イスラム国の人質殺害画像を見せてはいけないのか? 戦争の「死体」が持つ意味を考える

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 そもそも、こうした“残酷是非論争”や、とりわけ否定派による“トラウマ忌避論”はかねてからあったものだ。

 たとえば一昨年、広島県の平和記念資料館は、被爆者を再現した等身大人形を撤去する方針を打ち出した。この人形は原爆投下直後の被爆者の姿を表したもので、全身に大やけどを負い、ただれた皮膚を腕からぶら下げて歩く様子などが描かれており、見学者に対し、視覚的に強いインパクトを与えるものだった。

 広島市側はホームページ上で、「凄惨な被爆の惨状を伝える資料については基本的にありのままで見ていただくべきという方針の下、この度被爆再現人形を撤去することとしたものであり、見た目が恐ろしい、怖いなどの残虐な印象を与えることなどを懸念して撤去するものではありません」「被爆再現人形に対して「原爆被害の凄惨な情景はこんなものではなかった。もっと悲惨だった」といったご意見もあります。展示をご覧になられる方の見方によっては、原爆被害の実態を実際よりも軽く受け止められかねません」としているが、市民からの展示継続を求める声は根強い。

 また、マンガ『はだしのゲン』(以下、『ゲン』)の閲覧制限問題も記憶にあたらしいところだ。これは、2012年に島根県の松江市教育委員会が、「小中学生には描写が過激すぎる」という理由で、市内の小中学校に対して『ゲン』の閲覧・貸し出し制限を要請し、各学校側が応じたという問題である。これに対しても、市民から処置をやめるよう求める声や署名などが殺到し、最終的に、市教育委員会は制限を撤廃した。

 この問題には別に歴史認識に関するプロパガンダが関係してくるのだが、もっとも『ゲン』に関しては、「原爆投下直後などの描写が残酷すぎて教育上よくない」というクレームが出版元などに寄せられることはそれまでもあったようだ。特に、平和教育の一環で実施されることのあった映画版は、その強烈さゆえに、視聴後に気分が悪くなる、夜に眠れなくなるといった児童もあらわれたという。

 だが、自身も被爆者である『ゲン』の作者・中沢啓治は、自著『はだしのゲン自伝』(教育史料出版会)のなかでこう書いている。少し長いが引用しよう。

〈ある会合で漫画家数名と一緒になった。そのなかの一人A漫画家が、私に「原爆漫画をやめろ」と言った。「子どもには残酷で刺激が強すぎる! 情操によくないっ!」と言うのだ。「子どもには夢を与える漫画でなくてはならない!」と言うのだ。(略)私はあ然として、こんなくだらん漫画家とつきあえるかとヘドが出た。
 この世の中に、童話に出てくるようなメルヘンの甘い世界がどこにあるかっ。現実の厳しさを隠し、戦争や原爆を甘い糖衣で包んで、子どもに見せれば、「戦争と原爆はこんなものか」と甘く考えてなめてしまうのだ。私は、そんな伝え方をする作家に腹が立った。目には目をなのだ。原爆の残酷な場面を見て、「怖いっ!」「気持ちが悪いっ!」「二度と見たくないっ!」と言って泣く子が、日本中に増えてくれたら本当によいことだと私は願っている。「戦争」「原爆」という文字や言葉を見ただけで拒否反応を示す子が増えて、二度と私たちのような体験をする世の中にしないでくれと願っている。ひとたび戦争となったり、原爆が投下されたら、芸術ぶって、メルヘンがどうとか言っている状況などあると思っているのか。一瞬にしてすべて消されるのだ。〉

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