南青山の児相建設反対住民の醜悪な差別意識は他人事じゃない! 『月曜から夜ふかし』などの地域ネタも差別を生んでいる

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港区HPより『港区子ども家庭総合支援センター』外観案

 東京都の港区が南青山に建設予定の港区子ども家庭総合支援センター(仮称)をめぐって、区と近隣住民との間で争いが起きている。

 2018年10月17日放送『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ)では、区が開いた近隣住民への説明会の様子が流されていたのだが、そこで語られる住民の言葉は、にわかには信じられない薄情でひどいものだった。

 住民が反対しているのは、2021年4月に開設される予定の複合施設。表参道の駅から徒歩3分ほどの場所に、児童相談所、子ども家庭支援センター、母子生活支援施設が入った4階建ての建物が建設される。総事業費は約100億円と報じられている。

 これに対し、住民からは反対意見が一気に押し寄せた。住民らが主張している反対の理由はいくつかあるが、そのひとつは、周囲を高級ブティックに囲まれる超一等地に、そのような施設はふさわしくないというものだ。

「青山じゃなくていいんじゃない」
「田町に広い場所いっぱいあるじゃない」
「そういうものをもってきたときに、港区としての価値が下がるんじゃないか」
「なんで青山の一等地でそんな施設をつくらなきゃならないんですか」
「南青山というのは世界的にも注目されている情報の発信地なんです」

 まるで米軍基地か原発でも作られるかのような言い草だ。これを聞いていると、米軍基地が沖縄に、原発が地方に押し付けられている構造がよくわかるというものだが、今回建設されるのは米軍基地でもなければ原発でもない。港区の子どもや子どものいる家庭を支援するための施設だ。しかし反対住民たちは児童相談所などの施設ができると、街の「価値」が下がるというのだ。

 また、住民説明会ではこんな言葉も聞かれた。

「この周辺のランチ単価知ってますか? 1600円ぐらいするランチ単価のところで、なんで親がここの施設に子どもを連れてくるんですか」
「ネギひとつ買うのにも紀ノ国屋に行くような状況で、そのDV保護される方々はすごく生活に困窮されている方だと聞いていますので、そういう方たちが生活するのに大変…一般の人でも物価高で大変ですので、なぜそれがふさわしい場所なのか」

 利用者の生活を心配しているという体だが、施設利用者が生活に困窮していると決めつけ生活困窮者はこの高級な街にふさわしくないという差別意識がダダ漏れている。この複合施設にDVシェルターなどが含まれていることから出ている意見だと思われるが、そもそも一時的な保護であり永住するわけではなく、食事も施設で提供されるという。

「ランチ単価1600円」とか「ネギを買うのも紀ノ国屋」とか、これだけでも裕福な自分たちの生活を鼻にかけて不幸な境遇の人々を見下す差別意識が浮き彫りになってくるわけだが、さらに輪をかけてグロテスクだったのがこのような発言だ。

「100億もかけてやるのに、なんで法に触れるような触法少年の施設をここにつくらなきゃならないのか」
「自己責任になるでしょう」
「福祉だったらこんな高く何を使ってもいいの」
「100億円もかけるならもっと生産性のある施設にしてほしい」

 彼らの頭のなかに、「子どもは社会で育てる」という発想はないのだろうか。児童相談所では14歳未満の触法少年の一時保護もすることからこのような意見が出ていると思われるが、14歳未満の子どもが法に触れるような行為をしてしまうのは、生活環境や生育背景に何らかの困難を抱えているためで、社会全体で保護すべき存在だ。しかも、東京都港区は財政的にかなり裕福な自治体で、贅沢すぎる官舎などに使うというならまだ文句を言うのもわかるが、教育や福祉にお金を使うことは褒められこそすれ非難されることではないだろう。

南青山の反対住民の主張と杉田水脈「生産性」発言と同根

 この児童相談所建設の反対運動を行っている「青山の未来を考える会」は、「反対活動へのご署名のご協力のお願い」のなかで、〈海外から来日して青山を散策する観光客に対して何の貢献やアピールもしません〉や〈2020東京オリンピック・パラリンピックの新国立競技場を控える青山の街に夢がなくなります〉としながら、〈この公益性のない港区の整備計画を阻止し、民間運営による有益的な一画として本来の街づくりを整備するべく〉などと記している。

 つまり、公共施設ではなく、高級ブランド店やレストランなどが入るような商業施設にするべきだという主張だ。先に引いた反対住民の発言のなかに奇しくも、「生産性」という言葉が出てくるが、弱者を切り捨てて社会から排除してしまうことに疑問すら抱かず、なにもかも経済的な損益を物差しに測ろうとする発想は、「新潮45」(新潮社)で大炎上した杉田水脈衆議院議員にも共通するものがある。

