橋本愛がロマンポルノにハマっていた!新橋のオヤジと肩を並べて…

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 実際、公開当時も本作は高く評価され、74年の「映画芸術」でその年のベストテンで3位に輝き、「キネマ旬報」でも19位にランクイン。監督を務めた田中登は次作で宮下順子主演の『実録・阿部定』でも、「映画芸術」2位、「キネマ旬報」10位を獲得している。『日活ロマンポルノ全史』(松島利行/講談社)によれば、この『実録・阿部定』を映画評論家の松田政男は「バタイユふうに言うならば“死にまで至る生の賞揚”にひたすら没入しつづけるのみ」と評しているが、日活ロマンポルノはたんなるポルノではなく、セックスという営みを通して人間の生や業をじつに映画的に表現してきたのだ。また、日活ロマンポルノやピンク映画は、名匠と称えられる神代辰巳をはじめ、相米慎二、森田芳光、現在も活躍する周防正行、滝田洋二郎といった監督を生み出し、日本映画界の大きな活力となった。

 もちろん、そこには日活ロマンポルノ全盛期だった70年代という時代がはらんでいた空気も大きく関わっていた。映画界のみならず、演劇界では唐十郎の「状況劇場」や寺山修司の「天井桟敷」などのアングラ演劇が小劇場ブームを起こすなど、“新しい表現”を求める気運は高かった。とくにロマンポルノは警視庁からの摘発も受けたが、前出の『日活ロマンポルノ史』によると、「摘発を受けて逆に元気づいた」。50年代末からの学生運動にはじまり、「管理されせばめられていく空気に対する反発はさまざまにくすぶり続け」ていたからだ。

 他方、ロマンポルノに出演する女優は、「新しいタイプの女優の先陣を切った」ともいえる。たとえば、橋本も好きな宮下順子は、高校時代からジャズ喫茶に入り浸る“アングラ女子”だったといい、いまも名バイプレーヤーとして映画やドラマで活躍中の伊佐山ひろ子は「取材をすっぽかしたりする気まぐれ、大胆、率直な言動は、因習に縛られた映画界、芸能界をあざ笑うかのようだった」という。これは、当時、ロマンポルノで活躍した監督たちの映画に出演していた桃井かおりや秋吉久美子にも当てはまる。彼女たちは「ときに奇矯な、物怖じしない歯に衣着せぬ発言で話題をさらった」というが、マスコミに“不機嫌女優”などと書き立てられることもある橋本にとっては、こうした先輩たちの自由さに憧れもあるのかもしれない。

 橋本はロマンポルノ好きを公言した際に、「生活から文化もロマンも無くなったらもうテレビのニュースしか残らないよ、守っていかなきゃ~」と書いている。クールに見えて、その実、名画座でおじさんたちと肩を並べてロマンポルノの名作を鑑賞しつづけたという橋本の表現への貪欲さは、女優としてはすばらしい姿勢。ぜひ先輩たちを見習って、脱ぎっぷりのいい、器の大きい女優になってほしいとも思うが……そのあたりはどうなのか、今後も楽しみだ。
(サニーうどん)

最終更新:2016.08.05 06:07

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