航空機を家で作れ!ブラウスを兵器に!70年前の戦争プロモがアホすぎる

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 さらには夏の恒例イベントである盆踊りも、戦争を鼓舞する場と化す。その一例が、昭和18年に大東亜レコードから発売された「決戦盆踊り」なるレコードである。──“決戦”という切羽詰まった言葉と、まさかの“盆踊り”が組み合わさることで生まれる、この予想外の間抜け感。一体どんな歌詞で、どんな曲調だったのかが大いに気になるが、著者もほうぼうを探したものの見つけることができなかったという。ただ、作詞の江崎小秋は「児童の情操教育を阻害している軍歌優先の学校教育の偏狭さに対する改革のため」、昭和2年に「日本仏教童謡協会」なるものを設立した歌人だったそう。なのに、なぜ戦争ステマに手を貸すことになったのだろうか……。ちなみに、このレコードの“B面”は、「働け働け」。A面に相反して、ずっしりと気を重くさせるタイトルである。

 民間がこれほどに戦争に一生懸命だったのだから、御上たる国の方針は推して知るべし。そもそも国民が戦争まっしぐらに駆り立てられたのも、国が打ち出した戦意高揚のための政策や、激しい言論統制と敵愾心を駆り立てる情報操作、そして苛烈な弾圧があったためだ。だが、国の施策には、全国民総動員で毎朝ラジオ体操をやらせたり、正座の仕方から服の脱ぎ方、道の歩き方まで事細かに指導したりと、無駄な労力としか言いようがないものが数限りない。それでも、国民一丸を迫られ、生活のなかで士気を向上するもの・こと以外は排除される。一丸になることとは、すなわち、個人が幸福を追求することが許されない状態を指すのだ。

 戦後69年目を生きる現代のわたしたちからすれば、戦時下のこうした状況は「とほほ」のオンパレードである。しかし、著者の早川氏が指摘するように、これらは「私たちの近い未来に訪れるかも知れない暗黒郷の想像図」かもしれない。いや、想像図どころか、いま日本で進行する情況とも重ならないだろうか。戦争を夢見る首相に、人が人を殺し合うという惨状への想像力ももたずにただ憧れを膨らませるネトウヨたち、権力の監視という使命さえ果たさず官製情報を垂れ流すメディア……。いつなんどき、先の戦争のように恐ろしい時局を迎えても、なんら不思議ではないのだ。

 そのときが来たとき、わたしたちはもう「とほほ」などとお気楽な言葉をつぶやくことはできないだろう。
(田岡 尼)

最終更新:2014.08.16 02:12

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