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横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」55
沖縄県民投票の原動力となった元山仁士郎氏を直撃!「投票結果を無視する菅官房長官と安倍政権に言いたいこと」とは?
辺野古埋め立て反対が7割以上(71.74%)という明確な民意を示した沖縄県民投票の結果を伝えるために玉城デニー知事は3月1日、官邸で安倍首相と面談、日米両政府に沖縄県を加えた対話の場「SACO(日米特別行動委員会) with沖縄」(SACWO)を提案したが、安倍首相は「普天間飛行場の危険除去のために辺野古移設(埋め立て工事)を進める」という従来通りの常套句を繰り返すだけ。同日の日本外国特派員協会での会見で、玉城知事が「首相からポジティブな意見はなかった。何か進展をしたことはなかった」と報告したのはこのためだ。
この会見に同席した「『辺野古』県民投票の会」代表の元山仁士郎氏は結果報告の後、民意無視の安倍政権への怒りを込めるかのように「この後、官邸前で抗議行動がありますから、そちらにお越しいただければ」と告知。そして「辺野古は埋めるな!」「安倍は辞めろ!」というコールが鳴り響いていた官邸前集会に駆け付け、マイクを握った。
「今日、『もっと多いかな』『沖縄の声を聞いてくれる人はもっと東京にいるのかな』と思って来ました。これじゃ、まだまだですよ。こんなんじゃ、沖縄の声、安倍さん、聞いてくれないですよ。菅さん、聞いてくれないですよ。皆さん、もっと周りの人に伝えて下さい!」
まるで県民投票が行われなかったかのように振る舞う安倍政権の姿勢は、投開票直後から露わだった。玉城知事の得票数を上回る反対票43万4273票が投じられた「結果」を「真摯に受け止める」という安倍首相発言はリップサービスにすぎず、県民投票の翌25日に土砂投入をする言行不一致ぶりが露呈。菅義偉官房長官も県民投票について複数の記者から問われても、「普天間飛行場の危険除去と返還」を錦の御旗のように振りかざして辺野古移設を正当化、沖縄県民の民意を無視する回答を繰り返したのだ。
午前中の官房長官会見では、まず朝日新聞の記者が県民投票の受け止めを聞いたが、「普天間飛行場の危険除去と返還が原点」「固定化を絶対に避けなければならない」と強調。「県民投票で示された新たな民意を無視する形で辺野古移設工事を進めていく考え方に変わりはないのか」との質問に対しても、再び「普天間飛行場の危険除去と返還」という常套句を繰り返し、辺野古移設(埋め立て工事)を進める姿勢を表明。続いて毎日新聞の記者が、県民投票で浮き彫りになった県民と政府の考え方のギャップの原因について質問したが、「原点の問題」と再び錦の御旗を振りかざした。
さらに、沖縄タイムズの記者が軟弱地盤による工事長期化を政府も認めていると指摘した上で、「『(辺野古移設が)普天間飛行場の早期返還の唯一の解決策』という考え方に変わりはないのか」と問い質しても、「(軟弱地盤改良工事は)通常使われる工法」「一般的で施工実績が豊富」と答えながらも、具体的な新基地完成時期(普天間飛行場の返還時期)は示さないまま、「辺野古移設が最も早い普天間返還の方策」という従来の立場を繰り返した。
この後も「県民投票の結果で政府見解に変化が生じたのか」という主旨の質問が出たが、菅官房長官は常套句を使った同じ説明をするばかりで、午後の会見でも目新しい発言が飛び出すことはなかった。最後に指名された東京新聞の望月衣塑子記者は「工期・工費が発表できず、そして軟弱地盤があるような工事を『一回立ち止まって止める』という選択肢を政府として決断する必要性をどう考えるのか」と問い質すと、菅官房長官は再び常套句で答えた。
「午前中にも申し上げましたが、辺野古移設の原点は、市街地に位置し、住宅や学校に囲まれ、『世界で一番危険』といわれる普天間飛行場の危険除去と返還です。飛行場がこのまま固定化され、危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければならない。このことは地元の皆様も共通認識ではないでしょうか。この工事が始まってから今日に至るまでの危険な状況は続いています。一昨年にまさに普天間飛行場に隣接する小学校にオスプレイの窓枠が落下したこともありました。そういうなかで、一日も早く辺野古への移設が出来るように粘り強く説明をさせていただいて、取り組んでいきたい。いずれにしろ、危険な状況を置き去りにされることは……、(中略)……(菅に訂正のメモが渡される)失礼しました。ヘリの窓枠でした。オスプレイではなくてヘリの窓枠だそうですけれども、いずれにしても窓枠が落ちて危険な状況にあったことは事実ではないでしょうか。そういう状況が続いているということであります」
司会者が「この後の日程がありますので次の質問で最後でお願いします」と制限をするなかで望月記者が「今後も含めて、あらゆる形で辺野古基地にノーという県民の民意が示されても、政府としては認めない。県民の意向は無視していくという理解でいいのか」と再質問をした。
しかし、菅官房長官はここでも、「普天間飛行場の危険な状況は置き去りにされることを避けなければならない責任も政府にはある」と繰り返すだけ。県民投票を無視する姿勢に変わりはなかったのだ。
元山代表「菅官房長官は自分の選挙区の横浜で同じよう誠をするのか」
外国人特派員協会での元山氏(と玉城知事)会見
