ヘイトスピーチ法規制で“反日”取締まり!? 安倍政権の危険な本音

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 また、50年代に失業者が増加し、非白人移民労働者への暴行や暴言が多発したことをうけ制定された「1965年人種関係法」は、差別の禁止条項を含んでいたが、その数少ない有罪例のうち2件は、黒人解放運動の指導者など非白人の活動家であった。

 日本と同様に第二次世界大戦の敗戦国であり、他民族への大規模迫害という国家的犯罪の過去を持つドイツでは、ホロコーストの事実を公然と否定したり、無害化した場合などに罰せられる「ホロコースト否定罪」の制定など、ヘイトスピーチに対する刑事規制法は表現の自由を相当に制限するほど厳格なものとなっている。

 これは極右政治家の発言などに適用されるなど、ある程度の抑制効果をあげているというが、しかし、濫用が指摘される事例もやはり存在する。91年の湾岸戦争のさなか、平和運動家が、自身が所有する車に「兵士は人殺しだ」という警句を貼ったことを理由に、「他人の人間の尊厳を攻撃する行為」を犯罪とする「民衆煽動罪」で起訴された。この警句は、ナチスを批判していたドイツ生まれのユダヤ人作家、クルト・トゥホルスキーの文章からの引用であった。結果的には「兵士は人殺しだ」との表現はこれに該当しないとして無罪になったものの、「ドイツ連邦軍兵士は人殺しだ」という表現であれば「民衆煽動罪」にあたるという解釈が提示されたという。

 ちなみに、師岡弁護士は悪質なヘイトスピーチには法規制が必要であるという立場だが、それでもこうした拡大解釈の危険性があることは認めている。いずれにしても、欧州ですらこういう言論弾圧に使われているわけだから、表現の自由に関する意識の低い日本ではなおさらだろう。

 実際、与党内では、今回の法規制の検討過程で早くも、そうした動きが出てきている。8月28日、自民党の「ヘイトスピーチ対策等に関する検討プロジェクトチーム」が初会合を開いたが、その際、高市早苗政調会長が国会デモの規制の必要性を主張したのである。

 国会周辺では集団的自衛権反対や反原発デモなどの抗議活動が頻繁に行われているが、高市政調会長はこれに対して「仕事にならない状況がある。仕事ができる環境を確保しなければいけない。批判を恐れず、議論を進める」と述べ、特定の場所での大音量の街宣を制限する静穏保持法の運用を検証するというのだ。ヘイトスピーチとはなんの関係もない政権批判の法規制が最初に議論されるという有様なのである。

 高市氏の発言にはさすがに批判の声が一斉に上がり、極右の政調会長のこうした妄言がそのまま通るとは思えないが、しかし、彼らがこの法律を拡大解釈の可能なものにしていこうと考えているのは間違いない。

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