神田沙也加“リア充なのにヲタアピール”に疑問の声

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 では、やはり、リア充である沙也加のヲタアピールは“営業”なのだろうか。 
 
『文化系女子という生き方 〜「ポスト恋愛時代宣言」! 〜』(湯山玲子/大和書房)では、“オタクとリアルは両立できる”と主張している。たしかに、オタクというと恋愛の外側にいる人というイメージが一般的だ。年頃になっても女盛りでもおしゃれせず、家で本を読んだり、DVDばかり観ていたり、アイドルを追いかけ、演劇を年間何十本も観ているオタク女子がモテるはずがないと思われている。実際、AKB48の渡辺麻友をはじめ清純をウリにするアイドルの場合、「二次元好き=処女」とファンを安心させ、ヲタアピールが処女アピールとして機能していることも少なくない。

 しかし、同書によると、草食系男子の登場で彼女たちの立場も変わってきているのだという。他者とのコミュニケーションが大の苦手で、傷つけ合うことがない仲間を求めている草食文化系男子にとって、女らしさ全開に可愛くしている人には、「沈黙の艦隊ぐらいの恐ろしさ」があるのだ。その点、「私も~が好きで、その世界の住人だよ」と共通の知識を交換したり、会話できるオタク女子は、それだけで他の女子とは違う特別な存在になれる。

 たとえば、アイドルオタクの夫とフィギュアの追っかけをしている妻、部屋にこもってパソコンにふける夫と乙女ゲーにハマる妻のように、興味のあるものが違っても、お互いに「オタクとしての勘所」はわかるので、ストレスのない共存共栄ができるかもしれない。

 さらに湯山は、オタク女子のなかでも、腐女子とリア充を両立させる生き方を推奨している。ファンタジーに生きる腐女子はオタクのなかでもとくに恋愛に縁遠そうなイメージだが、湯山に言わせれば“腐女子がBLというファンタジー世界の男を受け入れているから”こそ、リアルと両立が可能なのだという。男性にとって、エロ本やAV、ネットの無料動画など、自分の性的妄想の女と現実の女性が両立するのは当たり前のことだった。しかし、多くの女性はそこを混同してしまいがち。それが、ファンタジー世界の男を受け入れている腐女子なら、あとは現実の男性に目を向けるだけでいいのだ。妄想ファンタジーでは「物語と設定に我を忘れる快感」、現実のほうは「自分の予測と違った、それ以上のリアルな現実に出会い、現実が書き換わっていく喜び」を得ることができる。リアルの男性に妄想を重ねて幻滅するのではなく、まったくの別物としてそれぞれを楽しんでみること。この“別腹感”を両方味わえる素質が、腐女子には備わっているのだ。この“別腹感”を味わう素質は、乙女ゲーやアニメにハマる神田にも多いに当てはまっていることだろう。

 だから、神田沙也加に言いたい。ヲタアピールはもう古い!と。そんなのは凡百のアイドルに任せておいて、ヲタとリアル恋愛の両立をこそアピールしてほしい。オタク趣味がモテないことの代替機能のように捉えられ、逆にヲタが恋愛すると裏切り者と言われたり、そんな古典的なオタク像をぶち破り、いっそ“ビッチでオタク”という全く新しいオタク像を打ち出していってはどうか。
 
 最初は「オタクのくせにビッチ」などと罵られるかもしれないが、母・松田聖子が日本で初めてママとアイドルを両立させ結婚も仕事も浮気も貪欲に手に入れてゆく様にしだいに女性たちが共感していったように、リアルとオタクの間で揺れるオタクたちの支持がより得られるのではないだろうか。
(田口いなす)

最終更新:2018.10.18 04:14

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