「軽減税率で消費税ネコババ増」は嘘! 現実に起きるのは増税分を価格転嫁できない零細業者の破綻、税金滞納だ

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『現代財政を学ぶ』(池上岳彦・編/有斐閣)

 消費税の軽減税率をめぐる零細業者の「益税」バッシングキャンペーンが始まった。

「益税」とは消費者が支払った消費税分の一部が政府に納税されずに事業者の手元に残る問題のことで、課税売上高が1千万円以下の零細事業者向けの特例措置「事業者免税点制度」(客から預かった消費税を税務署に納めなくてもよい)と、課税売上高が5千万円以下の事業者向けの「簡易課税制度」(業種ごとに異なる、実態より高いみなし仕入れ率で納税額を計算できるため、受け取った消費税と実際に払った消費税の差額である益税が増えるとされる)がある。

「軽減税率を導入すると、益税が大きくなっていくことは間違いない」と27日に語ったのは宮沢洋一自民党税制調査会長。1カ月ぶりに再開した与党税制協議会後のことだ(日本経済新聞29日付「軽減税率、『益税』膨張に懸念 現状でも5000億円」)。

 同記事では、「鈴木善充近畿大講師の推計によると、益税の規模は総額で約5千億円。消費税率1%分の税収2.7兆円の2割弱に相当する」というもので、現行制度のまま消費税率を10%に引き上げると、「消費者から受け取る税金が増え益税が増えやすくなるので不正が増えると懸念される」というのだ。

 しかも、軽減税率を入れた場合には、「8%の軽減税率で仕入れた商品を10%の標準税率で仕入れたことにするケースも増えそうだ。仕入れ時にたくさん消費税を払ったことにした方が、益税が増えるためだ。税率が上がり、品目によって税率が変わると益税の規模は膨らむ」とする。

 消費税増税が議論されるたびにこの零細業者の「益税」問題が取りざたされ、「我々の支払った消費税が業者のふところに消えていくネコババは許せない!」とばかりのバッシングに事業者はさらされる。こうして消費税増税をめぐる不満は本来向けられるべき財務省ではなく、事業者に向けられるのだ。

 たしかに、事業者が、消費者の支払った消費税をネコババするならば由々しき事態だが、現状は、事業者は消費者に充分に消費税を請求(転嫁)できていないのだ。益税の反対、「損税」の問題だ。

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