読売新聞「菅首相の言い間違いは疲労のせい」報道は安倍政権末期にもやった批判そらす官邸の作戦! ネットでは早速、同情論が

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読売新聞が報じた”疲労のせい”報道


「首相の疲労蓄積?不安視する声」

 1月14日夜、ヤフートピックスにこんな記事が掲載されて話題になっている。配信したのは政権御用メディアの読売新聞。大元の記事では、「かみ合わない質疑・言い間違い続出…会食自粛の首相、ストレス蓄積?」というタイトルがつけられ、菅義偉首相の会見やメディア出演時の言動が「ストレスや疲労の蓄積」のせいだと解説されている。

〈政府・与党内で、菅首相の疲労とストレスの蓄積を不安視する声が広がっている。重要案件での言い間違いが散見されるためだ。新型コロナウイルス対応で年末年始も休みなく公務をこなし、日課としていたホテルでの朝食も自粛を強いられていることが影響しているとの見方が出ている。〉

〈言い間違いが相次ぐ理由について、首相周辺は「体力的には問題ないが、ストレスがたまっている」と解説する。
 首相の1日の行動を記録した読売新聞の「菅首相の一日」によると、昨年9月の就任以来、首相は1日も完全休養に充てることなく公務をこなしている〉

 この解説、いくらなんでも無理がありすぎるだろう。そもそも、菅首相が会見やテレビ出演でやらかしているのはただの「言い間違い」ではない。

 コロナ感染拡大という世界的危機にあって、緊急事態宣言という重要な政策発表の際に対象となる県名を言い間違え、切迫する医療崩壊について語るときに患者を「お客さん」と呼び、感染状況をさらに悪化させるファクターとして国民がいまもっとも心配している「変異種」という言葉を忘れてしまう。これは、菅首相がいまの状況に危機感を持っていない、普段コロナ対策についてまるで考えていないことの証明以外のなにものでもない。

「質疑が噛み合わない」というのも同様だ。たとえば、菅首相は13日の会見で、医療崩壊を食い止めるための法改正の問題を問われ、関係のない国民皆保険を持ち出したが、菅首相が質問を勘違いしたとか、答えが噛み合わなかったというレベルの話ではない。準備をしていない、考えてもなかった課題を突きつけられて答えられず、普段からこっそり考えている国民皆保険見直しという新自由主義的な本音が漏れたにすぎない。

首相周辺や側近議員が「会食自粛でストレス」「情報の集まりが減る」 と会食自粛のせいに  


 
 本サイトが散々指摘してきたように、菅首相は人事や謀略で官僚を支配してのし上がってきただけで、もともと知性もなければ説明能力もない。会見でアドリブが効かないポンコツなのも昔からだ。官房長官時代は、御用記者から事前に質問を提出させ、想定外の質問や答えにくい質問に対しては、「そのような指摘は当たらない」「まったく問題ない」「コメントする立場にない」と回答拒否を繰り返してごまかしてきたが、首相になってコロナという重大問題に直面したら、国民やメディアが説明拒否では許してくれなくなった。それで無理やり喋ったら、こんな状態になってしまったのである。

 だいたい、もしほんとうに「疲労」や「ストレス」のせいで、国民にきちんと説明できなくなったとしたら、それこそ菅氏には最初から総理の資格がなかった、というべきだ。

 言うまでもないが、国のトップには、国家が重大な危機に直面し、国民がコロナによる不安に押しつぶされそうになっているいまのような状況でこそ、冷静で的確な判断をし、国民の不安を解消するメッセージをわかりやすく打ち出すことが求められる。それなのに、国民より先に総理大臣が疲労やストレスに押しつぶされ、混乱してどうするのか、という話だろう。

  しかも、呆れたのは、くだんの読売の記事の後半だ。同記事によると現在の菅首相の状態は「会食自粛」で「ストレスが蓄積」していることも関係しているのだという。

〈首相は官房長官時代から、平日朝は国会近くのホテルで有識者らと朝食を取り、情報収集するのが日課だった。しかし、首都圏の1都3県に緊急事態宣言を発令した7日からは、8日連続で見送っている。
 感染拡大のさなか、計8人でのステーキ会食に参加して批判を浴びたことを受け、昨年12月17日からは夜の会食も自粛中だ。自民党内からは、会食自粛でストレスを抱えるだけでなく、「集める情報が減れば、判断に影響しかねない」(ベテラン議員)と懸念する声も出ている。〉

 言っておくが、会食自粛は別に菅首相だけでなく国民全員に呼びかけられていることだ。それこそ医療従事者などにはもう1年近く会食も旅行も制限されている人だって多数いる。それを1〜2週間ほど会食を止めただけで「ストレスが溜まって言い間違い」って……。

 しかも、「会食しないと集まる情報が減る」ときた。御用ジャーナリストやおトモダチの政治家や経営者とさんざん会食を繰り返して、とんでもないGoTo政策をとり続けた結果がいまの感染拡大なのに、いったい何を言っているのか。

