『嫌われる勇気』を読んで考えた「自己啓発を捨てる勇気」

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『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)

 心理学者アドラーの思想を解説した『嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え』(岸見一郎、古賀史健/ダイヤモンド社)がバカ売れしているという。昨年末の刊行以来すでに20万部を超えるベストセラーになっているそうだ。出版業界の低迷が叫ばれる昨今、そうした中では大ヒットの数字である。こんなに売れているなら乗るしかない、というわけで、さっそく私も読んでみた。

 オーストリア出身の精神科医・心理学者アルフレッド・アドラー。フロイト、ユングと並んで現代心理学の基礎を築いた三大巨匠の一人と目されるにもかかわらず、日本ではこれまで無名といっていい存在だった。まずはこの巨匠の名が広く知られるようになったことを喜びたい。

 では、本の内容はどうか。これが思った以上によく出来ている。売れるのも納得だ。アドラーの思想には、人間心理についての常識を逆なでするようなところがある。象徴的なのは「トラウマ」をいっさい認めない点だ。たとえば、友人が引きこもりになったとする。私たちは普通それには何かしらの原因があると考える。他人から受けたいじめのせいで外に出られなくなったのだ、という具合に。でもアドラーが言うことは逆だ。「不安だから外に出られない」のではなく「外に出たくないから不安をつくりだしている」と言うのである。引きこもりはたしかに辛いかもしれないが、それによって彼は何かしらの利益、たとえば身の安全や親からの注目といった利益も引き出しているのだ。このように「過去の原因」ではなく「いまの目的」を考えるのがアドラー心理学だ(この考えは「目的論」と呼ばれる)。本書はこのような一見非常識的とも思えるアドラーの思想を生き生きと伝えることに成功している。

 ただ、本書が売れている背景を想像してみると、なんともやるせない気持ちになってくるのである。それは、私たちの自己啓発書の消費の仕方が、悲しくなるほどアドラーの教えと乖離しているからだ。

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嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え

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