安倍首相「臨時国会に改憲案提出」のグロテスクな思惑! 石破茂をつぶし、党内と国会論議をすっとばすもくろみ

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地元を満喫する安倍首相だが……(安倍晋三公式フェイスブックより)


 安倍首相がまたも憲法改正について踏み込んだ発言をおこなった。12日、地元・山口県下関市でおこなわれた長州「正論」懇話会での講演で、「自民党としての憲法改正案を次の国会に提出できるよう、取りまとめを加速すべきだ」と述べ、秋の臨時国会に憲法改正案を提出する考えを示したのだ。

 しかし、安倍首相は、つい最近まで「(改憲は)スケジュールありきではない」と言っていたのではなかったのか。

 昨年5月3日の憲法記念日に読売新聞の独占インタビューと日本会議系の改憲集会へのビデオメッセージでは、憲法9条に自衛隊の存在を明記する3項加憲案を打ち出すとともに「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と明言していたが、東京五輪に託けた改憲方針に反発が起き、さらに加計問題で「総理のご意向」文書の存在が報じられ支持率が急落すると、一気にトーンダウン。勝利をおさめた総選挙後も「(改憲は)スケジュールありきではない」「国民の理解が深まらなければ憲法改正はできない」と述べ、今年1月の施政方針演説や、憲法改正に意欲を示した3月の党大会、5月3日の改憲集会でも改憲時期については触れずじまいだった。

 それが今回、「次の国会に」と具体的に秋の臨時国会での改憲案の提出を口にした──。これは、明らかに、自民党総裁選への出馬を表明した石破茂元幹事長を意識しての姿勢だろう。

 石破元幹事長も安倍首相と同様に本来は改憲派であり、戦力不保持を定めた2項の削除と自衛隊を軍隊として明記すべきだと主張しているが、「9条については国民の深い議論が必要」と慎重な姿勢を見せている。そこで、安倍首相は石破元幹事長とは違い、スピード感をもって改憲に取り組むことをあえてアピールして、党内の支持を固めようとしたものだ。

 言うまでもなく憲法とは国の最高法規であり、この国をかたちづくる基盤だ。それを総理大臣という立場にありながら、党の総裁選を有利に進めるためにもち出して利用するとは、憲法を自分の玩具だと勘違いしているとしか思えない。

 実際、安倍首相はこれまでも改憲を自分の玩具にしてきた。必要性云々ではなく「改憲ありき」で、政局に合わせてコロコロと主張を変えてきたのが実態だ。

 たとえば、2012年の総裁選や総選挙では、憲法改正の発議に国会議員の3分の2の賛成が必要とする憲法96条を改正し、半分の賛成で発議できるようにする「96条改憲」を打ち出して、第二次政権が発足すると世論を高めようと必死だったが、改憲派の憲法学者からも「改憲の裏口入学だ」と猛批判を浴び、頓挫。

 また、2012年の総選挙では「いじましいんですね。みっともない憲法ですよ、はっきり言って。それは、日本人がつくったんじゃないですからね」などとネット番組で発言するなど、従来からの「GHQの押し付け憲法」論を展開。だが、その一方で、たとえば同性婚について「現行憲法の下では同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない」などと述べ、“押し付けられた憲法”に基づいて同性婚を否定するという二枚舌を使ってきた。

 しかも、96条改憲論が反発を買い、押し付け憲法論では国民の共感が広がらないとわかると、「3分の2の多数派を形成できるものから(改憲を)行っていくアプローチが一番現実的」と方向転換。そして、安倍首相は大災害発生時の備えとして緊急事態条項の創設をもち出し、「国民の安全を守るため、国家、国民がどのような役割を果たしていくべきかを憲法に位置づけることは極めて重く、大切な課題だ」などと訴えはじめたのだ。

「改憲ありき」で憲法を政治私物化の道具にする安倍、9条加憲も…

 国民の権利を著しく制限して政府の統制下に置くという本質は隠し、「大規模災害に対応するのは必要なこと」という国民からの支持を得やすいテーマで改憲を目論む──。ようするに、「憲法のどこをどんなふうに改正するべきか」という考えが安倍首相にはまったくなく、「とにかく改正できればいい」と言わんばかりに改憲を自己目的化して、そのための手段しか考えてこなかったのだ。

 それは、現在の目玉である9条の「1項、2項を据え置きで3項追加」案もそうだ。

 この9条加憲案は、安倍首相のブレーンであり日本会議常任理事で政策委員の伊藤哲夫・日本政策研究センター代表が2016年から提案していたもので、実際に伊藤氏は加憲の狙いを“護憲派の分断”にあると日本政策研究センターの機関誌「明日への選択」16年9月号で開陳している。つまり、裏を返せば、「国防軍」の9条明記にこだわっていた安倍首相がこの姑息なアイデアに乗ったのは、「改憲できるならなんでも」というなりふり構わない姿勢であることの証左だ。

 戦後、歴代総理が誰もやれなかったことを自分が成し遂げたい。戦後民主主義の象徴である憲法を蹂躙したい。……国民無視の私的な野望を出発点にして、まともな議論などできるはずがない。そして、さらには改憲を総裁選に利用するとは、これぞ“改憲の私物化”の典型だろう。

 しかし恐ろしいのは、その私物化によって、改憲がどんどん前に進み始めていることだ。今回の総裁選でもち出した「臨時国会での改憲案提出」という宣言も、たんに総裁選で石破元幹事長に対抗するというだけでは終わらず、そのまま、本当に改憲発議に進む可能性がある。

憲法審査会をすっとばし国会に改憲案を提出、一気に発議へ、のもくろみ

 おそらく、安倍首相は今回の総裁選を圧勝すれば、「党内議論はまとまった」として、党議決定のない現在の改憲案を正式な自民党案として提出するだろう。そして、国会でも憲法審査会での議論をすっとばして、いきなり国会に提出する可能性がある。

 安倍首相が思い描いていたスケジュールでは、先の通常国会において憲法審査会で実質的な議論をおこない、総裁選での3選を経て、臨時国会での改憲発議、来年春までに国民投票の実施となるはずだった。それが、森友文書改ざん問題の噴出と支持率下落で改憲議論どころではなくなった。安倍首相は「憲法審査会で議論を深め、前に進めていくことを期待する」などと殊勝なことを言ってきたが、その憲法審査会で議論がまったく進まなかったため、スケジュールに狂いが出てきた。

 そこで出てきたのが、憲法審査会での議論をすっとばす“強行論”だ。実際、通常国会閉会直前には、首相周辺から「憲法審で議論がまとまらない場合は、改憲案を独自に(国会に)提出してしまえばいい」という暴論が出始めたという(朝日新聞7月22日付)。

 おそらく、安倍首相は、この意見に乗っかって、自民党に改憲案を出させ、そのまま発議までもっていこうとしているのではないか。

 そして、総裁選はそのための絶好のPRの場になる。国会審議の報道には尻込みするメディアも総裁選に食いつき、安倍応援団メディアは“安倍優勢”ムードを盛り上げている。そんななかで改憲を争点にしてアピールすれば、改憲への世論形成にも一役買う、というわけだ。

 私利私欲のために改憲を押し進め、総裁選にまで利用し尽くそうという軽薄さ、愚劣さ。この国はこんな男のいいなりになって、改憲までやってしまうのだろうか。

最終更新:2018.08.16 12:04

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