安保法制めぐりジブリ高畑勲監督が静かに警告「日本人の体質は戦前から何も変わっていない」

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 日本の戦後70年は、直接的に戦争をせず、人ひとり殺すことも、また、殺されることもなかった。それは憲法9条の“不戦の縛り”が、われわれに平和の道を模索することを止めさせなかったからだ。もちろん、それは決して簡単な道ではなかった。様々な外交努力が重ねられてきたし、沖縄の基地問題のように犠牲も大きい。しかし、それでも9条が、戦争という最後の手段に打って出ることを食い止めた。“戦争ができない”からこそ、日本は知恵を振り絞りながら、生きて行くしかない。そしてその知恵は、かならず、われわれに備わっている。そう、高畑監督は言うのである。

 だから彼は行動し続けるのだろう。先日は学生が主催した渋谷でのデモに夫婦で参加したという。一般参加者に混じってだ。自分が現地へ行けないときには、せめてメッセージを送る。決して派手なことではない。過激でもない。だが、高畑監督は続ける。それは、自らの頭で考えることを止めないための「憲法9条の縛り」の実践、そのものだ。

 毎日新聞が今月4、5日に実施した世論調査では、ついに安倍政権への不支持(43%)が支持(42%)を上回ったが、高畑監督が釘をさすように、この国は、半歩でも戦争に足を踏み込んでしまったら、ズルズルと雪崩れ込んでしまうだろう。流されやすいわれわれの心の防波堤となりえるのは、憲法9条だけだ。

 一説では来夏の参院選後、与党は憲法改正の国民投票に踏み切ると言われている。もし9条が骨抜きにされてしまったら──そのときは、国民自らが思考停止状態に陥り、一直線に戦争へ向かっていくことになる。そして、その日は着々と近づいてきている。高畑監督の言葉を、胸に刻むべきだ。

「いま、9条は背水の陣です。戦力の不保持と交戦権の否定。戦後まもなくに、前者はなくなってしまった。はっきりさせておいたほうがいい。9条を守れと言っているわれわれ自身だって、あっという間に変わってしまったのですから」
(梶田陽介)

最終更新:2015.07.11 12:27

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