綾野剛が映画界で強まる自主規制、検閲の内面化を批判!「ここまでできるのかと思った自分が弱体化している」

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「人に影響を与えないんだったら、それは表現じゃないんですよ」
「何か、人に悪い影響がって言われちゃうんですけど、いい影響とか悪い影響って、誰が決めるのみたいなね、ことにもなりますよね」

 とはいえ、表現が世に出るにあたり、社会との関わりのなかである程度の規制と折り合いをつけていかざるを得ない局面もある。では、表現者たちはどう折り合いをつけていくべきなのか。その対処法のひとつを『あなたは自主規制の名のもとに検閲を内面化しますか』(ARTIST’S GUILD+NPO法人芸術公社/torch press)のなかで、現代美術画廊「かんらん舎」オーナーの大谷芳久氏はこう提案する。

「権力を持つあらゆる組織が表現を検閲していることが問題ではないんです。むしろ、検閲があるなら、それをそのまま×××にして出せばいい。黒く塗りつぶされた部分に時代の意思が宿る。言われたまま×をつけて、自分の表現を完徹すればいい。権力側と対話してお互いの妥協点を探るより、すれ違うならすれ違うまま見せればいいんです。でも、その時点で作品の魂は消えてしまっている。ただ、×××は自分から入れたらダメですよ。それこそ、検閲の内面化ですから。権力側に入れさせればいい」

 大阪の指定暴力団・二代目東組二代目清勇会を取材し、暴力団の日常生活をモザイクなしで見せたドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』は話題となったが、その作品を手がけた土方宏史監督も、映画をつくるにあたりまったく同じ抵抗を考えていたと言う。

「実は僕らも、もし作品の一部が失われる可能性に直面したら、そういう見せ方をしようと考えていました。プロデューサーが、「全部真っ黒でやろう」って(笑)。「それを見て、察してください」ということですよね。真っ黒にすることは僕らの自由ですから」(前掲『あなたは自主規制の名のもとに検閲を内面化しますか』より)

 映画、小説、漫画、音楽、美術──すべての表現は庶民が持ちうる権力と戦うための重要な武器である。表現をつくる者たちが自主規制を内面化させれば、その役割を担うことはできなくなってしまう。性や暴力に関する表現をいたずらに規制し、その規制を良しとしてしまうことは、すなわち権力の暴走を招くことをも意味するのである。
(新田 樹)

最終更新:2016.07.27 08:20

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