遺言は「国際結婚だけはするな」…『マッサン』が描かない日本の真実

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 アメリカにも日本人に対する差別がある。そこから逃れるためにレオニーはイサムを「日本人として育てたい」と考え、日本に渡った。だが、〈血を絶対とする日本という社会〉は、イサムを受け入れなかった。結果、イサムが13歳のときにレオニーは彼をアメリカへ帰すことになる。イサムは、こうも語っている。

〈ぼくは、母の想像力の落とし子なのかもしれない。母は自分が感動した日本美をぼくに伝えようとした。そのなかでも、ぼくが母からしっかりと受け継いだのが、日本庭園への憧憬である〉

 イサム・ノグチの作品を評するとき、必ずといっていいほど「日本古来の美意識」という言葉が登場する。たしかに彼の作品にはそうしたものに裏打ちされた美しさを感じさせるが、しかし、日本とアメリカというふたつの祖国に引き裂かれてきた彼の足跡を辿ると、複雑な思いにかられる。そして、彼が受けた差別は、はたしてこの国からなくなったのだろうか、とも。

『マッサン』ではこれまで、エリーが日本で出会いに恵まれ、いきいきと暮らすようすが描かれてきたが、ドラマにはなっていない苦労がきっとあったはずだ。来週の放送はそうした描写も出てくると思われるが、排他的な考えから生まれる差別がまだこの社会に根強く残っている、その現実についても、考える機会になることを祈りたい。
(田岡 尼)

最終更新:2017.12.13 09:25

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

イサム・ノグチ 宿命の越境者 上

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

遺言は「国際結婚だけはするな」…『マッサン』が描かない日本の真実のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。NHKマッサン外国人朝ドラ田岡 尼の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