売春、シニア婚活パーティ、ストーカー…年老いても“性”に振り回される高齢者の悲哀

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 その気はないと丁重に断ったうえ、会うのは今日で最後だと告げたにもかかわらず、「〈今週末に箱根までドライブはいかがですか?〉〈○○のコンサートをご一緒できればと思います〉など、1〜3日おきにお誘いメールが来る」事態に。“迷惑で気持ちが悪い”と、はっきりと断ると「元気で長生きの秘訣はね、物事を自分の都合のいいように解釈すること」とまったく懲りた様子がない。  3人目のCさん(74歳)は作者の取材時、賃貸アパートで20年近く一人暮らしをしており「『来客は久しぶり』と、押し入れから防虫剤の臭いのする客用座布団を取り出して勧めて」きた。早い昼食をごちそうになりバス停まで見送ってもらったがその翌日から電話攻撃が始まった。3日目からは1日に5回以上、電話が鳴るように。 「とりあえず出ると、とりとめもない話を一方的に続けられる。途中で遮って『忙しいし、もう話す事もない』と告げると、『迷惑かけちゃったね、ごめんね』と言って切るのだが、ホッとしたのもつかの間、30分〜数時間後に再びかけてきては、『どうしてるかな、と思って』と続く」……完璧にストーカーと化してしまったのだ。  留守電にも「一段落したら電話してくださ〜い。待ってま〜す」と何度も吹き込まれるように。作者は意を決して「もう二度とかけてこないでほしい」と強い調子で通告し、翌日から電話を不通状態にした。そして、4日間の海外滞在から戻ると……なんと「留守電に50件を超す“声”が吹き込まれていた」という。  人間は老いて生殖能力がなくなっても、肌の触れ合いなどのコミュニケーションの一環として性的欲求が存在し続けるという。「老いて心は寂しさで満たされ、体は性に飢える一方であれば、『生涯現役』であり続けるのは苦行の道に他ならない」と作者は憂う。  しかし、こうした状況に陥っているのは、もっぱら男性たちなのだ。仕事をリタイアすることで、社会との関わりが極端に少なくなり、配偶者に先立たれたり離別されれば、孤独はいっそう強まる。体は老いてゆくのに性的欲求は残り続けていくのであれば、それが充足されない渇望も日々大きくなり、現実と理想のギャップは開いてゆくばかりだ。  対する女性は、配偶者の離別や介護などをきっかけとして、現実に女を取り戻し、どんどん前向きになっていくケースも少なくない。その様子は、長年、夫と家庭を支え、抑圧されてきた女たちの反乱のようにも見えてしまうのである。 (高橋ユキ)

最終更新:2016.08.05 07:01

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