。そこで取られたのが、福祉事務所職員たちの「ノルマ」方式。〈市内のすべての福祉事務所が毎年の年度初めに、申請書の交付枚数制限、受給中の世帯の廃止目標数を具体的に設定し、面接主査とケースワーカーにノルマとして課していました〉というのだ。

 このノルマ制は「ヤミの北九州方式」と呼ばれているが、その結果、引き起こされたのが前述した餓死事件だった。しかし、こうしたノルマ制の「水際作戦」を、よりにもよって厚労省は〈生活保護の「適正化」を成功させた「モデル福祉事務所」として折に触れ称揚〉してきたのである。

 それもそうだろう。事実、「聖域なき構造改革」によって所得格差を拡大させ、貧困を増大させた小泉純一郎首相は、02年度に社会保障予算を3000億円も削減したが、生活保護費もターゲットにし給付の削減をおこなった。これと同時に全国で「水際作戦」が多発し、孤立死や自殺に追い込まれたケースが頻発したのである。これは「行政による殺人」と言うべきものだ。

 しかも、生活保護を受けられずに餓死するという事件が立て続けに起こったというのに、2007年の第一次安倍政権では生活保護基準の見直しを打ち出した。さらに、歩調を合わせるように、メディアでも生活保護の不正受給に対するバッシングが徐々に増えはじめた。小田原市でおぞましいジャンパーがつくられたのは、ちょうどこのころだ。

 そして、生活保護バッシングの決定打となったのが、2012年4月にもちあがった次長課長・河本準一の親族が生活保護を受けていた問題だった。河本のケースは不正受給など違法にあたるものではなく扶養義務の問題だったが、これに自民党の片山さつき議員や世耕弘成議員が噛みつき、メディアに登場しては河本の大バッシングを展開。同年1月には、札幌市で40代の姉妹が生活保護の相談に出向きながらも申請に至らず死亡するという痛ましい事件が起こっていたが、生活保護の重要性が謳われることなく片山の主張と同じようにメディアも「不正受給許すまじ」とバッシングに加担。「生活保護は恥」などという空気を社会につくり出していったのだ。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

小田原「保護なめんな」ジャンパーは氷山の一角! 安倍政権下で横行する生活保護申請者への差別と辞退強要のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。編集部の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