 前述『直撃LIVEグッディ!』のなかで三田友梨佳アナウンサーは、住民たちのこのような発言に対し、「南青山の品位を下げかねないんじゃないかなと思ってしまう」と喝破していたが、まさしくその通りだろう。

 もちろん番組でも少数ながら「こういった施設ができるのはいいこと」と賛成意見を述べる住民もいたし、南青山のすべての住民がこうした意見を持っているわけではないだろう。また、前述の「青山の未来を考える会」がある不動産会社のホームページ内にあることから、ネットでは「黒幕は不動産会社」「説明会の反対住民はサクラ」などの見方も散見されるが これだけヒートアップしているのは、単に一企業の旗振りだけでなく、それなりの数の住民が反対しているからなのは明らかだろう。実際、予定地近くにある小学校の保護者などからも反対の声があがっている。

 優越感と差別意識を露骨に出していることに、人間としての理性のタガが外れていると思わずにはいられないのだが、ここまで醜悪でなくとも、似たような差別的意識が日本の社会では日常的に飛び交っている。

 いわゆる、「地域格差ネタ」「地域差別ネタ」の流行である。「埼玉から東京へ行くには通行手形が必要」などの地域差別ネタを盛り込んだ1986年出版の魔夜峰央による漫画「翔んで埼玉」が2015年に復刊されて人気となり、来年には二階堂ふみとGACKTの出演で映画化されるというここ最近の流れが象徴しているが、こういった地域差別ネタを許容するという態度も、児童相談所の建設を拒否する南青山の住民たちと根を同じくするものである。

『月曜から夜ふかし』の地域ネタ、三浦瑠麗の「大阪ヤバイ」発言

 ネタにされる地域は埼玉だけではない。たとえば、東京都の足立区は「治安の悪い地域」などの代名詞としてしばしばネタにされている。「翔んで埼玉」復刊のきっかけとなった深夜番組『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)でも、埼玉県だけでなく足立区や錦糸町といった地域の住民をいじるような地域ネタ特集がしばしば放送される。『夜ふかし』では、港区や世田谷区の住民が他の地域を下に見るような態度もまたネタにはしているが、いずれにしてもステレオタイプや差別意識を助長しかねない危うさがある。

 最近でヒドかったのが、10月1日放送回の「全国の注目されないニュースを取り上げてみた件」というコーナーで、「沖縄の子ども 中学生になると 急に学力低下問題」なる企画だ。

 これは、沖縄の中学3年の2018年度全国学力テストが全国で最下位だったことをフックにした典型的な“沖縄ディス”の企画。沖縄県知事選の投開票の翌日というタイミングでこんな企画をやること自体、番組のセンスを疑わざるをえないが、そんな沖縄をバカにするようなVTR明け、スタジオではマツコ・デラックス、村上信五(関ジャニ∞)、そしてゲストで出演していた有働由美子アナウンサーまでも、その企画の危うさを指摘することもなく、ただヘラヘラしているだけだった。

 言うまでもなく、治安や学力などの地域格差は、歴史的背景や社会構造の結果生まれているものであり、住民ひとりひとりのキャラクターや責任に回収されるものではない。ましてや嘲笑の対象ではない。

 こういうことを言うと、ただのネタに何を真顔でイキリ立っているのかと言われるが、ただのネタでは済まずリアルな差別意識に簡単に結びついてしまっている。実際、“沖縄の学力”企画が放送された夜、「だから、沖縄県知事選はあんな結果になったのか」などと沖縄県民を知事選と絡めてバカにするような趣旨のツイートもあった。

 また、国際政治学者の三浦瑠麗氏は、2018年2月11日放送『ワイドナショー』(フジテレビ)で、「スリーパーセルという北朝鮮のテロリスト分子が潜んでいる」「いま結構大阪ヤバイ」と差別助長発言を口にして大炎上したが、これも、ネットなどで垂れ流されている大阪に対する地域差別の定番エピソードと絡み合って相乗効果を発揮するような悪質な差別デマだ。4月の大阪地震では、さっそくこの発言に影響を受けたと思しきツイートが散見された。

 残念ながら現在の日本社会は醜悪な差別意識をためらいなく表出することを許容する空気が確実にある。場合によっては差別的発言が「炎上を恐れず本当のことを言った」などと一部で喝采を浴びることすらある。

 ちょっとした地域差別もネタで済まず、現実の社会生活にも影響を及ぼすことは、今回の南青山の一部の住民の反応を見ても明らかだろう。児童相談所の建設に反対する南青山の住民の姿は誰の目にも醜悪だが、その一方、先に挙げたような地域差別ネタで笑っている多くの人々の心のなかにも、南青山の住民と共通するものが存在していることを無視してはならないと思うのである。

最終更新:2018.10.22 04:40

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