17日に休みをとるためのフリ、ついでにトンデモ会見まで「疲労」のせいに

 いくら御用新聞とはいえ、よくもまあ、こんな説得力のない露骨な擁護記事が書けるものだと感心するが、この読売の「言い間違いは疲れやストレスのせい」報道は、やはり菅首相の周辺が仕掛けたものらしい。ベテラン政治評論家が苦笑しながら、その裏を分析する。

「菅首相は17日に休みを取っているが、もともとは休みを取る予防線として、首相周辺が御用の読売新聞に“ずっと休んでおらず、疲労が溜まっている”ということを書かせたんだよ。で、ついでにこの間の会見やテレビ出演でのひどい内容、それから国民から批判を受けた会食まで全部、『疲労』や『ストレス』のせいにして、国民の同情を買おうとしたということだろう。前首相の安倍さんも同じようなことをやっていて、それが成功してるから、真似したんだろう」

 そういえば、安倍首相も昨年、コロナ対応が後手に回って、アベノマスクや「うちで踊ろう」動画などに国民から厳しい批判が上がった少しあとの6月はじめ、御用マスコミや側近議員が『安倍首相は140日休みをとっていない』『疲労がたまっている』とアピール。その直後の6月21日に安倍首相が休みを取るということがあった。

 しかも、安倍首相はコロナの状況や支持率が好転しないとみるや、8月、最側近の甘利明議員がテレビで「コロナ対応で疲労困憊している」「休ませてあげてほしい」などと発言。その流れでそのまま「持病が悪化」したとして政権を放り出してしまった。

 その後の安倍首相の様子をみれば、あれが“仮病”であった可能性は非常に高いが、しかし、国民は安倍首相の無責任な姿勢に怒るどころか同情。辞任表明後の安倍内閣の支持率は爆上がりし50%を超える結果になった。

 ようするに、菅首相とその周辺は安倍首相がコロナ対応の失敗を「疲労説」「健康不安説」で糊塗したのをそのまま再現しようとしているのではないか。

 もちろん、首相に就任したばかりの菅氏がこのまま政権を投げ出すというのはありえないし(本当はむしろ代わってほしいくらいだが)、いまのところ、菅首相の疲労を伝える記事には、「GoToと後手対応で感染を拡大しておいてなにを言い訳してるのか」「疲弊し、ストレスを抱えているの国民のほうだ」といった厳しい批判の声も上がっている。

ネットではさっそく「疲労蓄積している菅さんを批判するのはブラック企業」の声が

 だが、一方で安倍前首相のときとまったく同じことが繰り返されるのではないかという危惧をおぼえるのは、そうした批判コメントに対して以下のような反論が多数投稿されていることだ。

〈菅首相の疲労蓄積ってトレンドを見て 不支持であろうとも、「こっちの方が疲れている」、「これぐらいで疲れるなら辞めろ無能」とか言える人って、部下や取引先、店員なんかにも似たようなこと言うんだろうなと思ってしまう。 日頃、どんなにブラック企業やら叩いているとしても。〉
〈首相の疲労蓄積に対して、「こっちのが疲れてるんだよ!」って言うのは医療従事者だけじゃない?菅さんと同じ状況に置かれてから文句言ってもらっていい?私たち一般市民より遥かに仕事してるよ。〉
〈首相の疲労蓄積に対して、国民なの方が〜とか言ってるやつキモすぎ。 お前なんもしてないだろww 菅さんは国背負ってんだよ〉
〈いくら菅政権が嫌だからって首相の疲労蓄積っていう記事に対して噛み付くのはどうなんだ??生身の人間だよ。政治家としての側面とは分けて考えるべきじゃないの?たしか戦後生まれだけど70歳は超えてる。〉
〈菅総理が疲労蓄積…云々の記事に対して「疲労・ストレス蓄積してるのは国民も同じ」「国民のために働くってのは嘘だったのか」的なコメントがあってドン引きしてる 暗に過労死するまで働けって言ってるようなもんだよねそれ 正気の沙汰じゃ無い…〉
〈いや、さすがに、 政治や政策がどうであれ この記事に対して 菅総理を侮辱するツイートが多いのは心が痛みます 普通に お大事にと言ってあげればいいのに -首相の疲労蓄積?不安視する声〉

 いまさら説明するまでもないが、総理大臣というのは自ら進んでなる地位であり、絶大な権力を握る一方で、全国民の命を預かっている存在なのだ。しかも、安倍前首相や菅首相など、自民党の右派政治家たちは「国民が国家のために命を捨てる国」を再びつくろうとしてきた。

 そんな政治家連中とブラック企業の過重労働にあえぐ労働者と同列に並べて、「菅首相を批判するのはブラック企業と同じ」とか言い出すのだから“問題の軽重”に関する認識がおかしくなっているとしか思えない。

 国民に権力に対するこの甘さがある限り、日本の政権がきちんとしたコロナ対策をとることなどありえないだろう。

最終更新:2021.01.18 12:26

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