筆者は、県民投票投開票の3日後の2月27日に上京して千代田区と文京区での集会で報告した元山氏を直撃。「(県民投票の全県実施を求める宜野湾市役所前での)ハンスト中も、政府の受け止めを問われて『本人に聞いて下さい』と答えたことを含めて菅官房長官に一言、言いたいことは?」と訊くと、こう答えた。
「自分の身になって考えて欲しい。『菅官房長官の選挙区の横浜で同じようなことが起きたら、同じようなことをしますか』と伝えたい」
そして、1日の官邸前集会ではこうも訴えていた。
「残念ながら、沖縄県が示した意思は、まだ形になっていません」「『いじめはだめだ』との考えは一致できるはずです。『まずはいじめをやめよう』『沖縄の声を聞いて埋め立てを中止しよう』。そこから、みんなで話す。みんなで知恵を出し合えば、必ず他の選択肢が見つけられます」
辺野古問題をめぐって悩んでいた元山氏に「県民投票を実施するといい」という助言をした武田真一郎・成蹊大学教授も、27日の集会「沖縄県民は答えを出した 私たちはそれにどう応えるのか」で、沖縄県外(本土)の有権者に訴えかける選挙態勢づくりの重要性を次のように訴えた。
「(県民投票無視で工事強行の“沖縄イジメ”を黙認することは)本土でも廃棄物処理施設とか新しい軍事基地が強行されることを認めてしまうことになる。結局、人間は損得で動くところがありますから、選挙のときには『自民党に入れたら、あなたの住んでいる地域で(辺野古新基地建設と同じように)何が強行されるのか、わかりませんよ。あなたがせっかく収めた税金をこんなバカな埋め立てに使って無駄にされてしまう』と候補者が発言をしていかないと駄目だ。『沖縄のことをちゃんと考えよう。本土の人も損する』ということを(選挙で)訴える態勢をつくっていかないといけないと思う」
枝野幸男代表の辺野古問題への決意と元山代表の危機感
この具体的提案について翌28日の会見で立憲民主党・枝野幸男代表に「辺野古問題は参院選の争点になるのか」「参院選に向けてどういう動きをされるのか」と質問。「武田教授は『沖縄の県民投票を黙認することは全国各地で同じように住民無視の事業、米軍基地(建設)とか放射性廃棄物(最終処分場)の事業が進みかねない』という問題提起をしている」とも紹介すると、次のような前向きな回答が返ってきた。
「立憲民主党は昨年の秋に辺野古基地に対する明確な方針を示しました。当然、国政の重要問題でありますから、参院選でもそれを訴えます。争点にするのかどうかを決めるのは国民です。国民の皆様は残念ながら、現状で『沖縄以外の皆様が自分の問題として考えている方が必ずしも多くない』という残念な状況です。それは変えていきたいと思いますが、参院選挙までに変わるのかどうかはわかりません。国民の皆様の判断です。変える努力はします」
菅官房長官へのコメントを求めた元山氏に、枝野代表への期待についても訊くと、こう答えた。
「県民投票で示された県民の思いを、沖縄県民が望む形にして欲しいと思います。立憲民主党に限らず、与野党の国会議員に望みたいと思います」
安倍自民党(政権)が考えを変える可能性を頭から否定しないのが元山氏の立場。官邸前集会では、SEALDsのメンバーとして「安倍辞めろ!」コールをした当時を振り返った上で、「しかしながら今、『安倍政権が一強だ』ということが言われていて、『安倍さんでも沖縄の意思を聞いてくれるのだったら、それでも致し方ないのではないか』という思いも持っています。もちろん安倍首相が何よりも、聞かない、ウソをつく、信用できないのはわかっています。しかしながら、それを変えられない現実も受け止めて欲しいと思います」とも語っていた。この後、冒頭で紹介した発言に続くのだが、スピーチ後に「安倍辞めろ!」コールをすることはなかった。
県民投票の意思をかたちにした活動のバトンを誰が引き継ぐのか
3年半前との違いを目の当たりにしたので「元山さん、安倍一強を崩すのは難しいということですか」と声をかけると、「(この参加者数では)まだまだじゃないですか」と回答。しかし、参院選で野党が安倍自民党を大敗させる可能性についても訊くと、「わからないが、もちろん頑張って欲しいと思います」とエールを送り、「参院選で野党が結集して」と言った途端、「もちろん、そうなれば、いいと思いますが」と答えた。
参院選向けの期間限定のSEALDs再結集についても訊いたが、「元SEALDsのメンバーと県民投票について話をしていますが、それを受けて何かをやるのかどうかは微妙だと思う」と答えるにとどまった。
一方、元SEALDsの奥田愛基氏は2月25日、「あまりにも酷くてグロテスクだ。沖縄県民を日本国民として認めないというメッセージにしか見えない。どんな神経してたらその翌日から土砂投入できるんだよ。何故全国メディアは他人事なんだよ。分断されて、触れられない話題を勇気を出して、話して投票した沖縄県民をなんだと思ってんだよ。クソが!」とツイートしていた。
SEALDsの再結集・官邸前集会開催の主導的役割をたとえ元山氏が担わないとしても、県民投票実施に向けて全力投球、明確な辺野古埋め立て反対の民意を初めて示した奮闘ぶりに触発された元SEALDsのメンバーを含む人たちが、県民投票の意思を形にする活動のバトンを引継ぐことは十分に考えられる。市民と野党が結集する場となった官邸前集会の盛り上がりが安倍政権打倒の気運を高めて、野党選挙協力を促進して参院選一人区の善戦につながった3年前と同じような展開となる可能性が芽生えたともいえる。官邸前集会への参加者がどれだけ増え、沖縄の民意を無視する安倍自民党を参院選で大敗させようとする気運が全国各地に広がっていくのか否かが注目される。
(横田 一)
最終更新:2019.03.08 09:19
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