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川崎殺傷事件「一人で死ね」論に警鐘を鳴らす藤田孝典に、古舘伊知郎、ニッチェ江上も賛同! 包摂こそが犯罪を阻止する
画期的だった『ゴゴスマ〜GOGO!Smile!〜』の古舘発言
川崎市で小学生ら19人が殺傷された事件をめぐり、またぞろメディアがヒステリー起こしている。とくに今回、目立っているのが「自殺に他人を巻き込むな」「死にたいなら一人で死ね」という言葉だ。
感情をぶつけて悦にいるだけで、なんの解決にもつながらないどころか、精神的に追い詰められた人たちを刺激する乱暴極まりない発言だが、驚いたことに、ネットだけでなく、安藤優子や立川志らく、北村晴男弁護士など、ワイドショーのMCやコメンテーターまでがこのグロテスクなセリフを平気で口にしているのだ。
しかし、こうした愚劣な感情論の横行に対して、警鐘を鳴らす論考が発表され、注目を集めている。28日、Yahoo!に配信された、「川崎殺傷事件「死にたいなら一人で死ぬべき」という非難は控えてほしい」と題した記事だ。
執筆したのは、生活困窮者支援のNPOほっとプラス代表理事の藤田孝典氏。藤田氏は〈ネット上では早速、犯人らしき人物への非難が殺到しており、なかには「死にたいなら人を巻き込まずに自分だけで死ぬべき」「死ぬなら迷惑かけずに死ね」などの強い表現も多く見受けられる。〉〈まず緊急で記事を配信している理由は、これらの言説をネット上で流布しないでいただきたいからだ。次の凶行を生まないためでもある。〉として、こう主張している。
〈「死にたいなら人を巻き込まずに自分だけで死ぬべき」「死ぬなら迷惑かけずに死ね」というメッセージを受け取った犯人と同様の想いを持つ人物は、これらの言葉から何を受け取るだろうか。
やはり社会は何もしてくれないし、自分を責め続けるだけなのだろう、という想いを募らせるかもしれない。
その主張がいかに理不尽で一方的な理由であれ、そう思ってしまう人々の一部が凶行に及ぶことを阻止しなければならない。
そのためにも、社会はあなたを大事にしているし、何かができるかもしれない。社会はあなたの命を軽視していないし、死んでほしいと思っている人間など1人もいない、という強いメッセージを発していくべき時だと思う〉
つまり、このような痛ましい事件を繰り返さないためには、社会から阻害された人々を突き放すのではなく、むしろ、彼らの尊厳を大切に思っていると社会がメッセージを出すことこそが重要だと指摘しているのだ。
まさに正論だが、しかし、ネットではネトウヨを中心に藤田氏に対して、「きれいごというな!」「凶悪事件を肯定するのか」「遺族に言えるのか」「社会が悪いから何しても許されるという奴が出てくる」などと、的外れな攻撃や非難が殺到している。ワイドショーも前述したように、全く聞く耳をもたず、むしろ容疑者をモンスター扱いして、憎悪を煽りまくっている有様だ。
だが、そんななか、29日放送の『ゴゴスマ〜GOGO!Smile!〜』(TBS系)で、乱暴な感情論に与せずに、藤田氏の提言を受け、事件の本質的な問題を議論しようという動きがあった。
古舘に続きニッチェ江上も「優しさが犯行を阻止できることもあるんじゃないか」
まず、画期的だったのは、レギュラーコメンテーターの古舘伊知郎だった。古館は容疑者をモンスター扱いする報道にこう異を唱えたのだ。
「こういう痛ましい、本当につらいことが起きますと、『考えられない』『あり得ない』と遠くに置いてしまうことによってね、『ひとりのモンスターがいる』と。『自分たちは違う』と、僕なんかも思いたくなっちゃうんですよ。そんなことやるわけないんですから、普通の人間が。だけど、命を絶たれた方、残された家族の方を思うときに、あんまり遠いことと思っちゃいけないわけですよ」
続いて、MCの石井亮次アナウンサーが、藤田氏の主張を紹介したのだが、その際、自分自身の発言を省みるかたちで、こうコメントした。
「(容疑者は)人を巻き込んでから自殺しています。これに関して私は昨日放送で、『死にたいんだったらひとりで死ねばいいじゃないか』ということを言いました。でも、そういうことを言っちゃいけないんだという声もあります。そういうことを言っちゃいけない理由を考えることが、今後こういう凶行を生まない社会はどうすればできるのかということを考えるきっかけになると思います」
もっとも、その後、犯罪心理学を専門とする筑波大学教授の原田隆之氏が藤田氏の主張に対して「そういうメッセージも受け取れないような偏ったパーソナリティーの人たちがいる」と異を唱えると、番組は他のワイドショーと同じような、モンスター扱いの空気に流れそうになる。
しかし、この流れを打ち破ったのも、古舘だった。古舘は「直接の解決策ではないんだけれども、とっても身近で大事なことを江上さんが」とレギュラーコメンテーターのニッチェ・江上敬子に話を振る。そして、江上が「自分がまわりの人に優しくして、その優しさが回り回って、巡り巡って、そういう犯行を阻止できるんじゃないか。それぐらいしか自分たちはできないかもしれないけれど、そういうのって大事なんじゃないかと思うんですよ」と言うと、古舘はそれを受けて、「一直線で解決する話ではないけれども、世の中は因果律で成り立っていると思うんで、回り回って、巡り巡ってってことを考えると、『そんなの面倒くさい』じゃなくて、人に対する無関心みたいなものをちょっと内省的になるのって大事じゃないかなと思う」と発言した。
古舘伊知郎「遠くの国の戦争で子供が亡くなっていることも同じように危機感を」
さらに、古舘は「人が殺される。こんなことが起きるって我々は考えるけれども、遠くの国で女性や子どもさんが誤爆によって戦争で亡くなっているということに対して鈍感じゃないかって考え方まで、ずーっと引き延ばしていかなくてはいけないのかな。人は人を殺すじゃないですか。こっちはあんまり気に止めないで、こっちは大変だって言っているのも、変だなって思う気持ち、立ち止まりも必要かな。絶対起きちゃいけないことが起きているから」とも語っていた。
つまり、古舘はセンセーショナルな殺人事件にだけ騒ぎ立てるのではなく、戦争で女性や子供が犠牲になっていることにも、同じように危機感と違和感を抱くべきだと指摘したのだ。
『報道ステーション』降板後バラエティ出演の多かった古舘だが、久々に『報ステ』時代を彷彿とさせるジャーナリスティックな視点を見せてくれたといっていいだろう。
そして、重要なのは、古舘の活躍によって容疑者をモンスター扱いし、憎悪を扇動するワイドショーで、凶悪な犯罪を防ぐためには「支援」や「支え合い」こそが必要だということが、議論されたことだ。
実際、これは「きれいごと」などではない。29日に川崎市が行った会見のなかで、岩崎容疑者の親族が一昨年の秋から今年1月にかけ14回にわたって川崎市健康福祉局精神保健センターに相談していたことが明らかになった。社会による効果的なサポートがあればこの事件は防ぐことができたかもしれないのだ。
マスコミやネットのなかで、今回の『ゴゴスマ』のような議論が少しでも増えることを願ってやまない。
(編集部)
最終更新:2019.05.30 10:33
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