「原爆の記憶」が破壊される! 安倍首相は長崎式典でまたコピペ、佐世保市は「核廃絶は政治的中立侵す」と原爆写真展を拒否

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今年の長崎式典でも”ほぼコピペ”の安倍首相(首相官邸HPより)


 本日、長崎市でおこなわれた長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典。安倍首相は広島でおこなわれた式典で昨年とほとんど変わらない“心ない”スピーチをおこなったが、きょうの長崎でのスピーチは、その広島でのスピーチからわずかに構成を入れ替えた“ほぼコピペ”文章をただ読み上げただけ。無論、広島のときと同様、唯一の戦争被爆国でありながらいまだに署名・批准していない核兵器禁止条約にふれることはなかった。

 だが、そんな安倍首相に対し、長崎市の田上富久市長が直球を投げた。田上市長は平和宣言で、安倍首相にこう訴えたのだ。

「日本政府に訴えます。日本はいま、核兵器禁止条約に背を向けています。唯一の戦争被爆国の責任として、一刻も早く核兵器禁止条約に署名、批准してください」

 一刻も早く核兵器禁止条約に署名、批准して──。昨年の平和宣言で田上市長は「日本政府には、唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約に賛同し、世界を非核化に導く道義的責任を果たすことを求めます」と述べたが、今年は「一刻も早く署名・批准を」と真正面から強く要求したのだ。

 しかも、その後も田上市長はかなり踏み込んだ。

「何よりも『戦争をしない』という決意を込めた日本国憲法の平和の理念の堅持と、それを世界に広げるリーダーシップを発揮することを求めます」

 これは事実上、9条に自衛隊を明記する改憲案を進めようとしている安倍首相に対する牽制だ。

 じつは、平和宣言の内容を議論する起草委員会では、今年、〈憲法9条を守るよう政府に訴えていくべきだとの意見が出ていた〉(朝日新聞7月29日付)という。平和宣言で9条に直接言及することは見送られたが、その思いが「『戦争をしない』という決意を込めた日本国憲法の平和の理念の堅持」というメッセージとなったというわけだ。

「核兵器禁止条約への署名、批准」はもちろんのこと、多大な戦争犠牲者を生んだ長崎からなされた事実上の「9条堅持」という要求は、あまりに当然のものだ。しかし、この平和宣言を突きつけられているあいだも、安倍首相はむっつりとした表情を浮かべていただけだった。

 核兵器廃絶と平和憲法の堅持の訴えから背を向け、むしろ「戦争ができる国」へと舵を切る安倍政権──。そして、こうした政権の姿勢は、確実にこの国を蝕みつづけている。

 実際、それを象徴するような出来事が起こっている。8月4日、長崎市佐世保市では「原爆写真展」が開催されたのだが、その後援を市教育委員会が断ったのだ。

 そして、その断った理由が驚愕のものだった。この写真展では「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」(ヒバクシャ国際署名)の活動も実施されたのだが、市教育委員会はそれが「政治的中立を侵す恐れがある」として問題視したのである。

「ヒバクシャ国際署名」は「後世の人びとが生き地獄を体験しないように、生きているうちに何としても核兵器のない世界を実現したい」という思いから、2016年4月に広島と長崎の被爆者たちがはじめた署名活動で、すべての国が核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶことを求めている。どう考えても、被爆者や市民が「核兵器のない世界を」「核兵器禁止条約に署名を」と求めることは当然の訴えだが、その活動を「政治的中立を侵す恐れがある」と言うのである。しかも、被爆地である長崎県の市教育委員会が、だ。

安倍政権になって「9条護憲」も政治的中立侵す、と公共施設から締め出し

 じつは佐世保市と市教育委員会は、2017年にもこの写真展の後援を依頼されたのだが、このときも署名活動と、写真展のチラシにあった「歓迎! 核兵器禁止条約」という表現に対し「政治的または宗教的中立性を侵すおそれがあるものに該当する」として後援を拒否していた(毎日新聞8月4日付)。「政治的または宗教的中立性を侵す」とは、さっぱり意味がわからないだろう。一体、核廃絶を訴えることの、どこが政治的だと言うのか。

 核廃絶を訴えることに対して、被爆地の教育委員会が「政治的中立性を侵す」と主張する異常──。だが、これこそがいま、この国を覆い尽くそうとしている考え方なのだ。

 実際、第二次安倍政権になって以降、9条護憲にかんする集会が公共施設の使用を拒否されたり、使用許可が取り消されたりするケースが相次いでいる。それどころか、さいたま市では「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ女性の俳句が秀句に選ばれたのに公民館だよりに掲載されなかったという問題まで発生。公民館側は「『九条守れ』というフレーズは、公民館の考えであると誤解を招く可能性がある」「公平中立であるべきとの観点から、掲載は好ましくないと判断した」などと主張した。この問題は裁判となり、一審・二審とも「句が掲載されると期待した女性の権利を侵害した」「人格的利益の侵害にあたる」とし、女性への慰謝料を認めている。

 行政側は「政治的中立性」「公平中立」などというが、公務員には憲法遵守が憲法によって義務づけられているというのに、それはまるで無視され、「憲法守れ」「平和を守れ」という主張は「政治的」だと判断されているのだ。

 それだけではない。ラジオDJなどの活動で知られるピーター・バラカン氏は、9条関連のTシャツを着て街を歩いていただけで警察官に職務質問されたといい、一方、自民党はホームページで「子どもたちを戦争に送るな」という教員らを「偏向教育」として密告させるフォームを設置したことも大問題になった。

 つまり、安倍政権は9条と憲法の平和主義を“危険”扱いして排除する流れをつくり出し、行政もそれに右に倣えで従うというかたちができあがってしまった。そして、その流れは「核廃絶」というメッセージにまで波及しているのである。

 そんな恐ろしい空気が流れる社会のなかで、安倍首相を前に、はっきりと「核兵器禁止条約への署名、批准」「平和憲法の堅持」を訴えた田上市長。この言葉を安倍首相が受け止めるとは思えないが、しかし、平和を訴えることをタブーにしようとする流れに、市民が「おかしい」と声をあげつづけていくしかないだろう。

最終更新:2019.08.09 08:24

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