風俗嬢が体験した東日本大震災と被災地での仕事…癒しを求めてやってくる被災者、お客に救われた風俗嬢

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「つらい状況の中で、私たちを呼ぶ間だけは楽しみたいという人が多いと思います」

 これはチャコさんの感想だけではない。同じデリヘルで働く21歳のラブさんも多くの客から、奥さんを亡くした、家や車を流された、そんな話を数多く聞いたという。こうした男性の口から出て来る言葉が「癒やし」だった。

「みんな癒やしを求めてきましたね。お客さんの口から『癒やされたい』とか『心を落ち着かせたい』という言葉が出ていました。だから私もそういう人たちを癒やしてあげたいなって……。髪を洗ってほしいと言われて、洗ってあげたりとかもしましたね」

 当時、彼女たちは“抜く”行為よりも「癒やし」に専念した。それは話を聞く、肩を揉む、髪や全身を洗う。性的サービスではなく一種のセラピーとしての役割を求められ、それに応じていたのだ。もともとこうした風俗の世界では客と女性は自分たちの素性や背景を隠す“フィクション”の関係が多い。しかし震災という未曾有の事態を前に、風俗の世界ではむしろリアルな関係性が存在したようだ。

 だが、時間が経つにつれ男性側のデリヘルを呼ぶ理由も変化していったという。

「最近は仮設住宅に住んでいるお客さんが多いんですね。そこで聞いたのは、仮設って物音がすごく響くらしいんです。それで子供とかが隣の部屋にいるから奥さんとエッチができなくて、セックスレスになっちゃう人も多いみたいなんですよ。だから欲求不満になって、やって来たという話をけっこう聞きました」

 避難所から仮設へ。こうした通常、語られることのない“不便”が存在することも風俗嬢の目を通してならではのエピソードだ。しかし一方の妻の側にもそれ以上の様々な不満があることを思えば、なんとも切ないエピソードでもある。

 とはいえ、デリヘル嬢である彼女たちもまた“被災者”だ。前出のチャコさんも震災から1年半ほど経った頃、自律神経失調症になってしまったという。

「つらくなってきちゃったんですよ。毎日毎日、やって来るお客さんの被災した話を耳にするでしょ。それが、すごく重く感じるようになっちゃって……。(略)自分の心の負担というか……。耳にする話がみんな重いんです。あまりそれを背負いたくないというか。聞いている自分もガクンときちゃうんです」

 だが、チャコさんとは真逆に仕事に“救われた”“癒やされた”と語るデリヘル嬢もいる。それが44歳で夫と3人の子供を持つユキコさんだ。ユキコさんは津波で両親を亡くしたが、しかし震災から2カ月後の5月には仕事に復帰した。当時父親の遺体は見つかったが母親は見つからず、遺体安置所巡りをしていた段階だった。

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